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決算まであと3ヶ月。今期の利益は、予想以上に大きく出そうだ。A社長の頭に、以前どこかで聞いた「あの噂」がよぎります。
「決算前に、4年落ちの高級中古車を買えば、その購入費用をたった1年(※)で経費にできて、ごっそり節税できるらしい…」
これは、多くの経営者の間で、半ば伝説のように語られる有名な節税スキームです。しかし、この話の表面だけを鵜呑みにして安易に実行すると、会社のキャッシュフローを著しく悪化させ、経営を危機に陥れる**「劇薬」**になりかねないことを、あなたはご存知でしょうか。
「節税」と「資金繰り」のバランスを見極める
この記事では、なぜ「4年落ち中古車」が節税になると言われるのか、その法的根拠(カラクリ)と、多くの人が見落としている致命的な罠について、専門家の監修のもと、徹底的に解説します。正しい知識が、あなたの会社を不要なリスクから守ります。
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なぜ「4年落ち」なのか?減価償却の魔法
この節税スキームの核心は、以前の記事でも解説した**「減価償却」**のルール、特にその資産が使える期間を示す**「法定耐用年数」**の計算方法にあります。
普通乗用車の新品の場合、法定耐用年数は6年です。しかし、中古資産の場合は、その資産を事業に使い始めてから、あと何年使えるかを見積もって計算します。その計算方法が、法律で定められているのです。
中古車の耐用年数の計算式
中古資産の耐用年数は、以下の計算式で算出します。
(法定耐用年数 - 経過年数) + (経過年数 × 20%)
【ケーススタディ:4年落ち(48ヶ月経過)の中古車の場合】
・法定耐用年数:6年(72ヶ月)
・経過年数:4年(48ヶ月)
計算式:(72ヶ月 – 48ヶ月) + (48ヶ月 × 20%) = 24ヶ月 + 9.6ヶ月 = 33.6ヶ月
1年未満の端数は切り捨てるため、耐用年数は2年となります。
そして、減価償却の計算方法の一つである「定率法」を用いると、耐用年数2年の償却率は100%です。つまり、購入した年に、その取得価額の全額を償却(経費化)できる(※)のです。これが、「4年落ち中古車は節税になる」と言われる最大のカラクリです。
(※厳密には期首に購入した場合。期中に購入した場合は月数按分が必要です)
しかし、ここに潜む「致命的な罠」
「すごい!じゃあ早速、高級車を買いに行こう!」と思ったあなた。ここで立ち止まってください。多くの人が、このスキームの最も重要な側面を見落としています。
罠:節税額以上に、会社の「現金」がごっそり減る
考えてみてください。仮に800万円の中古車を購入し、全額を経費にできたとします。法人税率が約30%だとすれば、節税できる金額は 800万円 × 30% = **240万円**です。
しかし、あなたの会社の銀行口座からは、**現金800万円**が出て行きます。
つまり、この節税策を実行するためには、手元に560万円(800万円 – 240万円)の余剰資金がなければ、会社の資金繰りは確実に悪化するのです。「節税」という言葉の魔力に惑わされ、会社の血液であるキャッシュを失ってしまっては、本末転倒です。
【税務調査のリスク】
さらに、その車が「本当に事業に必要なのか?」という点も、税務調査では厳しく問われます。社長の趣味や、家族の送迎にしか使われていないと判断されれば、その購入費用は役員賞与などと見なされ、経費として認められない可能性もあります。
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この記事のまとめ
- ✅ 「4年落ち中古車」は、減価償却のルール上、耐用年数が2年になり、短期での経費化が可能。
- ✅ しかし、節税できるのは購入額の一部(法人税率分)に過ぎない。
- ✅ 最大の罠は、節税額以上に、会社の現金が大幅に減少することによる資金繰りの悪化。
- ✅ 本当に事業に必要な車であり、かつ、手元の資金に十分な余裕がある場合にのみ、検討すべき選択肢。
社長、その決断は「未来への投資」になっていますか?
利益が出たからといって、慌てて何かを買って経費にする。それは、節税ではなく、ただの「浪費」かもしれません。本当に賢い経営者は、その利益を、来年の売上を創り出すための広告宣伝費や、社員の能力を高めるための研修費、あるいは万が一の事態に備えるための内部留保といった、**「未来への投資」**に使うのではないでしょうか。
目先の税金を少し減らすことよりも、会社の10年後を創ることの方が、社長であるあなたにしかできない、尊い仕事です。
「うちの会社の場合、この利益をどう使うのが一番賢いだろうか?」。その重要な意思決定に、ぜひ専門家の視点を加えてください。優れた「経営コンサル型税理士」は、短期的な節税策だけでなく、あなたの会社の未来の成長を見据えた、最適な利益の活かし方を共に考えてくれる、最高のパートナーです。
あなたのその冷静な判断が、会社を真の成長へと導きます。私たちは、挑戦するあなたを、いつでも応援しています。
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