【年末調整】「扶養、入れられますか?」経理が一番聞かれる質問、完全解決マニュアル|103万円・130万円の壁とは
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「すみません、ちょっと教えてください。妻がパートを始めたのですが、扶養に入れたままで大丈夫でしょうか…?」
10月から11月にかけて、経理や総務の担当者のもとへ、従業員から最も多く寄せられる質問。それが、この**「扶養控除」**に関するものです。特に、配偶者のパート収入にまつわる「103万円の壁」「130万円の壁」といった言葉は、多くの人を混乱させています。
従業員にとっては、手取り額に直結する一大事。そして、担当者にとっては、毎年繰り返されるこの質問に、正確かつ分かりやすく答えるという重責があります。
この記事一枚で、社内の疑問がすべて解決します
この記事では、年末調整における「扶養控除」の基本から、ややこしい「年収の壁」の本当の意味、そして申告書の正しい書き方までを、誰が読んでも理解できるよう、完全マニュアルとして徹底解説します。
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大原則:「税金の扶養」と「社会保険の扶養」は別物!
まず、多くの人が混乱する最大の原因は、「扶養」という言葉が2つの全く異なる制度で使われていることにあります。この2つを区別することから始めましょう。
1. 税法上の扶養
目的:あなたの所得税や住民税を安くするための制度。
キーワード:扶養控除、配偶者控除
関係する壁:「103万円の壁」「150万円の壁」
2. 社会保険上の扶養
目的:配偶者などが、自分で健康保険料や年金を払わなくてもよくなる制度。
キーワード:被扶養者
関係する壁:「106万円の壁」「130万円の壁」
年末調整で私たちが扱うのは、主に「1. 税法上の扶養」です。しかし、家計全体で考えると「2. 社会保険上の扶養」も極めて重要なので、セットで理解しておきましょう。
最重要:ややこしい「年収の壁」を完全理解する
配偶者のパート年収がいくらを超えると、何が起きるのか。一覧表で見ていきましょう。
| 年収の壁 | 何が起きるか? | 影響 |
|---|---|---|
| 103万円 | パートをしている配偶者自身に所得税がかかり始める。夫(あなた)は「配偶者控除」が使えなくなる(→配偶者特別控除へ)。 | 税金上の影響 |
| 106万円 | 一定規模の企業で働いている場合、配偶者が自身の会社の社会保険に加入しなければならなくなる。 | 社会保険上の影響 |
| 130万円 | 夫(あなた)の社会保険の扶養から外れ、配偶者自身で国民健康保険・国民年金に加入する必要が出てくる。 | 社会保険上の影響(手取りが大きく減る可能性) |
| 150万円 | 夫(あなた)が使える「配偶者特別控除」の金額が、満額(38万円)から徐々に減り始める。 | 税金上の影響 |
【ポイント】
家計へのインパクトが最も大きいのは、社会保険料の負担が発生する**「130万円の壁」**です。これを意識して働き方を調整する方が非常に多いです。
【実践】申告書の書き方
扶養控除に関する申告書は、会社から配布される**「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」**です。配偶者や16歳以上の子供、同居の親などを扶養に入れる場合に記入します。
- 「控除対象配偶者」の欄:配偶者の年収が103万円以下の場合、ここに氏名・マイナンバー・生年月日、そして「所得の見積額」を記入します。
- 「控除対象扶養親族」の欄:16歳以上の子供や、同居の親などで、年間の所得が48万円以下(給与収入のみなら103万円以下)の場合に記入します。
配偶者の年収が103万円を超え、150万円以下などの場合は、先日解説した「給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書…」の方で手続きをします。
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この記事のまとめ
- ✅ 「扶養」には、税金の話と社会保険の話の2種類があることを区別する。
- ✅ 年末調整で関係するのは、主に「税法上の扶養」(103万円の壁など)。
- ✅ 家計に最も影響が大きいのは、社会保険の扶養から外れる「130万円の壁」。
- ✅ 申告書を書く際は、扶養に入れる家族の年間の所得(収入)の見積額を事前に確認しておく。
経理担当者の皆様、その丁寧な説明が、社員の安心を創ります
「扶養」の問題は、税金と社会保険が複雑に絡み合い、専門家でも説明に気を使う、非常にデリケートなテーマです。従業員からの素朴な疑問に対し、毎年、根気強く、そして正確に説明されている経理・総務担当者の皆様に、心からの敬意を表します。
あなたのその丁寧な対応が、社員一人ひとりの家計の不安を取り除き、安心して働ける職場環境を創っているのです。もしよろしければ、社員の皆様への説明資料として、この記事をご活用ください。
そして、経営者の皆様。従業員の働き方が多様化する中で、こうした税務・労務の知識は、社員の満足度を高め、離職を防ぐための重要な経営ツールとなります。自社の就業規則や給与体系が、最新の法律に適合しているか不安な場合は、ぜひ専門家を頼ってください。「経営コンサル型社会保険労務士」は、あなたの会社の「人」に関する悩みを、共に解決してくれる最高のパートナーです。
働くすべての人が、正しい知識で、安心して年末を迎えられますように。私たちは、その一助となる情報を、これからも発信し続けます。
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実際の税務判断や社会保険の手続きにあっては、必ず税理士や社会保険労務士、所轄の税務署、年金事務所等にご確認の上、ご自身の責任において行っていただきますようお願い申し上げます。



