交際費は800万円を超えると使えない?【意外と知らない交際費の上限の取扱い】
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交際費を使いたいけども定額控除限度額の800万円を超えると会社の経費が使えないと考えている経営者も多いのです。交際費は上手に使うと節税にも効果が高いものです。今回は交際は定額控除限度額を超えて使うとどうなってしまうのかを見ていきましょう。
交際費は800万円を超えると使えない?【意外と知らない交際費の上限の取扱い】
交際費はもともとは経費だということをご存知でしょうか?
税理士さんから交際費は使っても経費になるには制限があると聞いている経営者も多いと思います。
経営者は経費にならないものであれば会社のお金を使ってはいけないと感じてしまいます。
ただしく交際費課税についての背景を含めてしっかりと税理士さんが説明しておけばよいのですが結論だけを伝えてしまうのでこのような勘違いを生んでしまいます。
会計上の経費と税務上の経費(損金)は少しずれています。
あくまでも会社の会計処理が優先されて、税金計算上経費として認められないものに対して法人税の申告書作成段階で調整をしていきます。
これを別表調整といいます。
法人税の計算は会社の決算書の最終利益から法人税法上経費にならないものを足し戻し、法人税法上収益にしなくてもよいものを差引いて法人税をかけるモト(課税標準)を作っていきます。
交際費の話は法人税の計算上経費にならないものの部分です。
会社の決算上経費で落としていけないという話ではありません。
会社は使った交際費はしっかりと経費として経理すべきなのです。
ただ法人税法上損金として認められない部分を申告書の作成時に加算すればよいだけです。
シンプルな言い方でいうと「税金さえ払えば使ってもよいもの」です。
大企業と中小企業では交際費課税の計算方法は異なるので注意【中小の方が優遇】
「交際費は800万円まで使える」という話は中小企業向けの政策です。
大企業はもっと使える体力がありそうだから、もっと使えるはずと思ってしまうかもしれません。
実際は大企業のほうが交際費の使い方としては厳しい税務になっています。
(1)大企業(資本金1億円超)の法人の交際費課税
大企業は交際費を使っても法人税法上経費で落とすことができませんでした。
交際費に関する税制改正で大企業でも一定の交際費について法人税法上経費(損金)で落とすことが認められるようになりました。
「交際費のうち接待飲食費の額×50%相当額以下」を法人税法上の損金算入
(接待飲食費は書類保存要件があるので注意)
接待飲食費に該当するための要件
①接待飲食費は交際費に該当する飲食その他これに類する行為のために要する費用であること。
②次の書類保存要件を満たしたもの
・飲食をおこなった年月日
・飲食に参加した得意先・仕入れ先その他事業に関係のある者等の「氏名・名称とその関係」
・飲食店等の名称とその所在地
・その他飲食費であることを明らかにするために必要な書類
※もっぱら社員や役員・親族だけの飲食は対象外になるので注意しましょう。
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(2)中小企業(資本金1億円以下)の法人の交際費課税
次のうち有利な方を選択できる。
一般的には①の方を選択する会社が多くなります。
①定額控除限度額(年間800万円)以下の交際費を全額損金算入できる
②大企業と同じように、「交際費のうち接待飲食費の額×50%相当額以下」を法人税法上の損金算入できる。
(大企業の交際は接待飲食費の額の50%しか損金に算入できない)
中小法人は大企業と同じ計算方法か交際費のうち定額控除限度額(800万円)に達するまでの全額のどちらかが法人税法上損金に算入することができます。
大企業は経理体制もしっかりしていて、専門の事務員さんもいるので「接待飲食費」について管理できると思います。
ところが中小法人は経理体制に人材をさくことが難しいので「接待飲食費」として書類を用意することが難しいかもしれません。
(中小法人が一般的に選択するのは定額控除限度額以下(800万円)までを全額損金算入)
中小法人は定額控除限度額まで交際費に該当するものを全額損金に算入することができます。
大法人であればお中元やお歳暮・ゴルフなど一般的に交際費として思いつくものを損金に入れられません。
あくまでも書類保存要件を満たした接待飲食費のうち50%だけです。
中小法人もこれを選択できますが、選択しないで「交際費のうち800万円までを全額損金にする」を選択する会社がほとんどです。
定額控除限度額(年間800万円)までは書類保存要件を満たしていない飲食代もゴルフ・お中元・お歳暮も交際費として損金算入できるからです。
ただ、飲食代の領収書の後ろに「飲食に参加した人の名前を書いておく」ということくらいはしておかないと税務調査の際に指導を受けることが多いので注意しましょう。
定額控除限度額の変遷【交際費の枠は大きくなってきた】
資本金が1億円以下の中小法人に対しては定額控除限度額というものが設けられていました。
税務上は交際費は経費にならない(損金不算入)として作られてきました。
ただし、中小法人に関しては定額控除限度額に対して一定の部分90%まで法人税法上も経費で認める措置が取られてきていました。
平成25年度の税制改正で定額控除限度額の100%まで法人税法上も経費で落としてよいという改正も行われています。
中小法人の交際費については、損金算入となる枠が広がっていきました。
交際費課税についての時系列発議の通りです。
①平成15年度税制改正
・定額控除限度額400万円
・損金算入額 定額控除限度額400万円×90%
②平成21年度税制改正
・定額控除限度額600万円
・損金算入額 定額控除限度額600万円×90%
③平成25年度税制改正
・定額控除限度額 800万円
・損金算入額 定額控除限度額800万円×100%
定額控除限度額(800万円)を超えたらどうしたらよいのか?
接待が多くて定額控除限度額の800万を超えたらどうしたらよいのかを見ていきましょう。
経営者の中には「交際費の枠=定額控除限度額」と考えて、これを絶対に超えてはいけないと思っている方も多いのです。
定額控除限度額を超えても全く問題ありません。
会社が経営に必要なお金をどう使おうが関係ないのです。
犯罪になるようなお金の使い方は当然ダメですが、会社の経営判断で何にお金をつかうかを税務署が文句を言うことはおかしいのです。
今後の売上増のために必要であれば交際費は使うべきです。
取引関係の強化や情報収集に生かせるのであれば交際費の800万円の枠を気にして萎縮する必要はありません。
なぜなら、交際費はもともと会社の経費だからです。
税務の政策的な判断で一部と税務上の経費から外しているのです。
交際費の処理を間違うと節税どころか損をするので注しましょう。
①交際費を定額控除限度額に収めるために経理をしなかった場合
実際には飲食代など交際費を使っているのに会社で交際費として経理しなかった場合には、実際の会社のお金が不足しています。
仮に100万円の交際費を使っているのに経理処理だけをしなかった場合は、会社の現金が帳簿上多くなっています。
税務調査が入った場合、実際の現金と帳簿上の現金のずれの分について役員賞与の損金不算入として課税処理されるリスクがあります。
大抵の場合、その交際費の領収書自体を経費にならないものとして保存していないからです。
こうなると、法人税法上も経費にならない100万円は社長の所得税・住民税・社会保険の対象になる賞与になってしまいます。
いわゆる「往復びんた」といわれる最悪なケースに陥ります。
②交際費を社長の自腹で払った場合
800万円の枠を超えるなら社長が自腹で払う会社もあります。
社長の所得税・住民税・社会保険料の負担割合は通常高いです。
法人税の実効税率は財務省のHPによると29.74%となっています。
社会保険の負担率を東京の場合で見てみます。
・健康保険料(会社負担+自己負担):11.56%
※介護保険対象の場合で計算
・厚生年金の保険料(会社負担+自己負担):18.182%
・社会保険関係の全体負担:11.56%+18.182%=29.742%
この社会保険料の負担に加えて、住民税(10%)と所得税(5%~45%)の負担を加えるととんでもない負担をしたで自腹で払ったということになります。
社長が自腹で会社の経費を負担するということは、「法人が負担するよりも高額な税負担したあとのお金で会社におごる」ということに他なりません。
定額控除限度額の800万を超えて、法人税法上の経費にならなくてもとられる税金は法人税の実効税率の29.74%ですみます。
800万円を超えるからと経営者が自腹で払うのではなく、しっかりと会社の経費で落として納税だけはしっかりとするようにしましょう。
まとめ
接待で交際費がかさんだ場合でも、きちんと会社で経理処理をしなければ税務調査で損をするので注意しましょう。
大法人と中小法人では交際費の課税の仕方が異なることがあるので注意しましょう。
交際費が大きくなると税務調査を誘発したり、交際費を巡る税務調査トラブルになることがあるので税理士さんに相談しておきましょう。
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