開業前の車を個人事業で使ったら経費にできる?【サラリーマン時代のものも経費になる】
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個人事業を開業した場合に、サラリーマン時代に購入していた自動車やパソコンなどを仕事で使うことがよくあります。これ実は経費になる場合があることをご存知でしょうか?それを知らないまま確定申告で損をしている人が非常に多いのです。
開業前の車を個人事業で使ったら経費にできる?【サラリーマン時代のものも経費になる】
個人事業を開業する場合には、少しでも節約しながら事業を開始したいと考えます。
できれば昔買って使えそうなものは何でも使っていくほうが堅実です。
昔は助成金がもらえるからと銀行融資を受けてなんでも購入している人もいましたが、倒産してしまうリスクが高くなるだけでした。
堅実に使えるものを大切にしながら、個人事業で利益を出していきたいところです。
個人事業主を開業する場合に、かなりの確率で必要になるものが「自動車」です。
飲食店であれば食材仕入れのため、建設業であれば現場への移動や資材運搬のためにも使います。
動物病院であれば往診や事務用品の購入のための移動に使うこともあります。
理美容室、設計事務所、行政書士、社会保険労務士、弁護士、司法書士でも事務用品の購入や打合せなどで自動車は必需品です。
特に地方都市の場合には、日常生活自体に自動車が必須となっています。
開業して仕事をしていくうえで開業前から持っている自動車を個人事業で使うという場面は多いはずです。
この開業前にプライベートで購入していたものを事業で使った場合「経費になるのか」が気になるところです。
税理士さんをつけていない人の確定申告では「ほとんどの人は経費にしていない」と思います。
皆が経費にしていないのであればそれが正しいと思うかもしれませんが、実は違うんです。
開業前にプライベートで購入していたものでも、個人事業を開業した後に経費で落とせるのです。
知らないとだけが損をしてしまう規定がこっそりあるのです。
これらも規定を知っていれば経費にできる可能性があります。
「開業したらローンが組めなくなるかも」で退職前に車買替えや自宅購入も
会社を退職して起業すると個人の信用力が落ちます。
クレジットカードを作ることができなかったり、住宅ローンが組めないということも発生します。
そのため「開業したらローンが組めなくなるから新車を購入しておこう」と考えたり「開業して住宅ローンが組めなくなる前に自宅を購入しておこう」というケースもあります。
実際に退職して独立開業すると銀行の審査が厳しくなります。
住宅ローンなどは開業してから3年程度は新しいローンを組むことが難しくなります。
開業時に手持ち資金がある場合に活用できるローンは「創業融資」です。
手持ちの数百万円は事業のための運転資金や設備資金のローンを受けるための創業融資を受ける際の頭金としての活用は可能です。
しかし、住宅ローンを起こすためにはサラリーマンよりも圧倒的に厳しい審査を受けることになります。
年収400万円のサラリーマンの人よりも個人事業主の所得が高くても審査は厳しいのです。
より多くの頭金が必要だったり、もっと多くの年収がなければ希望通りの物件を購入することはできません。
このような話は開業前に耳にすることが多いので、退職前に自宅を購入している場合や新車に買替をしている方も多いのです。
住宅の購入や新車の購入自体は悪い話ではないのですが、これが開業した後にどのように扱えばよいかを知らずに損をしてしまうという問題が起きてしまうのです。
確定申告で知らないと損をする理由【所得税の規定が原因】
開業前に購入した自宅や自動車・パソコンなどを起業後事業に使っている人が損をしてしまうのは、所得税の規定に原因があります。
知らずに損をしてしまう理由は次の通りです。
1:減価償却費は強制的に計上される
自宅や自動車・10万円を超えるパソコンなどは減価償却資産と呼ばれます。
減価償却とは購入したときに全額が経費になるものではなく、税務的に決まった年数で少しずつ経費化されることをいいます。
木造住宅であれば22年・軽自動車であれば4年・普通自動車であれば6年・パソコンは4年といった具合です。
開業前に購入して、事業に使い始めたものはこの減価償却資産に該当する可能性があります。
この減価償却費は所得税法上は赤字でも黒字でも決まった金額を経費で計上しなければならないと決まっています。
つまり、確定申告時に減価償却で経費で落とせることを知らないでいると「経費が少ないまま確定申告書を提出してしまう」ということが起きてしまいます。
翌年に気が付いても、前年分をまとめて経費で落とすということはできません。
2:赤字であれば「確定申告をしなくてもよい」で損が膨らむ
開業して「最初の年は赤字」という個人事業主の方は多いものです。
赤字だったら「確定申告をしなくてもいいや」と思っている方もおおいはず。
確定申告時期になると税務署に電話がつながらないし、税理士さんを頼むにもお金がかかるから面倒な確定申告はしたくないものです。
ところが「青色申告」を申請した人は赤字でも確定申告をすべきだったのです。
確定申告書を提出期限内(3月15日まで)に提出することで、事業の計算上生じた損失を3年間繰り越すことができたのです。
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開業前に購入したものを経費で落とす方法【開業前の購入資産の減価償却費の計算方法とは】
実際に開業前に購入した自動車などの減価償却費の計算方法を見ておきましょう。
1:対象となる固定資産の耐用年数を調べる
国税庁HPに耐用年数について記載されているので調べてみましょう。
①自動車
・軽自動車(総排気量0.66リットル以下):4年
・貨物自動車:5年
・その他自動車(普通車)6年
②建物
・木造・合成樹脂造のもの(店舗用・住宅用):22年
・木骨モルタル造のもの(店舗用・住宅用):20年
③事務機器
・パソコン(サーバー用のものを除く):4年
この後は開業前に新車300万円を購入していた場合を例に考えてみましょう。
普通自動車の法定耐用年数:6年
購入日時(開業前):平成27年4月1日
開業(事業供用開始):平成29年4月1日
2:購入日時から使用開始日までの経過年数を調べる(非業務用期間を計算する)
例)平成27年4月1日購入・開業日29年4月1日⇒2年経過※注1
※1:事業に使っていない期間(非業務用期間)が6か月以上の場合は1年繰上げ、6か月未満は1年未満切り捨てで年数を計算します。
3:減価の額を計算する
プライベートで使っていた時代に価値の落ちていた部分を計算します。
減価償却費として経費で落としていくときに、プライベートで使用していた部分まで経費で落としすぎないように計算しておきます。
減価の額=購入したときの金額(取得価額)×(耐用年数×1.5の定額法償却率)×上記2の経過年数
①減価の額を計算するときの償却率は要注意
本来のその資産(この場合は自動車)の法定耐用年数(この場合6年)をもとに計算していきます。
6年(法定耐用年数)×1.5=9.0年(1年未満の端数切捨て)
法定耐用年数9年の償却率=0.112
・1年あたりの減価の額:300万円×0.112=33万6千円
・経過年数分の減価の額:33万6千円×2年=67万2千円
②事業供用時の帳簿価額(取得価額から減価の額を引いた金額)
減価償却を将来にわたってできる残りはいくらかを調べておきます。
・取得価額-減価の額=帳簿価額
300万円-67万2千円=232万8千円(事業供用時の帳簿価額)
これを限度として減価償却を開始していくことになります。
③開業後の減価償却費の計算方法
定額法と定率法で計算方法が異なるので注意しましょう。
税務署に「定率法」の届出をしていない場合は定額法になります。
一般的には定額法で計算することが多いです。
ここからは再び新品の法定耐用年数をもとに実際に経費で落とす減価償却費を計算していきます。
※減価償却の期間:4月(開業)~12月までの9か月分
・(定額法の場合)
300万円×0.167×9か月/12か月=375,750円
0.167は耐用年数6年の定額法償却率
・(定率法の場合)
(300万円-67万2千円)×0.417×9か月/12か月=728,082円
定率法は直前帳簿価額×償却率になるので、取得価額から減価の額を控除した事業供用前の簿価をベースに減価償却をします。
0.417は耐用年数6年の定率法償却率
まとめ
サラリーマンから起業する場合、開業前から持っている車やパソコンなどを事業に使うことがあります。
プライベートで使っていたものでも、開業後事業に使うことで経費で落とせる部分があることはあまり知られていません。
会社設立して法人になってから税理士さんを頼もうと思っている方も多いので、知らずに損をしていても気が付かないのです。
個人事業を開業する場合には、サラリーマン時代に購入したものでも経費で落とすことができるということを知っておきましょう。
厳密には難しい計算などもでてくるので税理士さんに相談しながら開業した方がデメリットが小さくなります。
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