自分でやる確定申告の失敗談⑥~修理をしても経費で落ちない?知らないと怖い資本的支出とは?~
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確定申告時期になると大きな工事が全部経費にならないかもしれないという情報を耳にして青くなることがあります。何十万も数百万円も払った工事代金が経費にならないなんて馬鹿なことがあるのかというとあるのです。
自分でやる確定申告の失敗談⑥~修理をしても経費で落ちない?知らないと怖い資本的支出~
所得税でも法人税でも大きな工事の経理処理には注意が必要です。
一般的には工事をしたりすると金額が高額になります。
できれば全部を経費で落としたいところですが、所得税も法人税もなかなか経費で落とせないようにできているのです。
なぜ経費にならない部分があるのかをしっかりと理解しておくことで税務調査トラブルを減らしていきましょう。
資本的支出と修繕費というものがある
一般的には聞いたこともない「資本的支出」と「修繕費」という言葉があります。
工事などがおこなわれた場合、その工事が「資本的支出」と「修繕費」のどちらになるのかを考えていくことになります。
では、資本的支出や修繕費とはどのようなものをいうのかを見ていきましょう。
修繕費とはどんな経費?
修繕費とは名前の通り「修繕」するための経費です。
そう、修繕費は経費なのです。
ものを修理するための経費です。
ポイントは修理するためという点です。
モノがよくなるというものではく、あくまでも修理です。
例えば、
・壁に穴が開いたので穴をふさいだ
・地盤沈下をしたので土盛りをして沈下前の状況に戻した
・機械が壊れたので修理した
・敷設していた砂利の補充
・自動車が事故を起こしたので修理した
ただ難しいのは、上記の例のようにわかりやすいものであればよいのですが次のような場合に悩んでしまうのです。
・古くなった木製の壁に穴が開いたので併せて一部改装工事を行った
・建設機械の金属製ヘッド部分が壊れたので最新式のチタンヘッドに取り換えた
・自動車が事故で壊れたので修理と合わせてオプションパーツもつけた
このように修理と合わせてモノがよくなってしまうものも併せて行われることが実務上は多いのです。
だってどうせ工事しなければならないのであれば、少し長持ちするようにしたいのが人情です。
こうなってくると「モノが良くなっているので修繕費ではありません」と税務調査でいわれてしまうのです。
「修繕費ではないというと何になるのか?」と疑問に思います。
これが「資本的支出」と呼ばれるものです。
資本的支出とはどんなもの?
資本的支出とは固定資産に対する修理や改良等のために払った金額のうち、その固定資産の価値を高め、又はその耐久性を増すこととなると認められる部分に対応する金額のことをいいます。
これは「日本語か?」と思ってしまうほどわかりにくいですね。
少し分解してみていきましょう。
・対象となるもの
:固定資産(建物・機械・自動車・ソフトウエアなど)
・どんな工事などをしたのか
:修理・改良の工事など
・どんな効果があったのか
工事の効果①:建物や機械などの価値が上がった
工事の効果②:建物や機械などの耐久性が増した
(資本的支出となる固定資産とは?)
固定資産というと、建物や機械など目に見えるものだけかというとそうではありません。
建物や機械のことを有形固定資産といいます。
目に見えるかたちあるものです。
ソフトウエアなどのことを無形固定資産といいます。
これは目に見えない固定資産です。
ソフトウエアについては、使用可能期間が長いため一定金額以上の場合には無形固定資産として減価償却することになります。
(資本的支出になるものがほとんどなのでは?)
資本的支出となる工事については、修理や改良工事が対象となっています。
思いつく限りですが、修理や改良以外で工事をすることなんてあり得ません。
つまり工事をした場合、価値が上がったり耐久性が増していれば資本的支出に該当してしまうのです。
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資本的支出に該当した場合はどうなるの?~資本的支出を経費で落としていく方法~
大金を払って工事をしても「資本的支出に該当してしまったらどうしたらいいの?」「経費で落ちないの?」と不安になります。
資本的支出も長い目で見ると経費で落ちます。
減価償却という自動車や建物を購入したときに年数をかけて経費にする方法で資本的支出も経費化していきます。
つまり工事をしたその年に大金は出ていても節税効果のある経費は少ししか出ないということになります。
①原則的な減価償却方法
・その資本的支出をした減価償却資産と種類・耐用年数を同じくする減価償却資産を新たに取得したものとして減価償却をします。
わかりやすくいうと、新しく資産を購入したのと同じように減価償却をしていくということです。
②特例的な減価償却方法
a:平成19年3月31日以前に取得した減価償却資産に資本的支出をした場合
①の原則にかかわらず、資本的支出をした減価償却資産の取得価額に資本的支出を加算して減価償却することができます。
こちらの方が減価償却額が大きくなります。
b:定率法を採用している減価償却資産に資本的支出をした場合
平成19年4月1日以後に取得した定率法を採用している減価償却資産に資本的支出をおこなった場合は次のようになります。
①資本的支出をおこなった年
・資本的支出の対象の減価償却資産をいつも通り定率法で減価償却をする
・資本的支出部分だけを原則的に減価償却する。
・本体の減価償却費+資本的支出の減価償却費がその年の経費になる
②資本的支出を行った翌年
1月1日に(資本的支出をした減価償却資産の期首未償却残高+資本的支出の期首未償却残高)をもとに減価償却することができる
※平成23年以前に取得した減価償却資産に資本的支出をしている場合には、定率法の償却率が異なるためこの処理はできません。
資本的支出と修繕費の区分方法~工事を経費と資本的支出に分ける方法~
工事や修理をすると修繕費になれば経費になりますが、資本的支出になると減価償却をして年数をかけて経費化する必要があります。
それは仕方ないにしても、「どうやって区分するんだ?」と頭を抱えてしまいます。
そんな時には次の順番で判定をしていきましょう。
1:少額な金額か周期が短く行われている工事・修理かどうか
①金額基準で判定する場合:金額を目安に修繕費処理しても大丈夫なケース
修理・改良費用が20万円未満の場合は修繕費でOK
②工事・修理の周期で判定する場合:頻繁に行っているものであれば修繕費処理しても大丈夫なケース
修理・改良等がおおむね3年以内の期間を周期として行われていることが実績等から見て明らかな場合は修繕費でOK
2:経費期基準での修繕費判定
修理や改良工事などをしても資本的支出なのか修繕費なのかがわからない金額がある場合で、20万円以上だったり3年の周期で行っていない場合には次の判定に入ります。
資本的支出なのか修繕費なのかわからない金額が次のどれかに該当した場合には修繕費として経費で落としてOKです。
①資本的支出か修繕費かわからない金額が60万円未満の場合
②資本的支出か修繕費かわからない金額が、その対象固定資産の前期末取得価額のおおむね10%相当額以下の場合
3:継続経理基準での修繕費判定
修理や改良工事で資本的支出か修繕費かが不明な金額がある場合で、上記の1・2の規定を使わない場合には継続経理基準で修繕費部分を決めることができます。
継続して次の金額の少ない方を修繕費とすることができます。
①修繕費なのか資本的支出かわからない金額の30%相当額
②修繕や改良対象の固定資産の前期末取得価額の10%相当額
災害の場合の原状回復の特例
最近では風水害や地震など災害が多くなってきました。
災害を受けた場合の原状回復については特例があるのでご紹介します。
災害により損壊した業務用固定資産について支出した費用で、資本定期出と修繕費の区分が困難な場合には雑損控除の規定を受ける場合を除いて、費用の30%を修繕費・残り70%を資本的支出とすることができます。
※保険金をもらった場合などは別途注意点があるので税理士さんに相談しましょう。
耐用年数を経過した資産について行った修理や改良工事の場合
古くなった機械や建物の場合、減価償却が終わっていることがあります。
減価償却が終わっている固定資産について修理や改良工事などをした場合はどのように取り扱うのか気になるところです。
減価償却が終わっている固定資産の場合も、原則通り修繕費と資本的支出を判定して経理をしていくことになるので注意しましょう。
まとめ
・自分では修理をしたつもりでも税務調査の際に経費で落ちないといわれることがあるので注意しましょう。
・資本的支出と修繕費をきちんと区分して管理するようにしましょう
・資本的支出と修繕費の区分方法は複雑ですので心配な場合には税理士さんに相談し起きましょう
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