別会社を作ると節税になるというのはどういうことか?【別法人と税務の関係】
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別法人を作ることで節税につながるという話を聞いたことはありますか?別会社を作ることで節税になる場合とならない場合があるので注意が必要です。
別会社を作ると節税になるというのはどういうことか?【別法人と税務の関係】
個人事業主が法人を作ることを「法人成り」といいますが、これと別会社を作るというのは少し違う話になります。
現在法人を経営しているが、もう一社会社を作ることなどを一般的には「別会社を作る」や「別法人を作る」といいます。
個人事業主の方や法人の代表者をしている方は「別会社を作ると節税になる」という話を聞いたことがありますか?
個人事業や法人を設立してを開業して様々な人に会う機会が増えていくと様々な情報が入ってきます。
そのなかでよく出てくる話題が「別会社を作るべきか?」です。
その答えや根拠は人それぞれ違うことを話していたりするので混乱してしまいます。
結論から言うと正しい答えはないかもしれません。
その人の置かれた状況や考え方によっていくようにも変化するものです。
ここでは、一般的に別会社や別法人を作ると節税になるといわれている理由を見ていきましょう。
別会社を作るリスク【別法人を作るリスクは常にある】
別法人を作るリスクをしっかりと理解した上で話をすすめていきましょう。
別会社を作るリスクは次の3つあります。
①租税回避として税務署とのトラブルの種になる可能性がある
②会社維持コストが増える
③機動的に経営をすることが難しくなる
①租税回避として税務署とのトラブルの種になる可能性がある
経営者にとって一番怖いものは税務署かもしれません。
税務署からにらまれると経営的に大きなダメージになります。
別会社や別法人を作ることで税務署側の注意度合いは増えます。
なぜなら、複数の会社を作ることによって租税回避を行いやすくなるためです。
なぜ租税回避が起こりやすくなるかというと次のようなことが起きる可能性が出るからです。
ケース1:A社とB社の事業年度をずらすことでA社の利益をB社に移転することが起こりやすくなります。
A社が利益が出そうになったことでB社に対して外注費などを支払って経費を作るなどです
ケース2:A社とB社の取引単価を著しく他社よりも有利に行う
グループ法人経営はスケールメリットを作り出すことが目的であったりしますが、他社との取引ではあり得ない程度まで取引条件を変更しているケースです。
ケース3:元々1社だったものを合理的な理由なく複数社に分けている
税金を低く抑えるために、1社を複数の会社に分けた場合「租税回避の可能性あり」とみられやすくなります。
元々1社を別会社に分ける場合には、合理性と別会社としてしっかりと自立させないと税務上トラブルになりやすいので注意しましょう。
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②会社維持コストが増える
別会社を作ることで様々な経費が会社の数だけ増えていきます。
単純に2社だと2倍ということにならないこともありますが、会社が増えれば増えるほど事務コストだけは増えていきます。
別会社が法人の場合には、社会保険料の負担が多くなり人件費や人の管理のコストが多くなります。
③機動的に経営をすることが難しくなる
別会社や別法人を作ることで管理しなければならない会社が増えることになります。
別会社があるということは、会社の数だけ決算が必要になります。
1社の決算だけでも手間と時間がかかるのに、複数社になることで決算の回数が増え、事務負担が増えます。
これはお金と手間だけのことではなく、グループ全体のことを考えて経営をしていかなければなりません。
会社には従業員もいることになるので1社の時以上にしがらみが増えてしまいます。
好況の時は良いのですが、業績が下降局面の時こそ別会社の人員整理や銀行融資返済計画など考えることが多くなります。
1社だけであれば即断即決できたものが別会社があることによって時間がかかることも出てきます。
別会社を作ると節税になるというのは本当か?【法人とは限らない】
別会社を作ると節税になるというのは、本当です。
別会社を作ることで節税以上の効果を発揮することも珍しくありません。
別会社を作ることで得られる節税メリットは次の通りです。
①別会社を設立後、消費税が2期免税になる(設立方法による)
②別会社ができることで消費税の簡易課税を取ることができることも可能
③別会社を作ることで低税率を適用できることも可能
④別会社を作ることで退職金を複数買い取ることも可能
⑤別会社で役員報酬を取ることができる
①別会社を設立後、消費税が2期免税になる(設立方法による)
別会社が法人の場合には、設立後2期消費税の免税になります。
ただし、資本金が1,000万円以上の場合や設立後6か月の人件費の支払いが1,000万円を超えた場合には免税期間を2期取ることができないことがあるので注意しましょう。
別会社を作ることの副産物として出てくるのが、この消費税の免税期間です。
②別会社ができることで消費税の簡易課税を取ることができることも可能
別会社を作ることによって取引先が元々の会社と別会社に社に分かれることがあります。
例えば次のような事例です。
(別会社設立前)
A社が公共事業(売上4,000万円)と民間工事(売上3,000万円)の両方を受注(全体売上7,000万円)
消費税対象の売上が7,000万円>5,000万円のため消費税は強制本則課税のみ
(別会社設立後)
A社:公共事業(売上高4,000万円)≦5,000万円
B社:民間工事(売上高3,000万円)≦5,000万円
両者とも消費税対象売上(課税売上高)が5,000万円以下になるので簡易課税制度を選択することができます。
人件費率の高い業種の場合、簡易課税制度を取るほうが消費税の節税になることがあります。
課税売上高が5,000万円を超えてしまうと強制的に本則課税になってしまうので検討の余地もありません。
③別会社を作ることで低税率を適用できることも可能
先ほどのA社とB社の場合、公共事業(500万円の利益)と民間事業(300万円の利益)がでていれば本来1,000万円の利益のある会社になります。
中小法人の場合、法人税等の税率は課税所得が400万円・800万円で税率が異なっています。
別会社を作ることによってB社(民間事業)の利益は300万円になることでB社は一番低い税率による納税になります。
A社(公共事業)も500万円の利益になるのでもともとよりも低い軽減税率適用会社になります。
④別会社を作ることで退職金を複数買い取ることも可能
1社だけで経営をしている場合、基本的にはその会社から1回しか退職金をもらえません。
別会社でも役員や使用人として勤務している場合、会社ごとに退職金をもらうことが可能です。
しっかりとそれぞれの会社で事業を行い、利益を出すことで退職金を複数回もらうチャンスを作ることができます。
⑤別会社で役員報酬を取ることができる
別会社を作ることで新しい会社の役員に就任することで役員報酬を取ることもできます。
別会社の決算期がずれている場合には、役員報酬改定時期も別々になるので所得税のバランスを考えた役員報酬設定も可能になります。
ただし、この場合本業以外の会社から高額な役員報酬を取りすぎていると税務上トラブルになるので注意しましょう。
【別会社は個人事業でも可能】
別会社は法人だけではありません。
個人事業を別会社として起業することも可能です。
ただし、個人事業を別会社化する場合には次の点に注意しましょう。
①事業と認められないリスクがある
②親族への給与支払いは原則経費にならない
③自分や親族への退職金は経費にならない
①事業と認められないリスクがある
税務上のトラブルで一番リスクがあるのは事業として認められないケースです。
事業所得の場合には青色申告をすることで65万円または10万円の特別控除が認めれらます。
ところが事業所得と認められなければ雑所得というものになります。
この場合、帳簿をつけていても青色申告は適用がありません。
本業が別にあると判断されると、事業所得と認めらないこと判断されるリスクがあるので税理士さんと相談しながら検討していきましょう。
②生計一親族への給与支払いは原則経費にならない
個人事業の場合生計一親族への給与は、原則として経費になりません。
青色事業専従者給与に関する届出書を提出している場合のみ、支払ったお給料を経費で落とせます。
個人事業を雑所得として認定されてしまった場合には、支払った給与は全額否認されます。
③自分や親族への退職金は経費にならない
所得税法では自分や生計一親族に支払った退職金は経費で落とせません。
そのため退職金を使った節税はできないので注意しましょう。
個人事業を法人化する場合に、個人事業の一部を法人化するという方法もあります。
まとめ
別会社や別法人を作ることで節税をすることは可能です。
ただし、別会社を作ることによって租税回避として税務上のトラブルリスクも増えるので事前対策が重要です。
別会社を作るときにはそれぞれの会社がしっかりと経営上プラスになるように構想を作っておきましょう。
税金を減らすことだけを目的に別会社を作ったのでは本末転倒になってしまいます。
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