事業年度を変えることで節税ができる【法人特有の節税方法】

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会社設立で法人を作ることのメリットの一つに「事業年度」というものがあります。個人事業主の場合には1月1日から12月31日までの期間が確定申告の集計期間ですが、法人は任意で決められるのです。今回は事業年度と節税を見ていきましょう。

事業年度を変えることで節税ができる【法人特有の節税方法】

個人事業主は1月1日から12月31日までの期間で売上や経費を集計します。

その結果を翌年3月15日までに確定申告書にまとめて税務申告と納税をします。

どんなに12月~3月が忙しい個人事業主でもこれは変えられません。

会社設立をして株式会社や合同会社をつくって法人化した会社は、個人事業主のように3月15日に確定申告をするわけではありません。

法人の場合には「法人の定款」で定めた事業年度で会社の決算を行います。

この事業年度を上手に活用することで節税ができるのですが、上手に活用していない会社が多いのです。

今回は事業年度をどのように活用できるのか見ていきましょう。

事業年度とは【法人節税の基礎知識】

事業年度とは法人の会計期間のことをいいます。

会計期間や事業年度といわれても「ぱっとしない」ですね。

事業年度はその会社が「いつ」から「いつまで」の期間で売上や経費などの集計をするかということです。

個人事業主の場合にはこの会計期間が強制的に「1月1日から12月31日」となっていました。

個人事業主の人の確定申告の集計対象期間と同じものが、法人の会計期間(事業年度)ということになります。

株式会社などの法人は大切なことを定款というものに定めることになっています。

定款は会社にとっての憲法みたいなものです。

事業年度はこの定款の中に記載しておきます。

事業年度は原則として1年以内の期間を定款で定めます。

税務申告と事業年度の関係【法人税などの申告はいつまでに税務署にするのか】

事業年度は会社の任意で定めることができることがわかりました。

そうなると次は税務署にいつまでに税務申告書を提出しなければならないのかが気になります。

個人事業主の確定申告のように3月15日にまとめて税務申告をすることはないので注意しましょう。

法人の税務申告期限は「事業年度」を基準に考えます。

法人の税務申告の期限は原則として「事業年度終了後2か月以内」です。

法人税や消費税などの国税・地方税の納期限も「事業年度終了後2か月以内」になるので資金繰りに注意しましょう。

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なぜ事業年度を変えることで節税ができるのか?【適用条文を前倒し】

税法には改正というものがあります。

この税制改正は決まった時と施行されるときにズレがあります。

改正された税法が適用されるのは一般的には4月1日以後から始まる事業年度だったり、終了する事業年度だったりその条文ごとで異なります。

会社にとって有利な税法であれば前倒しで適用を受けたいところです。

条文が「○月〇日以後に開始する事業年度から適用する」と書いてあれば事業年度が変更された結果、その要件を満たしても適用になります。

事業年度変更前:12月1日~11月30日

有利な条文適用開始:4月1日以後開始事業年度

この会社が4月に有利な改正税法がでたことを知っていても、まだ7カ月も残っています。

有利な税法が使えないまま7カ月節税対策を考えることになります。

もしここで4月で一度事業年度変更をしたらどうなるでしょう?

4月中に定款変更をすると会社の事業年度は次のようになります。

変更後事業年度5月1日~4月30日

ここで気になることがあります。

12月1日から始まっていた事業年度はどうなってしまうのかです。

これは12月1日から4月30日で一度事業年度を終了させます。

その後5月1日~4月30日事業年度がスタートすることになります。

なぜ事業年度を変えることで節税ができるのか?【役員報酬改定の基準も事業年度】

法人税の税務調査では「役員給与」に関するトラブルが多いのです。

役員報酬として支払っていても税務上経費で落ちないケースが出てきます。

法人経営の中で難しいのは役員報酬の設定と会社の利益のバランスです。

1年後の業績を見通すことは難しいので半ばあてずっぽうで役員報酬を決めているケースも多くなっています。

その結果業績が上振れ・下振れしたことで会社と個人の税務バランスが予測と異なってくることになります。

役員報酬が税務上経費になる要件の一つに「定期同額給与」というものがあります。

(定期同額給与とは)国税庁HPを一部変更

・その支給時期が1か月以下の一定の期間ごとである給与で、その事業年度の各支給時期における支給額が同額であるもの

・定期給与の額につき、次に掲げる改定(以下「給与改定」という)がされた場合におけるその事業年度開始の日又は給与改定前の最後の支給時期の翌日から給与改定後最初の支給時期の前日又はその事業年度終了の日までの各支給時期における支給額が同額であるもの

イ:その事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3か月を経過する日までに継続して毎年所定の時期にされる定期給与の改定。ただし、その3か月を経過する日後にされることについて特別の事情があると認められる場合にはその改定の時期にされたもの

ロ:その事業年度においてその法人の役員の職制上の地位の変更、その他職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情(以下「臨時改定自由」という)によりされたその役員に係る定期給与の額の改定(イに掲げる改定を除く)

ハ:その事業年度においてその法人の経営状況が著しく悪化したことその他これに類する理由(以下「業績悪化改定事由」という)によりされた定期給与の額の改定(その定期給与の額を減額した改定に限られ、イ及びロにかかげるかいていを除く)

・継続的に供与される経済的利益のうち、その供与される利益の額がおおむね一定であるもの

この定期同額給与が役員報酬が損金で落ちるために必要な要件になります。

定期同額給与の要件で重要な部分は事業年度を基準に定められていることにあります。

事業年度変更の副産物として役員報酬の改定のタイミングも発生してしまいます。

いつでも事業年度を変えてもよいのか?【変更は簡単にできるのか】

いつ事業年度を変えても問題はありません。

事業年度を変更することのペナルティーはありませんが、租税回避目的で行っている場合には税務署とトラブルになる可能性はあります。

むやみに事業年度を変更することはお勧めしませんが、経営方針の変更や会社の経理上・資金調達を考えたうえで戦略的に事業年度を買えた方が良い場合には事業年度を変更することがあります。

(一般的に事業年度を変える理由)

・会社の事業年度が法人の資金繰りのタイミングと合っていないために、納税資金がキツイ

・会社の事業年度が繁忙期と重なって節税対策がとれない

・業務内容が変わることで繁忙期が変わる

(事業年度を変更するデメリット)

事業年度を変更するデメリットは次の3つあります。

事業年度変更デメリット1:臨時株主総会をしなければならない

事業年度変更デメリット2:決算・納税をしなければならない

事業年度変更デメリット3:銀行融資を受ける場合にマイナス要素になることがある

一般的に一番大きなデメリットは決算申告をして納税をする必要がある点です。

当初の決算期よりも早いタイミングで納税資金の確保も必要になるので計画的に行わなければ資金繰りが狂います。

銀行融資を考えている会社の場合には、事業年度が短くなることで売上高も利益も下がります。

そのため銀行融資審査のうえでマイナス要素になることがあります。

まとめ

個人事業主から法人になる場合には12月決算法人になることがあります。

一度事業年度を決めると変更できないと思っている方もいますが、事業年度変更は簡単にできます。

事業年度は経営上戦略的に活用すべきものです。

事業年度変更を上手におこなうためには、税理士さんに相談して戦略的に使いましょう。

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