【税務署が狙う】社長の会社へのお金の貸し借り、放置すると“追徴課税”の地獄です

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今月の支払いが少し厳しい。A社長は、会社の普通預金口座に、個人のお金から100万円をそっと振り込みました。「これで一安心。俺の金も会社の金も、まあ同じようなものだ」。

あるいは、急な出費が必要になり、会社の金庫から5万円を拝借。「来月の給料で返せばいいだろう」。

社長であるあなたが、会社を思うあまり、あるいは会社の便宜のために、個人と会社の間でお金を移動させる。中小企業では、ごく当たり前に行われている光景かもしれません。しかし、税務調査官の目には、この行為が**「社長、あなたは公私混同していますね?」**という、最も分かりやすい危険信号として映るのです。

その「貸し借り」、決算書にどう載っていますか?

この記事では、決算書にひっそりと佇む「役員借入金」と「役員貸付金」という勘定科目の本当の恐ろしさと、放置しておくことで訪れる最悪のシナリオを解説します。正しい知識が、あなたの会社を未来の追徴課税から守ります。

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「役員借入金」と「役員貸付金」の違い

まず、この2つの言葉を正確に理解しましょう。主語が誰かで、意味とリスクが全く異なります。

役員借入金:会社が社長からお金を借りている状態

社長が会社にお金を入れた場合です。これは、金融機関からの評価上は「社長が会社を支えている」とプラスに見られることもあります。しかし、最大のリスクは**「相続」**の場面で発生します。この借入金は、社長個人の「会社に対する貸付金」という資産であり、万が一社長が亡くなった場合、**相続財産として相続税の対象**になります。

役員貸付金:社長が会社からお金を借りている状態【超危険!】

社長が会社のお金を引き出した場合です。これこそが、税務調査で最も厳しく追及される、非常に危険な勘定科目です。税務署はこれを**「実質的な社長へのボーナス(役員賞与)」**と見なすからです。

役員貸付金が多額に、そして長期間放置されていると、税務調査で以下の2つの指摘を受ける可能性があります。

1. 認定利息の計上

会社は、社長にお金を貸している以上、たとえ身内であっても適正な利息を受け取らなければなりません。もし無利息で貸している場合、税法で定められた利率(2025年現在、年1.0%)で計算した利息を、会社が受け取ったものと見なされ(認定利息)、その分が会社の利益として法人税の課税対象になります。

2. 役員賞与認定

さらに悪質なケース、例えば返済の実態が全くないと判断された場合、その貸付金の元本そのものが「社長への給与・賞与である」と認定されることがあります。この場合、会社の経費(損金)にはならず、社長個人には所得税・住民税が課されるという、最悪のダブルパンチとなります。

どうすれば、この時限爆弾を解体できるのか?

もし、あなたの会社の決算書に「役員貸付金」があるなら、一刻も早く解消すべきです。主な解消方法は以下の通りです。

1. 社長の役員報酬から返済する

毎月の役員報酬や、今後支給する役員賞与・退職金と相殺して、貸付金を返済します。これが最も正攻法でクリーンな方法です。

2. 社長個人が会社にお金を入れて返済する

社長の個人資産から会社にお金を振り込み、貸付金を清算します。もし会社に「役員借入金」も同時にある場合は、それと相殺することも可能です。

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この記事のまとめ

  • 会社と社長のお金の貸し借りは、「役員借入金」「役員貸付金」として明確に区別する。
  • 特に、社長が会社からお金を借りる「役員貸付金」は、税務調査で狙われる超危険科目。
  • 放置すると、認定利息役員賞与認定で、思わぬ追徴課税のリスクがある。
  • 決算書に「役員貸付金」が残っていたら、一刻も早く解消計画を立てる。

社長、その「善意」と「甘え」を、会社の強さに変えましょう

会社の資金繰りが苦しい時、身銭を切って支える。それは、社長であるあなたの、会社への深い愛情の証です。しかし、会社と個人の財布を安易に同一視してしまう「甘え」は、会社の健全な成長を妨げ、未来に大きなリスクを残します。

会社を法人格として尊重し、お金の流れを公私にわたってクリーンに保つ。その規律こそが、あなたの会社を「個人商店」から、社会的な信頼を得る真の「企業」へと成長させるのです。

「自社の貸借対照表、どうなっているか見てほしい」「この役員貸付金、どうやって解消するのがベストだろうか」。そんな悩みは、ぜひ専門家に打ち明けてください。優れた「経営コンサル型税理士」は、あなたの会社の財務諸表を分析し、税務リスクを解消し、より強い財務体質を築くための具体的な処方箋を提示してくれます。

あなたのその深い愛情を、正しい経営の力に変えていきましょう。私たちは、挑戦するあなたを、いつでも応援しています。


【免責事項】
当サイトは、専門家の監修のもと情報を提供しておりますが、記事作成時点の法令や情報に基づいています。万全を期しておりますが、その内容の正確性や安全性を保証するものではありません。また、特定の個人や組織の状況に適用できるものではない可能性があります。
実際の税務判断や会計処理にあっては、必ず税理士などの専門家にご相談の上、ご自身の責任において行っていただきますようお願い申し上げます。

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