前受金と仕掛品の関係は大丈夫?【税務調査の要チェック項目】

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決算や確定申告が近付くと在庫というものに注意をしなければなりません。在庫といっても商品だけではないのです。これと対応する関係にあるものが前受金というものです。今回は前受金と仕掛品の関係を見ておきましょう。

前受金と仕掛品の関係は大丈夫?【税務調査の要チェック項目】

前受金と仕掛品や在庫という言葉を知っておかなければ税務調査の際に、経費が多すぎたり、逆に経費が少なすぎたりする場合があります。

一般的にはお金を払ったら経費になると思ってしまうかもしれませんが会計の世界ではそうではないのです。

お金が入っていても売上にならないケースもあるのです。

商品を仕入れていても経費にならないケースもあるのです。

今回は税務調査の際に重点的にチェックされる前受金と仕掛品・在庫の考え方を勉強しましょう。

期間損益計算という考え方が会計のルール【お金を払っていても経費にならないこともある】

法人決算や確定申告の際には「期間損益計算」というものが重要になります。

期間損益計算とは、その事業年度の収益とそれに対応する費用を正しく計上して損益を計算することをいいます。

損益というのは「利益のこと」ではありません。

損益の「益」とは収益のことをいいます。

収益というと堅苦しいので「お金が入ってくる儲けのこと」です。

商品を売った場合の売上や助成金などをもらった場合の助成金収入などです。

経費を無視した儲けの部分だけを収益といいます。

損益の「損」とは経費と損失のことをいいます。

売上に対応する商品仕入れや外注費などの経費も損益の「損」に入ります。

自動車が壊れてしまったり、工場が地震や火災で損害が出た場合の損失も損益の「損」に入ります。

この損益を計算した結果儲かっていれば「利益」がでて、儲かっていなければ「損失」がでます。

期間損益計算を正しく行う過程で、在庫や仕掛という考え方が非常に重要になります。

物を買っただけでは経費で落ちないのです。

売るための商品であれば、商品を売るまでは経費になりません。

商品を仕入れてお金を払っていても、売っていなければ「在庫」として会社の財産として計上しておく必要があります。

法人決算や確定申告時にはこのようにお金の流れと別に経費になるタイミングがずれたりするものをしっかりと管理することが重要なのです。

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仕入れた商品と在庫の関係【在庫はいつ経費になるのか?】

在庫とはいったい何者なのかをみておきましょう。

商品を仕入れたときに、会社の経理は「仕入」としていったん経費処理

決算時に売れ残っていたものを「商品」として経費から会社の財産に振り替えます。

(仕入れたものが経費になるまで)

①商品を仕入れたとき:(仕入)として経費処理

②売れたものに対応する商品:①の段階で経費として処理済み

③売れ残った在庫:(仕入)-②(売れた商品部分)=在庫(商品として資産に振替)

※①で全体を経費で落としていたものを決算時に在庫分だけ経費を小さくします。

経費を小さくした分を会社の資産(商品)というものに変えます。

④翌期中に売れたとき:前期末に商品として資産に振り替えたものを経費に振り替えます。

(実際の経理処理仕訳)

①(仕入)×××/(買掛金・現金・普通預金など)×××

購入時点でいったんすべて仕入という経費で処理済み。

②決算時の振替仕訳

・(商品)××/(期首商品棚卸高)××

決算時に残った在庫を商品として会社の資産に振り替えています。

期首商品棚卸高は損益計算上の経費のマイナス項目です。

経費のマイナス項目なので利益がでる方向のものです。

③翌期決算時の振替仕訳(売れた場合)

・(期首商品棚卸高)××/(商品)××

これで前期の商品在庫を期首商品棚卸高という経費科目に振替をしています。

会社の資産が経費になったという経理処理です。

在庫や仕掛に関しては建設業の税務調査で問題となる「在庫や仕掛かり」とは?の記事をご覧ください。

売上代金が入っても売上にならないことも【どの時点で売上になるのか次第】

会社の損益は「お金が入った」や「お金を払った」とは別で動いていきます。

期間損益の計算上重要なことは次のポイントです。

・どの時点で収益が確定しいてるのか

・どの時点で費用が発生しているのか

【どの時点で「収益が確定しているのか」が重要】

収益の確定時期によっては黒字にも赤字にもなるといっても過言ではありません。

だからこそ、税務調査の際には「収益の確定時期」を重点的に調査するのです。

収益の確定時期の具体例は次の通りです。

次の収益の計上基準を選択したら、正当な理由がない限り変更することはできません。

・商品や製品を出荷したとき

・商品や製品を引渡したとき

・相手の検収が完了したとき

・役務の提供のすべてが完了したとき

【お金が振り込まれたけども売上にならないケース】

この売上計上基準をみると「お金」に関しては一切関係ないのがお分かりいただけると思います。

つまり、お金が入ったからといって「売上を計上しなければならないわけではない」ということです。

逆にお金が入金になっていないからといって売上を計上しないことも認められないということです。

良心的な取引先の場合、商品を納品する前に代金を振り込んでくれるケースがあります。

建設業の場合であれば「前金」や「中間金」といわれるものもこれに該当します。

手付や前金・中間金などは相手方からすると代金の前払いです。

もらった方も仕事が終わっていないので預かっているお金ということになります。

商品の販売代金やサービスの代金を前払いしてもらった時には「前受金」として処理しておきます。

請求書を出しても実際に納品ができていない場合にも、一定の経理処理をしておきます。

(請求書を出したときの経理処理)

(売掛金)×××/(売上高)×××

このままでは商品やサービスの提供が終わっていないのに、売上になってしまいます。

そこで、次の処理をして損益に関係させないようにします。

(売上高)×××/(前受金)×××

これで売上を翌期に繰り延べることができます。

請求書を出してから入金がおこなわれた場合には、通常の売掛金の消込を行います。

(普通預金・現金)×××/(売掛金)×××

実際に商品の引渡しやサービスの提供が完了した場合に次のように処理を戻します。

(前受金)×××/(売上高)×××

まとめ

商品の引渡しやサービスの提供が終わっていない場合、「在庫や仕掛」と「前受金」を検討しましょう。

商品やサービスの提供が終わる前に入金がある場合には、前受金として入金を処理します。

未渡しの商品やサービスに係る商品などは仕掛品として、資産処理をしっかりとおこなっておきましょう。

税務調査の際に仕入れたものを全部経費で落としていると、売上と対応していない部分の在庫計上漏れとして指摘されてしまいます。

前受や在庫・仕掛は非常に難しいので税理士さんと相談しておきましょう。

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