過大役員報酬を判例をもとに考える【泡盛事件】

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過大役員報酬はいくらなのかは経営者は知りたいものです。具体的な過大役員給与の金額はわからなくても裁判所がどのように判断しているのかを勉強することで対策をしていきましょう。

過大役員報酬を判例をもとに考える【泡盛事件】

過大役員給与が損金不算入になるということを考えて日ごろ経営している社長は少ないと思います。

定期同額給与という毎年株主総会の時に役員報酬を決めておけば、税務的に問題なんてないはずと思っているはずです。

ところが、定期株主総会で決めている役員報酬でも税務調査でトラブルに発展することがあるのです。

今回は税務訴訟(東京高裁)判決をもとに過大役員給与について考えてみましょう。

 

【過大役員給与に関する納税者側の主張】

①租税回避目的でないので損金算入が認められるべき

役員給与をもらった方が税収が増えているから租税回避目的ではない。

役員給与の場合の税率は40%で法人税の税率は30%であるから、役員給与を払った方が税金的には損をしている。

不相当に高額な判定には、租税回避を防止する趣旨も含まれている。

②事業規模類似判定に売上高倍半基準の採用はおかしい

事業規模が類似法人を抽出するために売上高倍半基準が使われている。

事業規模と役員給与の間に一定の相関関係があるから妥当なのであって、売上高をもって役員給与の間に相関関係がある判断することは間違っている。

③役員給与には役員個人の能力や法人の個別事情も考慮に入れるべき

役員給与は法人に対する貢献度・将来の貢献期待度などをその法人の判断基準で決めるもの。

つまり役員報酬は。役員の個別性に強く影響されるものなので個別事情を勘案すべき。

個別の能力についても、客観的に比較点灯することは十分に可能である。

④役員報酬には利益処分の役員報酬が含まれていない(役員給与の変遷)

国税側は業況が平成18年度よりも平成19年度のほうが悪化しているのに、役員報酬を増額していることも過大役員給与の根拠にしています。

この事例では原告(納税者側)は次のように主張しています。

平成19年度の役員報酬は平成19年度の職務執行分+平成18年度の利益処分が含まれていると主張。

A:平成18年度の役員報酬は損金経理されたもの

B:平成18年度の利益処分の役員報酬(定時株主総会を経て平成19年度支給)

c:A+B=平成19年度の役員報酬設定額

⑤使用人給与の増減と役員報酬の増減の影響

使用人の給与は大きな変化がないにもかかわらず、役員報酬が増額していることは役員報酬の不相当に高額の判定に相関関係を持たなければならないのか。

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【過大役員給与に関する高等裁判所の判断と感想】

過大役員給与にならないように納税者側がコントロールすることは難しいことも多いのではないかと思います。

役員報酬の決定のタイミングは早く、その事業年度の結果論としての収益の関係をもって過大役員報酬を判定するということはハードルが高いと感じました。

零細企業や人的な人数が少なく規模の小さな会社が、類似法人情報に関して情報収集をして統計数値なども把握することは難しいのではないかと感じます。

東京高裁の判断としては、類似法人の役員給与に比べて大幅に高額なので過大役員給与は認識できたと判断しています。

収益・役員報酬ともに高い法人の場合には、役員報酬について難しい判断が必要になってきました。

1:事業規模類似判定に売上高倍半基準の採用は妥当

提出された資料によって、事業規模判定に売上高倍半基準と役員報酬に相関関係がないとまでは認めがたい。

提出された資料からの判断:売上高と相関関係があるものと判断

次の要素は売上高と相当の関係があることから、売上高を法人の事業規模指標として「事業規模類似法人」の抽出に使ったことは妥当。

①売上高と営業利益

②売上高と純資産

③売上高と純資産

④売上高と総資産及び従業員数

2:役員報酬の「一般に相当と認められる範囲の役員報酬」に役員の能力を判断に含めるべきではないと判断

役員の能力は次の経営指標等をみると優位性がわかると主張していました。

①経常利益率

②自己資本比率

③流動比率

④総資本回転率

⑤売上高成長率

ところが、裁判所は役員の経営能力を個別判断要素とすると「何をもって役員の能力」と評価するのか曖昧になると考えました。

主観的恣意的要素を判断要素に加えることになるので妥当ではないと却下しています。

さらに、次のように続けています。

・経営分析指標と役員報酬との関係について、確立された一般的な理解があるとはいえない

3:役員給与の変遷に関する判断

納税者側は平成19年度の役員報酬には平成18年度の利益処分の役員報酬が含まれていると主張している。

利益処分の役員報酬は損金経理される役員報酬とは別の話。

確かに、利益処分のものを損金経理した給与に含めているという話になると、利益処分したものを損金経理しているという話になってきます。

利益処分と経費処理では話が異なっているので認めがたいことになります。

さらに、役員給与が不当に高額か否かは「一般に相当と認められる範囲の役員報酬の額」の話であり利益処分した役員給与とは別の話として一蹴。

結果として収益状況が悪化していたことへの判断は?

納税者側は役員報酬を決定した後は原則として役員報酬の減額は認められないことから、結果として収益が悪いことをもって不相当に高額な役員給与の根拠として採用することは不当と主張していました。

役員報酬決定をするのは、事業年度開始後3月以内に行うのでそのあとの9か月程度の状況を予測するのは非常に難しいと感じます。

ところが高等裁判所は次の法人税法施行令の定めをもって、納税者側の主張を失当としています。

【旧法人税法施行令69条1号】(定期同額給与の範囲)

 定期給与(その役員に対して支給する給与で、その支給時期が1月以下の一定の期間ごとであるものをいう)の額につきその事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3月を経過する日にまでにその改定がされた場合における次に掲げる定期給与

イ:その改定前の各支給時期(その事業年度に属するものに限る。ロにおいて同じ)における支給額が同額である定期給与

ロ:その改定後の各支給時期における支給額が同額である定期給与

【法人税法施行令70条1号イ】(過大な役員給与の額)

イ:内国法人が各事業年度のおいてその役員に対して支給した給与(法第34条第2項に規定する給与のうち、退職給与以外のものをいう。以下この号において同じ。)の額(第3号に掲げる金額に相当する金額を除く)が、当該役員の職務の内容、その内国法人の収益及びその使用人に対する給与の支給の状況、その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する給与の支給の状況等に照らし、当該役員の職務に対する対価として相当であると認められる金額を超える場合におけるその超える部分の金額(その役員の数が2以上である場合には、これらの役員に係る当該超える部分の金額の合計額)

定期同額給与と過大役員給与の規定の違いにポイントを置いていると考えられます。

定期同額給与に該当していたとしても、過大役員給与に該当していれば「過大役員給与の損金不算入」は成立するという考え方です。

今回の事例では定期同額給与の要件は満たしているので、この段階で損金不算入にはなりません。

ところが、過大役員給与の判定で「その内国法人の収益」という点で結果論ですが収益悪化している会社としての役員給与が過大と判断しているようです。

まさに「あれはあれ」「これはこれ」という判断基準です。

納税者側の手続きの時間的な流れで定期同額給与をゆがめる恐れがあるので、減額はできなかったということは法人税法施行令70条1号イの判断要素には含まれないということになります。

不相当に高額な役員報酬の具体的金額は予測不能でも不相当に高額は予測可能

具体的にいくらが不相当に高額ということはわからなくても、相応の予測は可能としています。

今回のケースでは予測可能な類似法人の役員報酬を大幅に超えているのだから不相当に高額な部分があることは予測ができるとしています。

役員報酬が高額な場合には、自社と類似する会社の役員報酬を気にしていくことが必要になるようです。

税理士さんのほうでも、具体的にこれくらいは大丈夫と把握している可能性は低くなりますが、参考までに聞いてみましょう。

まとめ

役員報酬が過大とにんてしまった場合、税務訴訟で争うことのハードルは高そうです。

役員給与が不相当に高額かどうかと定期同額給与を別問題と考える必要があります。

中小零細企業が統計的な数値を把握することは難しいので、税理士さんに相談しながら検討していくことが重要です。

ただし、税理士さんでも類似法人の情報はもっていないことが多いと思いますので会社側で判断をする必要があります。

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