自分でできる法人税申告書の作り方【赤字法人なら自社でも可能】

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法人決算をはじめて自社でやろうと思った時に、国税から郵送されてきた申告書を見て愕然としてしまった方も多いと思います。大量の書類の中で何を使えば法人税申告書が出来上がるのかわからないと思います。今回は赤字法人の自分でできる法人税申告書の作り方を見ていきたいと思います。

自分でできる法人税申告書の作り方【赤字法人なら自社でも可能】

法人決算というとプロの税理士さんに頼まなければ難しいという話があります。

これは「ある意味正しい」と思います。

なぜ法人決算が難しいと感じるのかというといくつか理由があります。

(法人決算が難しい理由)

①税務知識がなければ経理段階で間違いが起きる

②法人決算作業で会計原則の知識が必要になる

③法人税等の税務申告書はわけわからない

これだけをみると素人が自分で法人決算を自分で行うことは不可能に見えてきます。

本当は赤字の法人であれば自分で税務申告ができる可能性があるのです。

赤字法人なら自社で法人決算ができる理由

個人事業時代に自分できちんと確定申告をしていた人は②の「会計原則の知識」を使っていたのです。

会計原則というと難しく聞こえますが具体的には次のようなことです。

(会計原則で一般的に使うもの)

①在庫を計上する

②売掛金・前払金・買掛金・未払金などを整理する

③減価償却を計上する

個人の確定申告の際にも、在庫があれば仕入という経費から商品に振替をしていたはずです。

請求書を出して未入金のものも売上に計上していたはずです。

仕入やカード利用をした請求が来たら貝掛金や未払金を使って経理していたはずなのです。

これは個人事業も法人も同じ処理です。

気を付けるのは減価償却費の計算が個人事業は原則として定額法でしたが、法人は原則が定率法になります。

減価償却費の計上も個人は強制ですが、法人は任意になります。

法人税の日々の税務に関してはも節税対策を行っていない限り、難しい税務知識は使っていないはずです。

一般的に周りの社長と話していて理解できる程度の知識があれば日常の税金の仕組みの理解はできている可能性があります。

法人決算が難しい理由の一番は③の「法人税等の税務申告書はわけわからない」が中心になってきます。

法人税申告書は様々な優遇規定を使えば使うほど記載しなければならない別表が増えていきます。

いきなり別表というと「なに?」となってしまうかもしれません。

法人税の申告書はたくさんの「別表」の集合体でできています。

税務署から郵送されてきた書類を見てください。

右上「別表○○」と記載があるはずです。

これは決まった内容を各書類です。

これを自社にとって必要な箇所だけ書いてまとめたものが法人税申告書になります。

赤字法人の場合、使う別表が少なく計算が楽なので自社で可能になるのです。

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赤字決算法人が一般的に使う別表とは(青色申告法人)

赤字の法人が一般的に使う別表は次の別表です。

記載する別表の順番に並び替えをして説明していきます。

1:別表二(同族会社等の判定に関する明細書)

同族会社等の判定に関する明細書というタイトルがついていますが、株主や出資関係を表にまとめるだけの別表です。

手順1)株主等の株式数等の明細の欄を記入する

役員=株主という場合、判定基準となる株主等の株式数等の明細の欄には自分の住所・氏名が記入されます。

株式数又は出資の金額等は「その他の株主等」の「株式数又は出資の金額」に株数または出資金の金額を記入します。

手順2)同族会社の判定を記入する

・1と2の欄について

期末現在の発行済み株式の総数又は出資の総額と(19)または(21)の上位3順位の株式数又は出資金額に株数を記入します。

自分だけが出資者の場合には両方とも自分の持っている株数か資本金の金額が入ります。

・3の欄について

株式等による判定の部分は他人が株主になっていない場合100.0%となります。

・10の欄について

同族会社の判定割合は他人が株主にいない場合には100.0%となります。

・18の欄について

他人が株主になっていない場合判定結果は「同族会社」に丸が付きます。

これ以外の欄については、自分のみが株主の場合には記入しません。

2:別表六(一)所得税額の控除に関する明細書

預金の利息や配当金がある場合、源泉所得税が天引きされています。

源泉所得税に関して処理をしないことも認められていますが、節税のためにはこの別表六(一)で源泉徴収された所得税額を記入しておきます。

源泉所得税には復興特別税も含まれるので注意しましょう。

3:別表五(二)租税公課の納付状況に関する明細書

赤字決算法人の場合、この別表五(二)に計算がほとんどいらないので法人税申告書を自社で完結しやすいのです。

赤字決算法人や繰越欠損金が多くて課税所得の出ない法人の場合、法人税が0円になります。

そのため地方税等が均等割りだけになります。

均等割りとは都道府県や市区町村が赤字でも徴収する最低の税金のことです。

この均等割りについては会社の資本金や所在地で異なるので郵送されてきた申告書をみながら金額を確認しましょう。

赤字法人の場合この均等割りだけがかかる法人になります。(消費税などを除いて)

均等割りの記載は次の通りとなります。

・道府県民税の確定部分と期末現在未納税額に今年の均等割りを記入します。

・市町村民税の確定部分と期末現在三納税額に今年の均等割りを記入します。

前期以前の税額の支払いについては、前期決算時に未払を計上している場合には「充当金取り崩しによる納付」に記入します。

前期に未払法人税を計上していない場合で、今期支払い時に租税公課や法人税等などで経理した場合には「損金経理による納付」に記入します。

(印紙税などの租税公課の取り扱い)

損益計算書の租税公課の元帳を見て、損金算入のものと損金不算入のものを区分して集計します。

損金算入のものは「損金算入のもの」の右の欄に該当するものを選ぶか作って記入します。

損金不算入のものは「損金不算入のもの」の右側に該当するものを選ぶか作って記入します。

先ほどの別表六(一)の源泉所得税は損金不算入のものに該当します。

(納税充当金の計算の記載)

納税充当金とは決算書上の「未払法人税等」のことをいいます。

期首の試算表に「未払法人税等」の記載があれば、別表五(二)の期首納税充当金にその金額が入ります。

繰入額(32:損金経理をした納税充当金)は今期の決算作業で均等割り分を計上した金額を記載します。

34の合計の場所も同じ金額を記入します。

取崩額:期首の納税充当金を取り崩して前期の均等割りを支払った場合にはここに(31:期首納税充当金)と同じ金額が入ります。

41の欄にも同額が記載されます。

41:期末納税充当金は今期に計上した均等割り額がそのまま残ることになります。

4:別表十五(交際費等の損金算入に関する明細書)

交際費がある場合には、別表十五(交際費等の損金算入に関する明細書)を記入します。

損益計算書の交際費の金額を支出交際費等の額の明細に記入していきます。

科目のところに交際費と記載し、6:支出額に金額を転記します。

交際費等の額から控除される金額と9:(8)のうち接待飲食費の額は通常記載しません。

これ以外の科目に交際費に該当するものがあれば「科目ん」を記載して同じように金額を記入していきます。

これらをまとめて、8の合計金額を(1:支出交際費等の額)に記入します。

中小法人等の場合には、3に1と同じ金額を記入します。

交際費が年額800万円を超えている場合には、1:支出交際費等の額ではなく800万円(年額)を記載します。

4:損金算入限度額と5:損金不算入額は指示通りに記載していきます。

ここで(5:損金不算入額)がある場合には別表四の加算項目に交際費等の損金不算入額(加算・社外流出)として転記します。

5:別表五(一):利益積立金及び資本金等の額の計算に関する計算書

別表五(一)は利益積立金と資本金などを記載する計算書になります。

記載する箇所は次の通りです。

繰越損益金(損又は赤)

①と②の箇所には会社の試算表の「期首の利益剰余金合計」を記載します。

③と④の箇所には会社の試算表の「当期最終残高の利益剰余金合計」を記載します。

納税充当金

納税充当金は別表五(二)の納税充当金の計算を転記していきます。

①の部分には別表五(二)31の期首納税充当金を記載します。

②の部分には別表五(二)41の計の金額を記載します。

③の部分には別表五(二)の34の計(繰入額)を記載します。

④の部分には別表五(二)の43の納税充当金を記載します。

※前期の都道府県民税に未納がある場合には④が決算書の未払法人税等と一致しているかを確認しましょう。

6:別表四所得の金額に関する明細書

赤字法人の場合には税引前損失の下に法人税等として均等割り金額を計上します。

均等割りの経理処理は次のように行います。

(法人税等)××円/(未払法人税等)××円

この仕訳を計上することで最終の損失額が決算書上出来上がったはずです。

ここまでできたらいよいよ別表四を作成します。

法人の決算書の税引き後の最終利益・最終損失を別表四の「当期利益又は登記欠損金の額」に記載します。

赤字決算法人の場合に一般的に記載が発生する箇所に絞って記載項目を見ていきます。

(別表四・加算)

①損金経理をした納税充当金

別表五(二)の納税充当金の損金経理をした納税充当金に記載した金額を転記します。

総額の欄と留保②の両方に同じ金額を記載します。

②損金経理をした付帯税(利子税を除く)、加算金、延滞金(延納分を除く)及び過怠税

別表五(二)の損金不算入のものをのうち(源泉所得税)以外のものを集計して記載します。

総額の欄と③社会流出の両方に記載します。

(別表四・減算)

赤字決算法人の場合、減算項目にに記載する箇所は少なくなります。

前期も赤字の場合で、前期決算時の利子割の源泉所得税の還付がある場合だけ記載する項目がでてきます。

19:所得税額等及び欠損金の繰り戻しによる還付金額等に前期決算の結果還付になった源泉所得税を記載します。

この源泉所得税は預金入金になった際に雑収入として経理しておきます。

(仮計より下の項目)

11:小計は加算項目を①・②・③の縦の集計して記載していきます。

21:小計は減産項目を①・②・③の縦の集計して記載していきます。

22:仮計は指示通り(1)+(11)-(21)で計算した金額を記載します。

25:仮計も一般的には22と同じ金額が入ります。

③29:法人税額から控除される所得税額

法人税額から控除される所得税額には別表五(二)の源泉所得税の金額を記載します。

33・37・39・47についてはそのまま指示通りに計算をして記載します。

これで別表四が出来上がりました。

6:別表七(一)欠損金又は災害損失金の損金算入に関する明細書

控除前所得金額の欄に別表四37の①を記載します。

当期分:欠損金額の部分に別表四47も①の金額を転記します。

同上のうち青色欠損金額に同じ金額を記載します。

前期以前の欠損金がある場合には、前期の法人税申告書の別表七(一)をみて、上の方の事業年度と控除未済欠損金額に転記していきます。

当期も赤字の場合には登記控除額は0円となり、前期以前の欠損金も翌期繰越額に回っていきます。

(参考)

法人が黒字で課税所得が出る場合には、前期以前の欠損金を使っていくことになります。

その場合には別表四の計算が37まで進んだ段階で別表七(一)の上部の当期控除額を記載していくことになります。

①別表一(一)の記載方法

いよいよ最終段階に入ります。

別表一(一)は他の別表を書き終えた後につくる「まとめの別表」です。

申告書の1枚目にあたるもので、署名押印欄もこの別表一(一)についてきます。

【別表一(一)左側の記載部分】

①所得金額又は欠損金額に記入する

別表四47の①を転記します。

②法人税額:0円と記入

③差引法人税額:0円と記入

【別表一(一)右側の記載部分】

①所得税の額:別表六(一)13の金額を記載します。

②18・20・24・27に同じ金額を転記します。

③31:翌期へ繰り越す欠損金又は災害損失金:別表七(一)5の合計を記載します。

【別表一(一)下側の記載部分】

決算確定日:株主総会で決算承認を受けた日を記載します。

還付を受けようとする金融機関等:源泉所得税の還付金口座を記入します。

【別表一(一)上部の記載部分】

納税地:法人の選択している納税地を記載します。

法人名:自社の法人名を記載します。

代表者の自署押印:代表者の名前を自署して押印します。

法人税申告書の押印は代表印でも個人の認印でも可です。

代表者住所:代表者の住所を記載します。

事業種目:法人の主たる事業を記載します。

期末現在の資本金の額又は出資金の額:期末の資本金の額を記載します。

増資などをしていない場合には前期の申告書と同じ金額が入ります。

資本金等の額の計算に関する明細書

一般的に記載するのは32の資本金又は出資金の欄と差引合計額になります。

登記事項証明書を確認して自社の資本金と合っている見ておきましょう。

増資をしていない限り、①期首現在資本金等の額と差引翌期首現在資本金等の額には設立時の資本金の額が入ります。

差引合計額も同じ金額がは入ります。

まとめ

法人税の申告書は個人の確定申告書とは比べ物にならないほどわかりにくい作りになっています。

別表は1から順番に作るのではなく、必要なものをつくってから転記を繰返していきます。

赤字決算法人の場合には、もっともシンプルな法人税申告書の作成になります。

今回記載手順を作ってみて思いましたが、シンプルなものでも初めての人にはハードルが高いかもしれません。

自社でできないことはありませんが、不安な場合には税理士さんにお願いしておきましょう。

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