税務調査で修正申告をすると決算書は修正されるのか【決算書の貸借対照表や損益計算書が変わるのか】
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税務調査は上期調査・下期調査に大きく分かれます。税務調査が入って税務署との間に修正申告で決着した場合、修正申告書を提出します。修正申告をした場合に会社の決算書はさかのぼって修正をするのでしょうか?税務調査と併せて考えてみましょう。
税務調査で修正申告をすると決算書は修正されるのか【決算書の貸借対照表や損益計算書が変わるのか】
税務調査は7月~12月までの上期と1月から6月の下期の税務調査に大きく分かれます。
税務署職員の異動が7月10日となり上期の税務調査シーズンに突入してきます。
税務調査が入ると全く問題がなければ是認といわれ、とくに修正申告書の作成・提出などはありません。
ただし税務調査が入った場合に修正箇所や指導箇所が一カ所もないということは少ないので修正申告書の提出することがでてきます。
税務調査では通常過去3年分の申告内容をチェックしてきます。
3年間の申告内容について修正が出ることも珍しくないため、修正申告書は3年分作ることになります。
税務調査で修正申告をすることになった場合に会社の決算書にも変更が必要になるのかなど税務調査に関するポイントを見ておきましょう。
個人事業主の修正申告の場合【個人事業主の決算書はさかのぼって修正するのか】
個人事業主の税務調査も通常は3年分おこなわれます。
飲食店など無通知調査がおこなわれるものを除いて、税務署から税務調査の日程調整・税務調査対象税目・税務調査の対象物件(税務調査で用意すべきもの)などを通知されます。
会社側・税理士・税務署の3者で合意に至った税務調査日程で直近の3年分の確定申告内容について税務調査が実施されます。
ここで次のようなことが起こってくると修正申告をするのか税務署側に更正処分をしてもらうのかということになります。
一般的には税務署側の更正処分というケースは少ないので、会社側が自主的に修正申告に応じるというケースが多くなります。
では、実際に個人事業主の税務調査での指摘事項で多いものを見ていきましょう。
(個人事業主の税務調査で指摘が多い事項)
①売上の計上漏れ
②売上の計上時期のずれ
③在庫の計上漏れ
④プライベートの支出を経費処理
⑤家事否認割合を計上していない
個人事業主の場合には、個人としての生活と事業が区分が曖昧なまま進んでいることが多くなります。
そのため経費のうち、一定割合を家事のもとして経費から外すことを家事否認といいます。
家事否認は一般的には理解しにくく、税務署側の見解と個人事業主の間で認識に大きな差が生まれやすい税務独特の考え方です。
税務調査の際に事業用の自動車や事務所家賃・水道光熱費などの家事否認割合分で修正申告が発生するケースも珍しくありません。
【個人事業主の修正申告をした場合の過去の決算書は修正不要】
修正申告をする場合、修正申告の対象年の会計帳簿を修正する必要はありません。
会計ソフトを開いて過去の売上計上漏れや認められなかった経費を経理上修正することはしません。
あくまでも修正申告書の中で課税所得を増加させて税金を計算し直します。
重要なことは修正申告書の中で増加になった利益をもとに税金を計算して、不足していた税金を納税するという点です。
銀行の担当者も修正申告をしても会計帳簿に修正が入らないことを知らない人も多いのです。
修正申告をした場合でも過去の貸借対照表や損益計算書などの決算書に修正が起こらないことを理解しておきましょう。
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株式会社や合同会社などの法人の修正申告の場合【法人の決算書はさかのぼって修正するのか】
株式会社や合同会社などの法人は株主総会などの機関の決議によって決算内容が固まります。
例えば3月決算であれば、5月中に前期の4月~3月までの決算内容を株主総会などで検討します。
この株主総会などで会社の決算内容を承認することで、会社の決算書の内容が確定します。
一般的にはその利益をもとに税務申告内容も盛り込んだ決算書を作成しています。
つまり、決算内容承認と併せて税務申告内容も会社側で承認していることがほとんどです。
会社設立をして法人化した場合には、会社法などの法律の手続きで会社としての決算内容を確定しているということになります。
税務調査でその決算内容に税務的な修正を加えなければならなくなることが、修正申告です。
あくまでも「税務的に修正が必要な部分」を「税務的に修正する」ということです。
会社側の決算内容自体を税務署が覆しているわけではなく、税務申告書で税金の計算の元を修正することが修正申告ということです。
法人の場合も修正申告が起きても、会社の過去の決算書に修正が入ることはありません。
【法人の場合には修正申告の翌年の決算書が歪むことが多い】
個人事業主の修正申告は修正申告対象の年度も修正申告の翌年の損益に影響を与えません。
法人の場合には、修正内容によっては税務調査の対象年度の翌期の決算書に大きな調整を加えることがあります。
税務調査の年度で未入金の売上100万円が発見された場合を例に見ていきましょう。
(調査対象年度の本来の修正項目)
(売掛金)100万円/(売上高)100万円
この修正を過去の決算書に追加することはできないため、修正申告書に次のように加算して税金を追加で納めます。
(修正申告書に記載する項目)
・売上計上漏れ 100万円(加算・留保)
これを本来の申告内容に加算することで、法人税の計算上の所得が増えるので本来の税金が増えてきます。
決算時に申告納税した金額と修正申告書で計算しなおした税金との差額を不足税額として納税します。
【翌期の決算書で過去の計上漏れを経理する】
法人の場合には、売掛金と売上の両方を進行年度で計上していく必要があります。
そのため、その年本来の損益と併せて税務調査の際の修正項目の損益も貸借対照表・損益計算書に反映されてしまいます。
その年売上高は「本来の売上+修正申告で計上した売上計上漏れ」となり、法人税も「その年の法人税+修正申告による追徴法人税」が法人税に記載されたりします。
税務調査があって修正申告が発生した場合には、修正申告を提出した事業年度の決算書は通常の決算書に過去の修正内容も含めた決算書になります。
(税金自体は申告書の税務調整があるので高くならないので安心しましょう)
修正申告で税金を払ったのに、決算書に修正を加えた年の利益が大きくなったら税金がまた増えるのではないかと不安になる経営者も多いのです。
先ほどの売上の追加などを決算書で行った際には、税務申告書の方で売上計上漏れの認容調整というものをします。
修正申告書では売上計上漏れの加算していました。
これを経理上売上を計上したタイミングで法人税の計算上マイナスすることを「売上計上漏れ認容」といいます。
①修正申告書で「売上計上漏れ100万円」(加算・留保)
・決算書での修正はできないので、決算書の利益は増えません。
・税務申告の計算のモトが100万円増えているだけです。
②修正経理した年度(税務調査の後の年度)
・決算書上 (売掛金)100万円/(売上高)100万円
経理上修正申告内容を仕訳として経理します。
このままでは100万円余計に利益がでてしまうので、税務申告書で税金の元を100万円減らします。
・税務申告書 「売上計上漏れ認容100万円」(減算・留保)
これで税務申告上は税金の元が会社の利益よりも100万円少なくなりました。
つまり、修正申告内容を含まない利益で税金を払うのと同じことになります。
修正申告をしたときの銀行側への説明【銀行融資を受けている場合】
個人事業主でも会社設立をして株式会社や合同会社を経営している場合でも、銀行融資を受けている会社は多いものです。
銀行融資を受けている場合、確定申告や法人決算が終了した後に銀行に対して確定申告書の控えや決算書の提出を求められます。
ここで修正申告をしていることがわかると、銀行の担当者から「決算書が直っていない」といわれてしまうことがあります。
銀行の担当者は修正申告で過年度の売上漏れや経費の過大計上などがあった場合、過去の決算書も修正されると思ってしまっているのです。
先ほどから個人事業主の場合も法人の場合も過去の決算書に修正が入らないことを説明させていただきました。
この内容を銀行の担当者にも説明しましょう。
あくまでも修正項目は修正申告書の所得計算のところで加算して不足税額を納めているのですから。
まとめ
税理士さんがついている場合でも税務調査があると修正申告になるケースは珍しくありません。
税務調査で修正項目が出る場合には、修正申告をするか税務署側が更正処分をすることになります。
一般的には会社側が修正申告をすることが多くなります。
修正申告をした場合には過去の決算書は修正が起こらないという点を理解しておきましょう。
修正申告書で過去の税金を計算しなおして不足税額を払っていきます。
法人の場合には税務調査の後の決算書を作るときに修正項目が多く入るので注意が必要です。
税務調査の連絡が入った場合には税理士さんに立ち会ってもらい、税務調査とそのあとの経理などもお願いした方が安全です。
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