知らないとソンをする売上割戻し
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経営者の皆様、「売上割戻し」という言葉をご存知でしょうか?簿記会計の専門用語の一つですが、これをしっかりと理解しておかなければ税務調査の際にもめてしまう可能性が高くなります。
知らないとソンをする売上割戻し
簿記会計は通常の取引を会計に取り込むために名前を付けたり、処理を決めたりしているものです。
売上割戻しと聞くと難しいことに感じるかもしれませんが、経営者の方が普通に行っている商習慣の一つです。
ただ、税法上の特性をしっかりと知っておくことで戦略的に売上割戻しを使っていきましょう。
売上割戻しとは
売上割戻しとは、得意先に対して、売上高や売掛金の回収高などに比例して金銭などで支出するものをいいます。
得意先にたいする厚遇の一環ですね。
得意先のランク付けに応じておこなうリベートです。
たくさん買ってくれるお客様には、リベートを厚くする
早期に入金してくれるお客様にリベートを多くする
逆に、少量の取引のお客様や入金サイトが長いお客様には当初の販売金額のみでリベートはしないという感じです。
この売上割戻しは、税務上様々なトラブルになる可能性があるのです。
なぜ売上割戻しが税務調査でトラブルになるのか
なぜ売上割戻しが税務調査でトラブルになるのかを項目に分けてみ行きましょう。
1.税務調査でトラブルになりやすい経費と似ている
法人税法上、経費性が否定されやすい経費と似ている経費なのです。
売上割戻しは、税務上トラブルになりやすい次の経費と似ているからです。
① 交際費
② 寄付金
③ 繰延資産
交際費・寄附金・繰延遺産として処理すべきものを売上割戻しとして処理していないか気を付けなければなりません。
交際費や寄附金は、その法人の資本金などで異なりますが一定の金額以上は経費になりません。
繰延資産に該当する場合も、一定の金額以上の場合、数年間に分けて経費にする必要が出てきます。
会社は「リベート=経費」と考えているのでその年の経費として処理します。
ところが、税務調査の際に調査官はリベートが売上割戻し以外の費用にならないかを検討してきます。
交際費・寄附金・繰延資産に該当しないことを明確にしていなければ、税務調査で修正申告を求められる可能性が高くなります。
2.売上割戻しの税務上認められる規定が細かい
売上割戻しの取り扱いについて、通達で細かく規定があります。
通達でたくさん規定しているということは、それだけたくさんの取り扱いを定めているということになります。
この通達通りに処理をしていれば税務署は文句を言いません。
ただ、忙しい経営者が通達を読んで理解していることは稀です。
なんとなく問題なさそうだろうと思って、行ったリベートが売上割戻しにならないとなり税務調査でトラブルに発展してしまうケースがあります。
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3.税務調査で否認されるとダメージが大きい
税務調査で認められないことを否認といいます。
税務調査で否認されると、予定していない税額が出ます。
処理している期間がずれている場合、いつかは帳尻があります。
今期のリベートとして処理しているものが、翌期のリートだと判断された場合は次のようになります。
今期の経費が減って利益が出る → 今期の法人税が増える
翌期の経費が増えて利益が減る → 翌期の法人税が減る
しかし、寄附金や交際費として認定されてしまうとこれが成り立たなくなってしまいます。
リベート=寄附金として認定されてしまうと次のようになります。
今期の法人税法上の経費が減る → 今期の法人税が増える
翌期の処理には一切影響がない → 翌期の法人税は増減しない
ただただ、法人税が増えて終わりになります。
売上割戻しのポイント
売上割戻をしっかりと使うために注意点があるので見ておきましょう。
1.旅行・観劇などへの招待は要注意
売上割戻しのポイントは、売上高や回収高に比例したり、売上高の一定金額ごとに金銭で支出するものが原則です。
売上高や回収高に比例していればなんでも売上割戻しとして取り扱われないという部分に注意が必要です。
売上割戻しになると思い、
得意先を旅行に招待した
得意先にスポーツ観戦チケットをプレゼントした
得意先に舞台やコンサートチケットをプレゼントした
ということがあります。
この場合、現金で支出していないことになってしまいます。
旅行や観劇などへの招待に関しては、基準が売上割戻しと同じであっても交際費として取り扱われてしまいます。
交際費に関する課税方法は中小企業と大法人で異なります。
さらに、交際費に関する法律は定期的に見直しされることがあるため、将来的により経営者にとって不利な課税に代わる可能性もありますので注意しましょう。
2.経費になる時期を間違わないように注意
決算作業をしていて利益が出そうだから、申告年度の経費にしてしまおうと思う会社があります。
しかし、これは認められないケースが多くなります。
まさに、税務調査でピンポイントで指摘されてしまうことになります。
このトラブルを避けるために次のポイントを押さえておきましょう。
① 取引先に対して、割戻しを明示・通知しておくこと
取引先に、割戻しを支払っていれば問題ないのですが、決算日に支払いが終わっていないケースがあります。
そんな場合には、取引先にたいして、売上割戻しに関して明示していたり、通知しているかがポイントになります。
明示している場合は、その商品を販売した日と同じ事業年度で経費にすることができます。
② 取引先に、割戻しに関する明示をしていない場合
取引先に、売上割戻しに関する明示をしていない場合には、金額を通知した日または実際に支払った日の事業年度で経費にします。
相手は基準をしらないので、実際に通知をもらうか、支払ってもらってから認識するためです。
こちらのほうが、法人税計算上節税になるタイミングが遅くなります。
③ 社内で算定基準が定められていて、事業年度の末までに相手に通知していなかった場合
②の特例になります。
車内で売上割戻しに関する算定基準が定められている場合、その算定基準で計算した金額を事業年度の決算で未払金に計上することができます。
ただし、その事業年度の法人税の確定申告期限までに相手に通知していることと、継続適用が要件となっているので注意してください。
まとめ
売上割戻しは、上手に活用すると節税しながら取引先との関係強化に役立ちます。
売上割戻しの注意点
売上割戻しの基準をきちんと作っておく
売上割戻しに関する条件を明示しておく
売上割戻しに関する金額を通知しておく
交際費や寄附金といった税務上やっかいな経費になりやすいので注意が必要です。
これ以外にも、長期間預かる場合など様々な注意点がありますので詳しくは税理士事務所に相談してみてはいかがでしょうか?
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