決算月にできる節税~短期前払費用の特例~

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決算期にできる節税には短期前払い費用があります。金額的にも大きく節税効果も大きなものですが注意点があるので見ていきましょう。

決算月にできる節税~短期前払い費用の特例~

事業年度の最終月のことを「決算期」や「決算月」といいます。

決算期になって思いのほか利益が出ている場合、予期しない納税になる場合があります。

特に、突発的な利益が出てしまった場合などは、思いがけない納税になってしまい経営的に大きなダメージつながることがあります。

そういった場合に、「決算月(決算期)にできる税金対策はないのか?」と探してしまいます。

決算期でもまだ間に合う節税の代表的なものに「短期前払い費用の特例というものがあります。

まず、決算期(決算月)と事業年度の関係についてみていきましょう。

決算期と事業年度の関係は次のようになります。

・ 1月決算の場合(事業年度2月1日~1月31日) →1月(決算期・決算月)

・ 2月決算の場合(事業年度3月1日~2月末日)   →2月(決算期・決算月)

・ 3月決算の場合(事業年度4月1日~3月31日)  →3月(決算期・決算月)

・ 4月決算の場合(事業年度5月1日~4月30日)  →4月(決算期・決算月)

・ 5月決算の場合(事業年度6月1日~5月31日)  →5月(決算期・決算月)

・ 6月決算の場合(事業年度7月1日~6月30日)  →6月(決算期・決算月)

・ 7月決算の場合(事業年度8月1日~7月31日)  →7月(決算期・決算月)

・ 8月決算の場合(事業年度9月1日~8月31日)  →8月(決算期・決算月)

・ 9月決算の場合(事業年度10月1日~9月30日) →9月(決算期・決算月)

・10月決算の場合(事業年度11月1日~10月31日)→10月(決算期・決算月)

・11月決算の場合(事業年度12月1日~11月30日)→11月(決算期・決算月)

・12月決算の場合(事業年度1月1日~12月31日)  →12月(決算期・決算月)

マルとバツで対立するビジネスマン

損金の原則的取扱い

簡単にいうと法人税の計算上、経費になるもののことを損金といいます。

この損金について規定している条文は法人税法22条という部分に記載されています。

これをみると、法人税法上経費になるものは、商品や工事・製品の原価、販売費などの経費、損失と規定されています。

今回の節税で出てくるものは、このうち「販売費などの経費の一部」がかかわってきます。

(法人税法22条3項) 引用

 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。

1 当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額

2 前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額

3 当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの

もう少しわかりやすくまとめると次のようになります。

① その事業年度の収益とヒモがつく原価

② その事業年度の販売費、一般管理費その他の費用で債務の確定しているもの(減価償却費債務関係なく経費)

③ その事業年度び発生した損失

つまり、その年の費用だけが法人税法上の損金(経費)として認められるということになります。

前払した費用は、その事業年度を超える部分はその事業年度の費用として認められないということになります。

その前払した費用など、費用にならない部分は、「前払費用」や「前払金」として資産になります。

翌期以後、実際にその期の費用になるときに、はじめて経費になります。

今回の特例の対象となる「前払費用」とはどんなものか?

前払費用とは,費用のうち

① 一定の契約に従い継続的に役務の提供を受ける場合

② まだ提供されていない役務に対し支払われた対価をいうもの

これは、費用だけどもその年の経費になるものではなく資産です。

(注意】役務提供以外の契約による前払金と厳に区別すべきものです。

役務の提供以外のものは、前払費用ではなく、前払金です。

短期前払い費用の特例は「あくまで例外的取扱い」

原則:短期前払い費用は翌期以後の経費 → 今期の費用にならない

特例:例外的に今期の経費にする → 節税につながる

あくまでも、今期の費用分だけが今期の損金です。

短期前払い費用の特例に該当する場合だけ、例外的に前払費用分も今期の経費にしてよいというものです。

特例ですので、厳密に適用する必要がありますので注意しましょう。

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法人税基本通達2-2-14(短期の前払費用) 

(引用)

 前払費用(一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち当該事業年度終了の時においてまだ提供を受けていない役務に対応するものをいう。以下2-2-14において同じ。)の額は、当該事業年度の損金の額に算入されないのであるが、法人が、前払費用の額でその支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、これを認める。(昭55年直法2-8「七」により追加、昭61年直法2-12「二」により改正)

(注) 例えば借入金を預金、有価証券等に運用する場合のその借入金に係る支払利子のように、収益の計上と対応させる必要があるものについては、後段の取扱いの適用はないものとする。

金の豚の貯金箱

支払った前払費用が特例的に損金になるための要件

要件1 一定の契約に基づいて継続的に等質・等量の役務の提供をうけるもの

要件2 役務の提供の対価を事業年度末までに支払っているもの(前払している)

要件3 支払日から1年以内に役務の提供を受けるもの

前払費用の特例なので、前払していることが要件になります。

これは、重要性の原則と継続性の原則という会計原則から、税務上も特例として認めているものです。

そこで、金額が大きすぎるものや長期間に及ぶものについては特例として認められない場合があります。

通達では、支払日から1年以内に役務の提供を受けるものと規定しています。

金額が大きすぎるものが認められないということは、通達上明文化されていません。

しかし、平成12年1月25日の長崎地裁の判例でこの通達の適用について、金額が大きすぎる場合には重要性の原則から認められないことに言及しています。

行き過ぎた節税とみられると否認されるリスクがある点は注意が必要です。

まとめ

前払費用は原則として、その事業年度の損金(経費)にはなりません。

短期前払費用の特例の要件に該当する場合には、支払った前払分もその事業年度の損金(経費)にできます。

ただし、金額が大きすぎる場合には行き過ぎた節税と認定される場合には否認されるリスクがありますので注意しましょう。

短期前払い費用については、節税効果が大きい反面税務調査時に税理士さんの対応が非常に重要になります。

節税などについて一度税理士さんに相談してみてはいかがでしょうか?

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