取引先の従業員に渡した「商品券」や「現金」は経費で落ちるのか?【キックバックと交際費】

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取引先の担当者から仕事をもらっていると「お礼」をすることがあります。場合によっては現場ごとや物件ごとに担当者にリベートを支払うケースもあります。このキックバックなどを取引先の会社ではなく担当者に渡した場合にはどうなってしまうのでしょうか?

取引先の従業員に渡した「商品券」や「現金」は経費で落ちるのか?【キックバックと交際費】

建設業や不動産業に昔は多かった現場担当者へのリベート(キックバック)ですが、最近では建設業だけではなく様々な業種で発生しています。

紹介をもらったり、たくさん仕事をもらった場合にリベートを出すという取引慣行自体はずっとあるといっても過言ではありません。

相手の会社に対して規定に基づいてリベートを出しているのであれば「売上割戻し」というものになります。

会社との取引ですが担当者が仕事を発注していることから、リベート(キックバック)の支払先が会社ではなく「取引先担当者」になってしまうケースが多く発生してきます。

この「取引先の担当者」に支払ったお金や商品券は経費で落とすことができるのでしょうか?

今回は「取引先の担当者」に支払ったリベート(キックバック)が税務上どのように取り扱われるのかを見ていきましょう。

法人税法の通達に明確に記載がある【得意先従業員へのリベート】

得意先の従業員さんに商品券や現金を渡す行為自体は「よくあること」として経営者の間では考えられています。

法人税法でも通達で具体的に定めていることを考えると、「よくある取引」として認識しているように見えます。

具体的には、次のように定められています。

法人税法基本通達61の4(1)-15

次のような費用は、原則として交際費等の金額に含まれるものとする。ただし、措置法第61条の4第4項第2号の気芸の適用を受けるものを除く。

※措置法第61条の4第4項第2項:「飲食費であって、その支出する金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額が政令で定める金額以下の費用」

(中略)

(9)得意先、仕入先等の従業員等に対して取引の謝礼等として支出する金品の費用(61の4(1)-14に該当する費用を除く)

これを見る限り得意先の担当者や従業員に対して商品券や現金でリベート(キックバック)をしていても経費で落ちると思えてきます。

交際費も経費です。

交際費の具体例として法人税法基本通達に定めているので」「税務署のお墨付きがある」と感じますね。

ところが実際の税務調査ではそういかないケースが多いのです。

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従業員がもらったリベートが法人の収入除外で重加算税というケースも

キックバックやリベートを支払った会社側の税務調査でのトラブル事例の前に、もらった従業員がいる側の会社についてみておきましょう。

これがあるため、次の支払った会社側の税務調査で大きなトラブルが生まれていると考えられます。

会社の役員や従業員が取引先からリベートやキックバックをもらっているケースがあります。

税務調査の局面ではこれを「法人の収入」として考えられて、法人側で「収入計上漏れ+重加算税」という処理がされてトラブルになっている事例があります。

法人税法には通達が定められていて、「取引先の従業員等に対する金品の費用は交際費に該当する」というのが税務署の判断になるはずでした。

ところが実際にはもらった人が従業員ではなく、「法人自体のもの」として判断をしているケースがあります。

裁判まで発展しているものだけではないと考えられるので、税務調査の現場では相当数このような事例があるのではないでしょうか。

仙台地裁平成21年(行ウ)第33号更正処分取り消し請求事件(判決日平成24年2月29日)

この判決では裁判所は「リベート(キックバック)が法人に帰属するかどうか」を次のことを検討すべきと考えています。

①リベート(キックバック)を受領した従業員等の法律上の地位・権限はどのようになっているか

②リべート(キックバック)を受領したとされる従業員等が単なる名義人で、実質的に手数料を法人が受領しているとみることができるか

税務調査で従業員等がリベート(キックバック)をもらっている場合、法人の収入として計上すべきものか、その従業員等が自分のものとしているのかを調べることが必要と考えられるのです。

例えば、次のような場合には法人の収入として見られる可能性が高いといえます。

・リベート(キックバック)をもらった人の口座から出金したお金で会社の経費・備品購入代金を支払っている

こう考えると会社の役員が受領している場合には、法人との利益相反行為であることだけでなく運転資金の補充などをするケースも多いため「法人の収入」と考えられやすいと思います。

リベートをもらっている従業員等がいるかどうかがわかるのは、支払先からの情報ということが多いため支払先の会社の情報から税務調査ということが考えられます。

事実確認でトラブルに発展するケースも【取引先への通知】

担当者がよくしてくれたのでお礼に渡した商品券や現金が税務調査で辛い目にあうケースもあります。

「実際に相手の会社の収入とすべきものかどうかを調査するために相手の会社側に通知する」というプレッシャーを受ける事があります。

先ほどのもらった従業員が属する会社側の税務調査での判定として争われた事例に発展するケースになります。

こんなことをされると担当者がクビになってしまったり、取引関係が悪化してしまうリスクが出てきます。

相手方の会社も税務署の税務調査は受けたくないというのが本音でしょう。

そんな面倒くさいことを起こす下請や取引先とは付き合いたくないというようになるリスクがあるのです。

税務署から得意先に担当者へのリベートを通知されてしまうことをなんとかやめてほしいところです。

「税務調査の適正な手続きだから連絡する」といわれると「何とかやめてほしい」と調査官にお願いしたくなります。

連絡をやめるのであれば「商品券や現金は社長が個人的に使ったという念書緒を書いてほしい」ということもあり得ます。

通達まであるので担当者へのリベートは交際費になると思っていたら、こんなケースになるリスクがあるので注意しましょう。

まとめ

取引担当者などへのお礼と思ってしていた商品券や現金でのリベート(キックバック)は税務調査で思わぬトラブルに発展するケースがあることを知っておきましょう。

支払った会社側は通達通り交際費と考えていても、相手側の実態によっては会社の収入とすべき場合もあります。

会社の収入とすべきかリベートをもらった従業員等の収入とすべきかは、相手側の会社に対する税務調査(反面調査)をおこなうことによって判断するケースがでてきます。

リベート(キックバック)を支払う場合には、もらう側にも迷惑にならないかを確認しておくことも重要です。

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