会計ソフトを知識0(ゼロ)で使うことができるのは本当?【簿記の知識不要は嘘】

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会計ソフトのなかには「誰でも簡単に」というような説明のものも多くなってきました。果たして簿記の勉強も経理の経験もない人が本当に使えるのでしょうか?今回は会計ソフトの実際のところをお話しします。

会計ソフトを知識0(ゼロ)で使うことができるのは本当?【簿記の知識不要は嘘】

弥生会計や会計王、JDLや、最近ではMFクラウド、freee(フリー)と、多種多様な会計ソフトが市販されています。

こういった会計ソフトの売り文句は、だいたい「簿記を知らなくても大丈夫」といったもの。

では実際のところ、簿記や経理の知識や経験がなくても、税理士などに頼らず、本当に帳簿ができるものでしょうか?

答えは、イエスでもありノーでもあります。

とても曖昧な答えですが、会計ソフトを上手に使うためにも見ておきましょう。

会計ソフトとは何をしてくれるものか【簿記をシンプル・自動化したもの】

会計ソフトは簿記検定の作業を自動的に行っていく便利なソフトウエアです。

簿記検定の勉強をしたことがない人にとっては「何の話?」となると思いますので簡単にお話しします。

簿記というのは個人事業や法人経営をしているとでてくる取引というものを記録する作業です。

取引というと難しく感じるかもしれませんが、一般的には次のようなことです。

①商品を買った

②商品を売った

③事業に必要なものを買った

④お給料を支払った

⑤預金を引き出しした

などです。

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基本的には会社が動いて、物やお金が動いたら取引と思っていただければイメージしてもらえると思います。

これを帳簿というノートに決まったルールで記録していく作業を簿記といいます。

この取引を記録する際には、同じ内容をあちこちに書き写す「転記」やその金額を集計する作業があります。

これを人間の手で行うと、時間もかかるし計算ミスや転記ミスが起こってしまいます。

会計ソフトは一か所に記載したものを「転記」したり「集計」したりする部分を自動で行ってくれる便利な経理ソフトなのです。

会計ソフトに「簿記の知識不要説」は本当か?【作業をシンプルにするだけに過ぎない】

会計ソフトは大きく分けて2種類に分かれます。

①クラウド会計

②今までの会計ソフト(パソコンインストール型)

【最新のクラウド会計とは】

会計ソフトは今まではパソコンにソフトをインストールして使っていました。

最近ではクラウド会計といってウェブ上で経理をして、そのデータをクラウド上に自動的に記録しておく会計ソフトも出てきました。

クラウド会計は上手に使うとものすごく便利な会計ソフトです。

「税理士さんの経理の仕事がなくなるのではないか」といわれるのはここが理由になります。

クラウド会計の場合には、多くの取引は預金のネットバンキングやクレジットカードのネット上の情報からデータを読み込むことができます。

クラウド会計の場合「数字」と「取引先名」については、ほぼ確実にデータ連携をしますので、上手に使うとある程度は正確な帳簿ができるといえるでしょう。

クラウド会計も今までの会計ソフトのように自分で入力することもできますが、入力する作業に関してはインターネット環境下での操作となるため、今までの会計ソフトよりも操作性は悪いです。

【今までの会計ソフトとは】

今までの会計ソフトとはパソコンにソフトウエアをインストールして経理担当者や税理士さんが自分たちですべてを入力していた会計ソフトです。

代表的な会計ソフトは弥生会計・会計王・JDLなどがあります。

弥生会計にしろ、会計王にしろ、JDLその他の会計ソフトでも、おそらく「現金出納帳」「預金出納帳」といった入力画面があるはずです。

これらの入力はいたってシンプル、ほとんどお小遣い帳の感覚で入力をするだけです。

クラウド会計と違って基本的に経理を入力するのは人間です。

日付と金額を正確に、入金と出金を正しく入力できれば、こちらもある程度の帳簿は出来上がります。

簡単な経理が多く発生している業種の場合には、自分で経理がある程度までできることになります。

【クラウド会計も普通の会計ソフトも簿記経理の知識は必要になる】

クラウド会計の特徴は、日付・金額・取引先名を自動で会計ソフトに取り込んでくれます。

今までの会計ソフトの場合には、原則として日付・金額・取引先も自動で取り込んでくれないので経理担当者がすべてを入力することになります。

クラウド会計も今までの会計ソフトの両方で問題が起きてしまいます。

①会計ソフトは初期段階が一番簿記経理の知識が必要になってしまう

経理をするということは、簿記の「勘定科目」というものを決めなければなりません。

勘定科目とは「取引の性質」を決めた「単語」のようなものです。

一般的な勘定科目は会計ソフトに設定されているので、その勘定科目の中から選べばよいことになります。

ただし、どの勘定科目を選ぶことが正しいのか・税務的な問題が発生しないのかを自分で考えた上で選択する必要があります。

クラウド会計の場合には、取り込んだデータに勘定科目を設定するとその後の取引をその勘定科目を当てはめて自動経理をしてくれます。

これが便利なところですが、間違った経理を教えてしまうと間違いを自動複製してしまうリスクが高くなります。

修正することもできますが、余計な手間がかかることになってしまうので注意が必要です。

今までの会計ソフトで経理担当者がすべてを入力する場合には、経理担当者が取引の内容ごとに毎回判断して経理をしていくことになります。

今までの会計ソフトにも仕訳辞書登録という便利機能をつかうと、取引の具体的な事例として登録することができます。

ただし、自動経理ではないので自分で取引が発生する都度、自分で仕訳辞書から経理仕訳を複製する必要があります。

このことからいえることは、クラウド会計も既存の会計ソフトも初期段階こそ簿記経理の知識が重要になってしまうということです。

②確定申告や法人決算時には簿記2級くらいの知識は必要

入出金が正しく入力できて残高を合わせるころまではクラウド会計を使うと簡単にできてきます。

ところが勘定科目まで正しく入力できるかといえば、それはかなり難易度が高くなってきます。

また帳簿を作るためには、ネットバンキングやクレジットカード、現金預金の動き以外の入力が必要になります。

例えば、請求書でのやり取りや、給料関係、車両の購入といった仕訳の入力です。

モノの売買やサービスの提供があると、まず請求書でやり取りして、精算は後日になるということが少なくありません。

こういった場合、正しい帳簿としては、請求書の内容(売上や仕入)をまず入力し、現預金の動きで精算を別途入力するという流れになります。

さらに、請求書の金額が正しく精算されているかといった確認も必要になってきます。

給料の仕訳については、ご自身の給料明細書を見てみると色々な手当や控除されているものが多いことがわかります。

【給与明細の収入項目】

基本給・家族手当・皆勤手当・通勤手当など

【給与明細の控除項目】

健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料・源泉所得税・住民税・親睦会費など

給料の支払という取引自体は1本の仕訳で済みますが、実はその支払いの中身を事細かに入力して、はじめてちゃんとした帳簿になります。

こういった複雑な取引を、まったく簿記の知識がなくても入力し、帳簿上管理できるかというと、おそらく「ノー」ということになってしまいます。

ある程度複雑とはいえ、帳簿で出てくる取引は9割以上が毎月継続して出てくるものなので一度覚えてしまうと楽に経理ができるようになります。

ちゃんとした経験者や専門家のもとで、正しい仕訳の仕方や全体的な流れを理解すれば、数ヶ月で入力できるような内容がほとんどです。

全く簿記や経理の知識も経験もない方が、いきなり会計ソフトを使って帳簿を作ろうとしても、ゴルフをやったことがないままコースに出るようなものです。

なんとなく経理ができる人に頼むというのはレッスンプロをつけてゴルフをするようなイメージです。

しっかりとしたコーチをつけてゴルフをするイメージは税理士さんをつけて経理・税務を行っていくことです。

専門家のコーチを受け、ごくごく簡単な入力のコツや流れなどを少し勉強するだけでも、会計ソフトは意外と使えるものです。

勢いで買ってしまって損をしたと思っている方は、一度経理のプロである税理士に相談してみてはいかがでしょうか?

まとめ

会計ソフトを購入することで完璧な経理を簿記会計の知識がない人でもできるわけではありません。

特に経理の最初こそ簿記会計の知識が必要になってしまいます。

自社が使う会計ソフトをクラウド会計にするのか市販の会計ソフトにするかで日常の経理体制も変わってきます。

経理に関しては効率的に組み立てができるように税理士さんのバックアップをもらえる体制を作っておきましょう。

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