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建設業の社会保険加入義務の強化が平成29年度から行われています。社会保険の加入は従業員の定着と従業員の老後の生活の安定なども含めて必要な制度となってきました。体力のない建設業の会社にとっては社会保険負担がきついために従業員さんを外注化している会社もあります。今回は社会保険対策の外注化について考えてみましょう。
建設業は社会保険対策の外注化で思わぬトラブルに注意【税務調査で痛い指摘も】
建設業に関する社会保険加入強化は国土交通省から建設会社への周知がすでにおこなわれています。
「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」というものが平成24年11月に施行されており、その中で平成29年度を目標として建設業の社会保険加入促進がおこなわれてきました。
この「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」では「適切な保険に未加入の作業員は、特段の理由がない限り現場入場を認めない」というものです。
建設業の会社にとって現場に入れないということはどれほど恐ろしいことでしょうか。
死活問題になってきたというのが実情です。
ここでのポイントは法令上加入義務のある保険に加入することが要件とされている点です。
つまり社会保険に加入義務のある建設業というと会社設立をして株式会社や合同会社を作った建設業はすべて対象となるということです。
法人で建設業を行っている会社は社会保険に加入していない場合には、元請けから現場に入るなといわれてしまいます。
社会保険の負担が大変な会社にとって社会保険に入らなければ売上がゼロになるという状況になってしまいました。
そこで体力のない建設業の会社は従業員さんを外注化することで対応をしているケースも見受けられます。
形式的に外注化した場合には、税務調査でも大きなデメリットがあるので注意しましょう。
従業員が外注化される理由とは【会社と従業員の思惑が合致するケースも】
社会保険負担が問題化される前は会社設立をして株式会社や合同会社の建設業も社会保険に未加入のまま仕事をしているケースも多くありました。
社長だけではなく従業員さんも社会保険に加入していないので、皆さんの手取りは大きかったということになります。
自分たちで建設国保や国民健康保険に加入して、国民年金を払っていたのです。
社会保険料が天引きされないので手取りが大きいのです。
会社としても給与をもらう側としても負担額が小さいので、社会保険に加入していなくても「お互い様」という風潮もあったのかもしれません。
建設業の社会保険加入強化の流れが強くなったことにより、会社側も負担を大きくしないように考えます。
従業員さんの側でも手取りがすくならないようにしたいと考えます。
そこで行われやすいことが従業員さんを外注として働いてもらうことでした。
外注の場合にはお給料から天引きする雇用保険・社会保険・所得税・住民税などはありません。
働いた分をすべて外注費として支払うことになります。
従業員さんも外注になることで手取りが増えます。
会社側は従業員であれば負担しなければならない、雇用保険・社会保険料が発生しません。
さらに会社側の消費税が安くなるケースもあるのです。
会社側が消費税の本則課税の場合、お給料であれば消費税は安くなりません。
ところが外注費であれば外注費に含まれている消費税相当額の分、消費税が安くなるのです。
会社側としては従業員であれば負担が増えたはずなのに、外注化することで負担が発生しないどころか消費税まで安くなるということになるのです。
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形式的な外注化をしていた場合には税務上のデメリットが
従業員さんのお給料を単純に外注費として支払えば「負担が減るどころか、消費税まで節約できる」と考えてしまった建設業の方も多いかもしれません。
しかし、形式だけを外注費として処理していても税務署は甘くありません。
税務調査でしっかりと調査されて本当に外注なのか給与なのかを細かくチェックされます。
もしも税務調査で外注費が実質的に給与と認定されてしまうと、場合によっては重加算税の対象といわれるリスクもあります。
(形式的な外注の例)
・外注として支払っているが従業員時代と同じタイムカードなどで管理をしていた
・外注として支払っているが従業員と同じ扱いで仕事をさせていた
・外注として支払っているが必要な道具などをすべて支給していた
・本人がお給料だと思っていた
一番最後の本人がお給料だと思っていたケースは多いかもしれません。
しっかりと従業員から外注になるにあたって何が変わるのかを説明していないと大きなトラブルになります。
きちんと外注になっているのであれば問題は少ない
形式的に外注としていることが問題視されているのであって、外注化していること自体が問題ではないので注意しましょう。
会社側が外注費として経理するということは、その元従業員は個人事業主ということになります。
個人事業主として建設業を営んでいるということをしっかり守らなければならいということです。
実質的に外注として成立しているケースというのは次のケースです。
(外注として認められやすいケース)
①他人の代替が可能
従業員の場合、自分が働いていなければ給料をもらう権利がありません。
ある日突然別な人が同じ時間働いてくれたからと働いていない従業員に対して給与支給はあり得ないのです。
ところが外注の場合には、その現場を作業する人間は自分でなくてもよいのです。
現場を納めることが対価の源泉ですから、別な人材での代替性を有することになります。
②時間的拘束性がない
従業員と全く同じ時間をしっかりと拘束されている場合には、請負業務ではなく時間的な拘束を受けていると考えられます。
現場の進行状況などによって自分で現場を管理していることが重要になります。
③指揮・監督を受けない
従業員の時のように上司と部下の関係のような指揮命令を受けていたのでは、給与ではないかと考えられてしまいます。
建設現場で事故がないようにや工程についての指揮監督は仕方がないのですが、経験の浅い社員を独立させて一から十までの指揮命令をしている場合には難しいといえます。
④地震など不可抗力で現場を引渡せないときに報酬がもらえない
「働いた時間分はもらえる」というのは給与です。
原則として成果物が完成しない限りお金をもらうことができないのが外注です。
⑤主要な材料・用具などを自分で調達
外注として個人事業主で仕事を行うには、その仕事に必要なものくらいは自分で用意することが必要です。
従業員のように必要なものはすべて会社が用意してくれたでは、外注として成立しません。
まとめ
建設業の社会保険問題で形式的に外注にすることはリスクがあるのでやめましょう。
外注化したことによって消費税の脱税と指摘されると非常に資金繰りが悪くなります。
従業員を外注化する場合には建設業に強い税理士さんに相談しながら線引きを行ってもらいましょう。
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