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個人事業を開業したときに黒字だとは限りません。初期投資の大きな事業であれば赤字になることもよくある話です。初めての確定申告で赤字になった時に知らなければ損をするので事前に知っておきましょう。

開業時に個人事業が赤字になった時に損をしない方法

開業した年は赤字になる人は多いのです。

なぜなら開業年には特別な支出が多くなるからです。

特別な経費の支払いが多い反面、売上が最初から急激に上がることは少ないからです。

そのため年の後半で開業した場合には「起業した年の確定申告は赤字」になりやすいのです。

正確には開業年の事業所得が赤字になることが多いのです。

事業が赤字になった場合に確定申告を上手に使うことで節税だけではないメリットがあることをご存知でしょうか?

今回は開業した年の事業所得が赤字になった場合についてみていきましょう。

開業した年にかかる特別な支出とは?~開業費という繰延資産~

事業を始めると実に様々な支払いが出てきます。

サラリーマン時代には事業をするとこんなにもお金がかかるのかと痛感するほど支払いが多いことに気が付きます。

サラリーマン時代に数千万円を動かしていた人でも自分で事業を始めると小さな金額の積み重ねがどれほどつらいのかを実感することになります。

実は会社が様々な支払いをしてくれていて、皆さんが仕事に専念できる環境を作ってくれていたということなのです。

今度は皆さんが事業主として会社の支払いをおこなっていくことになったのです。

そうはいっても開業したての時に限って特別にかかる経費もあるので不安は募るばかりです。

個人事業を始めるとどんな支払いが出てくるかから見ていきましょう。

1:会社経営で支払いが出る経常的支出

①事務所や店舗の家賃

②電気ガス水道などの光熱費

③携帯電話・固定電話・インターネット通信料などの通信費

④正社員やパート・アルバイトへのお給料

⑤商品や材料の仕入れ

⑥ホームページ作成代金

⑦コピー機などのリース料

⑧賠償責任保険・火災保険などの保険料

⑨税理士さんなどへの顧問料

⑩借入金の返済

※借入金の返済は経費ではありません。

個人事業を始めていくとこれらの経費が毎月出てくる一般的な支払い関係です。

開業前にでてきた支払いに関して特別な規定があるのでしっかりと押さえておきましょう。

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○開業前に支払った経費に関する規定(繰延資産とは?)

所得税法施行令第7条

繰延資産の意義に規定する政令で定める費用は、個人が支出する費用(資産の取得に要した金額とされるべき費用及び前払費用を除く。)のうち次に掲げるものとする。

一 開業費(不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を開始するまでの間に開業準備のために特別に支出する費用をいう。)

開業したときには次のような特別な支払いも出てきます。

2:開業前に出る特別な支払い(繰延資産の例示)

①開業前にかかった家賃等の経費

②開業までにかかったチラシなどの広告宣伝費

③開業までにかかった打合せ・接待などの飲食代

④開業までにかかった開業準備の市場調査

⑤開業に必要な許認可取得の費用

開業費という繰延資産を節税に使う方法

開業費は開業前に特別に支出する費用のことをいいます。

経費なのに「繰延資産」という特別な言葉の科目になっています。

この開業費は経費にしていくことができるのです。

ただし、開業費は経費にする方法が決まっているのです。

開業費の経費化のルール:次のうちどちらでもOK

①開業費×(事業をおこなっていた月数)÷60

②任意の償却額(最大全額までOK)

開業した年で全額経費化してもよいので、どのラインで経費化したら得かは税理士さんに相談しておきましょう。

開業した年が赤字になってしまった時の節税方法~損益通算を活用する~

開業した年は開業費以外にも経常的にかかる経費もあります。

収入は徐々に上がっていくにもかかわらず、一定の経費だけは最低限発生してしまいます。

そのため開業年は事業所得が赤字になりやすいのです。

開業した年には勤務時代のお給料があることが多いのです。

「お給料」や「退職金」を開業する前にもらっていることになります。

ここでポイントになってくるのが所得税法の規定で役に立つ「損益通算」という計算方法です。

損益通算は、事業所得の赤字を給与所得・退職所得とぶつけることができる仕組みです。

(確定申告で損益通算を使った場合)

・事業所得の赤字が300万円

・給与所得が200万円

・退職所得が500万円

-300万円(事業所得)+200万円(給与所得)+500万円(退職所得)=400万円

(確定申告をしなかった場合)

・給与所得が200万円

・退職所得が500万円

確定申告をしなかった場合には、給与所得で徴収された源泉所得税も退職所得から徴収された源泉所得税も還付されません。

損益通算をすることで、所得が小さくなるので源泉徴収された税金が精算されて還付される仕組みです。

開業年に「給料」「退職金」がある場合には使える可能性があるのでしっかりと確定申告をしましょう。

損益通算のポイント~諦めたら終わりです~

損益通算のポイントをまとめてみましょう。

①損益通算は確定申告が必要

②損益通算は開業届を出していなくても使える

③損益通算は青色申告でなくてもOK(白色申告OK)

任意継続にするか国民健康保険にするかを再検討

会社を退職する場合に、会社で社会保険に加入している場合には「任意継続」を選択することができます。

任意継続を選択している場合、いつもお給料から天引きされていた社会保険料の2倍を自己負担することで社会保険を続けられます。

任意継続をしない場合には、原則として国民健康保険に加入することになります。

今までの2倍の社会保険料を払ってまで任意継続にするのは、国民健康保険の方が高い場合があるからです。

国民健康保険は前年の所得をベースに計算されます。

国民健康保険は所得が大きくなった時の上がり幅が大きいことと、健康保険証に加入する家族の人数が多いとすぐに高額になってしまうことから任意継続を選択する人が結構多いのです。

任意継続ができる期間は最大2年間ですから、事業が急成長して利益が大きくなった場合には任意継続をしている方がお得というケースがあります。

開業した年は前年の給与所得が大きければ国保は高いので任意継続の方が有利なことがあります。

ただし、開業した年の事業所得が赤字になった場合には任意継続をやめた方が得になる可能性があります。

なぜなら開業した年の所得が小さくなると国民健康保険の保険料が下がるからです。

任意継続は退職時の社会保険料の自己負担と会社負担の両方を支払うことになっているので、退職後の所得に関係なく一定のまま2年間継続されるのです。

実際にどちらが得かは開業年のかくて申告が終わったらすぐに市区町村の国保の担当の人に相談してみましょう。

まとめ

・開業した年の事業が赤字なったからといって確定申告をしないのは損です。

・開業した年の事業が赤字の時には損益通算という方法で節税をしていきましょう。

・開業した年の事業が赤字になった時には任意継続を続けるか国民健康保険に移るかを再検討しましょう。

・開業した年には繰延資産という経費もあるので税理士さんと相談しながら進めていきましょう。

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