増収増益だけではわからない資金繰りの罠【気づかないうちに陥る危機】

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増収増益ときくといよいよ決算時期と感じます。個人事業の確定申告も終わり、12月決算・3月決算も決算が終わろうとしています。増収増益は喜ばしいことですが、この言葉だけにとらわれていると会社の問題に気が付かなくなります。

増収増益だけではわからない資金繰りの罠【気づかないうちに陥る危機】

増収増益とは2つの言葉からできています。

①増収(売上が前年よりも増えたこと)

②増益(利益が前年よりも増えたこと)

この2つの言葉が合体して「増収増益」という言葉になります。

この言葉を聞く限り非常に前向き・右肩上がりの成長をしている会社ということになります。

売上が前年よりもよくなっていて、さらに、最終利益も前年よりもよいのですからマイナス要因はないと思ってしまいます。

一般的には増収増益であれば大きな問題を感じないのですが、もっとよい形で成長するために気を付けておきたいポイントを見ておきましょう。

増収が起きる原因に注目【よくない増収もある】

増収増益の「増収」という部分を分解してみてみましょう。

「増収=売上が上がること」です。

売上は次の2つの組み合わせでできています。

売上=商品やサービスの「単価」×「数量」

売上が前年よりも上がっているのは、この組み合わせが前年よりも大きければ上がるのです。

一番の理想は「単価」も上がって「数量」も上がるということです。

起業したてのときや成長過程であれば相手との力関係から値引き販売をしているケースがあります。

会社が成長してきて交渉力が付くことで「単価」を適正価格に戻すことができれば「単価」は上がります。

しかし、この「単価」が経営者の意識しない状況で下がっていることがあります。

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給与形態や人事評価が影響しているケースもある

自社の従業員給与の決め方によっては従業員は「値引き販売」を行っている可能性があるケースです。

大きな会社になってきて総務や経理など部門が分かれていて、決裁権なども明確に分かれているケースではおきにくいのですが小さな会社は担当者の裁量が大きくなります。

特に次の場合には問題が起きやすくなります。

①販売数量によって賞与や給与算定上インセンティブが与えられるケース

②売上高によって賞与や給与算定上インセンティブが与えられるケース

経営者が売上至上主義を打ち出している場合は、会社の方針と従業員の販売方法が一致してしまいます。

単価が下がって販売数量が増える問題点【資金繰りに悪影響になっているケースも】

単価が下がって販売数量が増える場合には次の問題点があります。

①押し込み販売のため売上代金の回収サイトが悪化

②販売金額が増えることによって支払いサイトと入金サイトのずれが大きくなる

③販売数量が増えることにより出荷コスト・事務コストが押し上げられる

①押し込み販売のため売上代金の回収サイトが悪化

よくない性質の売上が上がることで会社の資金繰りは徐々に悪くなります。

販売数量や販売金額を増やすために営業担当者が「押し込み販売」をしているケースは注意が必要です。

押込み販売とは「なんとか勝ってください」「代金の入金は後でも構わないので」というような「買い手市場」の販売形態です。

数量や売上金額ベースのノルマがきつい場合には、販売担当者が起こしやすい問題です。

買い手市場で商品販売をしているので、支払いサイトも正規の入金サイトよりも遅れる可能性があります。

さらに販売先与信を無視した販売になるリスクもあります。

売掛金の回収サイトの悪化や未入金リスクが増える可能性があります。

②販売金額が増えることによって支払いサイトと入金サイトのずれが大きくなる

販売数量が増えるということは商品の仕入れも増えてきます。

商品の仕入れが増えると、商品の仕入れの支払いも増えてきます。

売上先の入金サイトと別に、自社の支払いサイトが先に来るようになる可能性があります。

ここで支払いサイトを守ることができなければ自社の与信が下がります。

取引先との関係悪化や商品単価改定・現金仕入れが必要になるなど悪循環になるリスクが出てきます。

③販売数量が増えることにより出荷コスト・事務コストが押し上げられる

販売数量が増えると商品納品コストが増えてきます。

納品書・請求書の作成・回収管理や督促業務など事務系等の仕事も増えてきます。

しっかりとした利益が取れている販売であれば事務コストや出荷コストが増えても問題がありませんが、利幅の悪化した売上が増えた場合ただ出費が増えるだけになります。

増益が起きる理由にも注目すべき【マイナスな増収もある】

「会社の最終利益が前期よりも良かった」と安心してはいけません。

問題はなぜ最終利益が前期よりも良かったのかです。

最終利益が良い原因には本業が良かっただけではなく、固定資産を売却したことで発生した利益が原因という場合もあります。

これ以外にも本業の内容としては赤字だったのに助成金収入があったことで大きな黒字になっているケースなどもあります。

増収が起きた原因が「本業による増益」であれば成長した結果問いますが、これ以外の場合には注意が必要です。

本業以外で増益が起きた場合の注意点【税金は出るが将来的入金は増えない】

本業は毎年コンスタントに発生していくものです。

本業の増益を生み出すことができたことは、経営的な経験として今後に生かされていきます。

ところが本業以外の固定資産売却益・助成金収入による増益の場合には「単発」の増益と考えられます。

固定資産を売却しなければならなかった理由があった可能性もあります。

不要なものを処分することで発生した収益であればよいのですが、資金繰りの関係から競争力維持に必要な資産を売却してしまっているケースもあります。

増益の原因が本業でない場合には、単発で発生した収益をもとに本業の強化ができていなければ「じり貧」に陥ってしまいます。

本業の収益も、本業以外の収益も基本的には税金の対象になってきます。

本業の収益力強化ができなければ長期的な資金繰り改善は難しくなります。

まとめ

増収増益ということでもろ手を挙げて喜んでいられないケースもあります。

自社は本業の内容改善で増収増益ができていたのかをしっかりと検証しましょう。

売上が上がっているのに粗利益が下がっているケースや入金サイトが伸びているケースは要注意です。

増益の場合には最終利益だけで判断せずに「営業利益」や「経常利益」といった利益の種類もしっかりと確認しておきましょう。

ビジネスパートナーの税理士さんと試算表をみながら話をする時間を取って情報交換をしっかりとしておくことが重要です。

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