ファーストクラスの出張は経費で落ちるの?~経費で落ちる人・経費で落ちない人~

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出張が経費になるのは当たり前と思っている社長は多いはず。しかし、出張についてもグリーン車を使った場合やファーストクラスで移動したりとケースごとで経費で落ちる場合と落ちない場合があることをご存知でしょうか?

ファーストクラスの出張は経費で落ちるの?~経費で落ちる人・経費で落ちない人~

社長になったら、

  • 「ファーストクラスで出張に行きたい」
  • 「グリーン車で出張に行きたい」

と思う方も多いはず。

サラリーマン時代であれば自由席か指定席で出張していたはずです。

せっかく起業するのであれば、ファーストクラスに乗る人になりたいとあこがれるのは不思議なことではありません。

専用ラウンジを使ってゆったりとビジネスの準備をして快適に移動して、疲れを残さないようにしながら移動中も仕事の準備ができるわけです。

しかし、このグリーン車やファーストクラスの出張は経費で落ちる人と落ちない人がいることをご存知でしょうか?

会社に関係があればすべて会社の経費で落とせるわけではないという驚きの事態が起きることがあるので注意しましょう。

サラリーマンの旅費はなぜ非課税になるのか?

~旅費日当で税金が取られない理由とは~

会社の出張に行って税金が取られるなんて馬鹿なことはないはずと思うかもしれません。

会社の経費で出張に行けば会社側の経理は「旅費交通費」という経費で処理しているのですから、出張に行く人に関係ないはずです。

原則的には、会社側の経理通り「旅費交通費」で処理されておしまいです。

ただ、所得税法をみるともらう側の課税関係に関してあえて定義されているので注意が必要なのです。

そもそもなぜ会社の出張旅費に税金がかからないのかをしっかりと理解しておきましょう。

実は出張に行ったときに旅費に税金がかかってこないのにはしっかりとした根拠があったのです。

(所得税法9条:非課税所得)

次に掲げる所得については、所得税を課さない。(一部抜粋)

四 給与所得を有する者勤務する場所を離れてその職務を遂行するため旅行をし、若しくは転任に伴う転居のための旅行をした場合又は就職若しくは退職をした者若しくは死亡による退職をした者の遺族がこれらに伴う転居のための旅行をした場合に、その旅行に必要な支出に充てるため支給される金品で、その旅行について通常必要であると認められるもの

五 給与所得を有する者で通勤するもの(以下この号において「通勤者」という。)がその通勤に必要な交通機関の利用又は交通用具の使用のために支出する費用に充てるものとして通常の給与に加算して受ける通勤手当(これに類するものを含む。)のうち、一般の通勤者につき通常必要であると認められる部分として政令で定めるもの

六 給与所得を有する者がその使用者から受ける金銭以外の物(経済的な利益を含む。)でその職務の性質上欠くことのできないものとして政令で定めるもの

七 国外で勤務する居住者の受ける給与のうち、その勤務により国内で勤務した場合に受けるべき通常の給与に加算して受ける在勤手当(これに類する特別の手当を含む。)で政令で定めるもの

 条文を書くと急に難しくなってしまいますが大事な部分なのであえて条文を見ていきましょう。
ポイントは2つです。

①給与所得者であること

②その旅行について通常必要であると認められること

①給与所得者であること

給与所得者であることとは、会社員やパートアルバイトも給与所得者です。

さらに法人の役員も給与所得者なので、旅費が非課税になる可能性のある人に該当してきます。

②その旅行について通常必要であると認められること

出張旅費が通常必要と認められる範囲のものであれば出張をした人にたいして税金がかかることはないということになります。

一般のサラリーマンが出張して旅費手当をもらっても所得税などがかからない理由はここからきているのです。

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個人事業主旅費はなぜ非課税の規定に定めがないのか?

先ほどの所得税がかからない非課税の規定は「給与所得者」を対象に税金がかからないと規定していました。

個人事業主の出張の場合はどうなってしまうのかも見ておきましょう。

個人事業主は原則としてかかった旅費の実費だけが個人事業の必要経費になります。

個人事業主は給与所得者ではないので旅費日当などが非課税になりません。

自分に払っても経費にならないということになります。

個人事業主の社長とそこの社員が同じ出張に行って、社員と同じように日当を出した場合次のようになります。

①社員への日当:個人事業の経費、かつ、もらった社員は税金がかからない

②個人事業主が自分に出した日当:個人事業の経費にならない、かつ、もらった日当にも税金はかからない(生活費扱い)

ではファーストクラスは経費で落ちるのか?

さて本題です。

ファーストクラスは経費になるのかどうかという点です。

まずは、会社の役員や役職についている人と一般のサラリーマンで見ておきましょう。

先ほどの所得税法の規定が重要になってきます。

「その旅行に必要な支出に充てるため支給される金品で、その旅行について通常必要であると認められるもの」

ファーストクラスの航空券代を分解して考えてみましょう。

①その旅行に必要な支出に充てるため支給される金品

ファーストクラスはその出張の移動に充てているお金なので、「その旅行に必要な支出に充てるため支給される金品」に該当してきます。

②その旅行について通常必要であると認められるもの

ここが一番の山場です。

「その旅行について通常必要ってどこまで?」という大問題があるのです。

この部分は所得税法基本通達9-3が出てきます。

(所得税法基本通達9-3)

法第9条第1項第4号の規定により非課税とされる金品は、同号に規定する旅行をした者に対して使用者等からその旅行に必要な運賃、宿泊料、移転料等の支出に充てるものとして支給される金品のうち、その旅行の目的、目的地、行路若しくは期間の長短、宿泊の要否、旅行者の職務内容及び地位等からみて、その旅行に通常必要とされる費用の支出に充てられると認められる範囲内の金品をいうのであるが、当該範囲内の金品に該当するかどうかの判定に当たっては、次に掲げる事項を勘案するものとする。(平23課個2-33、課法9-9、課審4-46改正)

(1) その支給額が、その支給をする使用者等の役員及び使用人の全てを通じて適正なバランスが保たれている基準によって計算されたものであるかどうか。

(2) その支給額が、その支給をする使用者等と同業種、同規模の他の使用者等が一般的に支給している金額に照らして相当と認められるものであるかどうか。

難しい説明になるので、分解していきましょう。

①旅行の質の問題:旅行の目的、目的地、行路若しくは期間の長短、宿泊の要否はどうか

ファーストクラスに関しては旅行の目的が重要になるポイントです。

旅行の目的が趣味に毛が生えている程度であれば問題ですが、ビジネスの打合せなどであれば問題になりにくいでしょう。

②旅行の人の問題:職務内容及び地位等はどうか

新入社員がファーストクラスというのであれば問題が出るかもしれません。

社長の子供だけが新入社員でファーストクラスというケースでもなければあり得ない状況です。

そんな場合は当然問題になります。

一般的には社長や役員・出張で営業をバリバリこなす役付きの人材がファーストクラスを使うと思います。

ここもしっかりと区分をしておくことが重要です。

③出張の規定の問題:使用者・役員・使用人でバランスが取れている基準があるか

②と重複してくる部分ですが、ファーストクラスを乗る基準の役職とビジネス・スタンダードに乗る区分などの基準を作っておく方がよいでしょう。

④他の会社とのバランス:ほかの一般的同種・同規模な会社と金額的に高すぎないか

これははっきりって税務署以外わかりません。

社会通念上という言葉で言われてしまったり、他の同種・同規模の会社と比較してといわれても知りえません。

ここは絶対安全という根拠になりにくいので、①~③の部分でしっかりと対処するしかありません。

個人事業主の出張のファーストクラスは経費で落ちるのか?

個人事業の場合には必要経費の考え方になってきます。

必要経費はその収入を得るために直接要した経費の額という考え方になります。

非常に判断が難しい部分ですが、事業に関係している出張であれば大きな問題にならないと思います。

ただ調査官自体はサラリーマンであることが多く、ファーストクラスに対する理解を示しにくい可能性があります。

しっかりとした根拠を説明することで納得してもらいましょう。

まとめ

実際にファーストクラスのラウンジに行くとたくさんのサラリーマンの方が一生懸命仕事をしていますね。

ファーストクラスはただ、航空機の席が良いというものではありません。

ファーストクラスラウンジで仕事をすることも十分可能です。

喫茶店でパソコンを広げて長時間仕事をすることは難しいこともあります。

特に航空機の便変更が難しい場合や、便変更のほうがファーストクラスよりも高額になる場合もあります。

そのような場合にはファーストクラスに変更することでラウンジで仕事をすることの方がよほど経済的にもビジネス的にも合理性があると思います。

ただし、税務調査の際にはファーストクラスの経費は目立つので税理士さんに相談しておきましょう。

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