【税務署はココを見る】自宅の家賃・光熱費を経費にする「家事按分」、社長のあなたは説明できますか?

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自宅の一室をオフィスにして働くA社長。「この家賃や電気代の一部は、当然、会社の経費になるはずだ。よし、キリよく50%を経費にしておこう!」…もし、あなたが同じように考えているなら、その申告は将来の税務調査で「待った」がかかるかもしれません。

自宅兼事務所の経費計上、すなわち**「家事按分(かじあんぶん)」**は、多くのフリーランスや中小企業経営者が活用する重要な節税策です。しかし、その計算には**「客観的で合理的な基準」**が絶対的に必要であり、「なんとなく50%」というような曖昧な計上は、税務署から最も厳しく指摘されるポイントの一つなのです。

「なんとなく」から「説明できる」経費へ

この記事では、税務調査官に「この按分基準の根拠は何ですか?」と問われた際に、あなたが自信を持って、論理的に説明できる「家事按分」の正しい方法を、具体例と共に徹底解説します。

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法的根拠:なぜ、家事按分は認められるのか?

そもそも、なぜ自宅の費用の一部を経費にできるのでしょうか。その根拠は、所得税法にあります。要約すると、「個人事業の経費と家計の費用の両方が含まれるお金(家事関連費)については、仕事で使った部分が明確に区別できるなら、その部分だけ経費にしてOKですよ」と定められています。

【参考】所得税法施行令 第九十六条(家事関連費)

法第三十七条第一項に規定する販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(…)のうちに家事上の経費が含まれている場合において、その必要である部分を明らかに区分をすることができないときにおけるその必要である部分に相当する金額は、主たる部分が当該業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分することができる場合(…)のその区分をされた部分の金額とする。

この**「明らかに区分する」**ための計算こそが、「家事按分」なのです。

【実践編】費目別の合理的な按分方法

では、具体的に何で割り振れば「合理的」と認められるのでしょうか。費目ごとに見ていきましょう。

1. 家賃・固定資産税など(場所代)

場所代は、「事業で使用している面積の割合」で按分するのが最も合理的です。

【ケーススタディ】

・家全体の面積:80㎡
・そのうち仕事専用部屋の面積:20㎡
・月々の家賃:160,000円
計算式:160,000円 × (20㎡ ÷ 80㎡) = 40,000円/月
この場合、月々40,000円(年間48万円)を地代家賃として経費に計上できます。

【ポイント】

リビングの一部で仕事をしているなど、専用部屋がない場合は、「1日のうち何時間仕事で使っているか」といった時間按分も加味して計算しますが、説明が複雑になります。税務署に最も説明しやすいのは、完全に仕事専用として使う部屋を用意し、その面積で按分する方法です。

2. 電気代・水道光熱費・通信費など

電気代などを面積で按分するのは合理的ではありません。これらは一般的に**「事業で使用している時間の割合」**で按分します。

【ケーススタディ】

・1ヶ月の電気代:15,000円
・1日の平均労働時間:8時間
・営業日数:25日/月
計算式:15,000円 × (8時間 × 25日) ÷ (24時間 × 30日) = 約4,167円/月
この場合、月々約4,167円を水道光熱費として経費に計上できます。

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この記事のまとめ

  • 自宅兼事務所の経費計上(家事按分)には、客観的で合理的な基準が絶対に必要。
  • **家賃**は「事業用の面積割合」で、**光熱費や通信費**は「事業用の時間割合」で按分するのが基本。
  • なぜその割合になるのか、計算の根拠を自分で説明できるようにしておくことが最も重要。
  • 税務調査に備え、仕事部屋の写真や間取り図、計算のメモなどを保管しておく。

その経費は、あなたの努力の証です

自宅で事業を始めた社長やフリーランスの皆さん。その一室は、単なる家ではありません。夢を追い、未来を創るための、神聖な「仕事場」です。そこで発生したコストを、正当な経費として主張することは、あなたのその尊い努力を、あなた自身が認めてあげる行為でもあります。

「この計算で、本当に大丈夫だろうか…」。そんな不安を抱えながら申告をするのは、精神衛生上よくありません。

もし、自社の按分基準に自信が持てないなら、ぜひ専門家を頼ってください。優れた「経営コンサル型税理士」は、あなたの事業の実態をヒアリングし、税務署にも胸を張って説明できる、最も有利で安全な按分ルール作りをサポートしてくれます。

自信を持って経費を計上し、生まれた利益で、さらに事業を大きくしていく。私たちは、その好循環を創り出すあなたを、心から応援しています。


【免責事項】
当サイトは、専門家の監修のもと情報を提供しておりますが、記事作成時点の法令や情報に基づいています。万全を期しておりますが、その内容の正確性や安全性を保証するものではありません。また、特定の個人や組織の状況に適用できるものではない可能性があります。
実際の税務判断にあっては、必ず税理士などの専門家にご相談の上、ご自身の責任において行っていただきますようお願い申し上げます。

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