確定申告で未入金の取引先の売掛金の処理の仕方
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確定申告をしていると未入金の取引先が見つかることがあります。お金を払ってくれない取引先に対する売掛金を確定申告でどう処理してよいかを知っておかなければ税務調査でトラブルになるので注意しましょう。
確定申告で未入金の取引先の売掛金の処理の仕方
確定申告の経理をし始めると「ここの取引先入金になっていない!」と気が付くことが多いのです。
現金商売であれば貰い忘れはないのですが、「BtoB」の取引が多い会社は取引先が支払いを怠っていることがあります。
経理をしてくれる専門の人がいれば未入金は起こりにくいのですが、社長自ら経理をしているケースや奥様など身内が合間を見て経理を手伝っている場合には未入金問題が起きやすくなります。
今回は確定申告で発見された未入金問題にスポットを当てて見に行きましょう。
なぜ未入金は発生するのか?~未収入を溜めないコツ~
未入金が発生するのは「ツケ」での商品販売やサービスの提供が原因です。
商品代金や工事代金などを請求書を郵送してから回収というタイムラグがあるときには注意が必要になります。
特に社長が自分で経理をしている場合や家族経営で経理も家族がしている場合には注意が必要です。
どうしても売るということが仕事になってしまい、回収は作業ということになってしまうからです。
資金繰りを考える上では回収も仕事なのですが、次々と売上を上げていかなければ回収するものもなくなってしまうので回収が後回しになってしまうことが多いのです。
売上が右肩上がりの時は取引先も増えてくるので、未入金が多少発生していても資金繰りは安定しているように見えてしまいます。
未入金が発生してしまう原因は次のことがあります。
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①見積書・納品書・請求書が一連の流れになっていない
②納品した際に最終的な金額が不明確になっている
③入金確認と再請求のスケジュールができていない
①見積書・納品書・請求書が一連の流れになっていない
経理手順で見積書・納品書・請求書という一連の書類がそろっていれば入金済みかどうかは確認しやすくなります。
販売管理ソフトを導入するとこれが一連となって管理できるので便利です。
手書きの納品書などを使っている場合には、経理がしっかりと納品書などを管理しなければ請求書の発行漏れを起こしやすくなります。
②納品した際に最終的な金額が不明確になっている
税務調査では見積書・納品書がそろっているはずと言われることがありますが、個人事業や家族経営の場合そこまで手が回らないこともあります。
「急いで納品して」といわれると細かい金額まで決まらないまま納品だけすることがあります。
そうなると納品書に金額がはいっていないことと後日になると単価が折り合わなくてもめてしまうことがあります。
請求額が決まってからと思っているうちに忙しくなって後回しになることがあるので注意しましょう。
③入金確認と再請求のスケジュールができていない
経理が手薄になると月末に慌てて記帳して振り込みなど支払いの方ばかりに気を取られることがあります。
未入金先がどこで、再請求はどのタイミングで行うのかが決まっていない場合経理担当者は放置します。
数カ月たつと取引先に再請求をしても無視されてしまうことも珍しくありません。
貰えたはずの代金が踏み倒されたり値引きさせられたりするので注意しましょう。
発生した売掛金の未入金でも税金がかかる
税法はお金が入っていようが未入金であろうが関係ありません。
物を引渡したりサービスの提供が完了している時点で儲けが発生したと認識します。
仮に売りあげたものすべてが未入金だとしても税金はしっかりと取られるということです。
個人事業の場合であれば12月中に売りあげたものを2月いっぱいで回収しなければ確定申告期限に納税資金が足りないなんてことも珍しくありません。
未入金の債権で税金を払いたいところですが、納税は現金だけになってしまいます。
手元にない儲けに対して税金が取られるわけですから未入金の管理はしっかりとしておきたいところです。
ダメになった売掛金の未入金は処理することで節税できる
入金が遅れているくらいでは税金の対象から外れません。
しかし、本格的にダメになっている場合には税金の計算上損失として落とすことができます。
税金は非常に厳しい規定を設けているので未入金が発生する前から「万が一のとき」の処理方法を知っておくことが重要です。
1:全部又は一部の切り捨てをした場合:次の事実が発生した日の必要経費に算入する(所得税法基本通達51-11)
(1) 更生計画認可の決定又は再生計画認可の決定が発生:決定で切り捨てられる部分
(2) 特別清算に係る協定の認可の決定が発生:決定により切り捨てられることとなった部分
(3) 法令の規定による整理手続によらない次の関係者の協議決定:切り捨てられることになった部分
イ 債権者集会の協議決定で合理的な基準により債務者の負債整理を定めているもの
ロ 行政機関又は金融機関その他の第三者のあっせんによる当事者間の協議により締結された契約でその内容がイに準ずるもの
(4) 債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その貸金等の弁済を受けることができないと認められる場合において、その債務者に対し債務免除額を書面により通知:その通知した債務免除額
(1)と(2)はわかりやすい事例なので貸倒の経理をしてもトラブルは少ないものになります。
問題は(3)(4)です。
個人事業や個人経営の法人の場合、(3)の任意での債権者集会で合理的な基準で負債整理を定めることはほとんどないのです。
(4)が難しいのは債務超過の状態が粗糖機関経過していること自体わからないのです。
税理士事務所であれば自分の顧客が債務超過かどうかわかりますが、取引先が債務超過かどうかなんてわかりません。
さらに書面により通知をしなければならないので内容証明や配達記録などを使うことが一般的です。
そう考えると実務上使いにくい制度といえます。
2:回収不能の貸金等の貸倒れ(所得税法基本通達51-12)
貸金等につき、その債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らかになった場合には、当該債務者に対して有する貸金等の全額について貸倒れになったものとしてその明らかになった日の属する年分の当該貸金等に係る事業の所得の金額の計算上必要経費に算入する。
この場合において、当該貸金等について担保物があるときは、その担保物を処分した後でなければ貸倒れとすることはできない。(昭57直所3-1改正)
(注) 保証債務は、現実にこれを履行した後でなければ貸倒れの対象にすることはできないことに留意する。
この通達のポイントは、全額が回収できないことが明らかになっていることです。
相手が事業に失敗して財産もなく、売るものもないような状況で支払い能力がないというレベルです。
あちこちの支払いも滞っていてもうどうやってもこうやってもダメというときには、全額を貸倒損失として落としてしまいましょう。
担保物を預かっている場合には、その処分をした後に貸倒処理する必要があるので注意しましょう。
3:一定期間取引停止後弁済がない場合等の貸倒れ(所得税法基本通達51-13)
債務者について次に掲げる事実が発生した場合には、その債務者に対して有する売掛債権(売掛金、未収請負金その他これらに準ずる債権をいい、貸付金その他これに準ずる債権を含まない。以下この項において同じ。)の額から備忘価額を控除した残額を貸倒れになったものとして、当該売掛債権に係る事業の所得の金額の計算上必要経費に算入することができる。(昭46直審(所)19、昭57直所3-1改正)
(1) 債務者との取引の停止をした時(最後の弁済期又は最後の弁済の時が当該停止をした時より後である場合には、これらのうち最も遅い時)以後1年以上を経過したこと(当該売掛債権について担保物のある場合を除く。)。
(2) 同一地域の債務者について有する売掛債権の総額がその取立てのために要する旅費その他の費用に満たない場合において、当該債務者に対し支払を督促したにもかかわらず弁済がないこと。
(注) (1)の取引の停止は、継続的な取引を行っていた債務者につきその資産状況、支払能力等が悪化したため、その後の取引を停止するに至った場合をいうのであるから、例えば、不動産取引のようにたまたま取引を行った債務者に対して有する当該取引に係る売掛債権については、その取扱いの適用はない。
実務上最も使う可能性が高い貸倒通達です。
先ほどまでの2つの通達は相手側の状況に左右されており、税務調査で「相手方がぴんぴんしていますよ」といわれたらどうしようもないわけです。
今回の「所得税法基本通達51-13」の規定は自分と相手の取引を中心に判断ができるのです。
相手の状況に左右されないので、貸倒として経費で落としやすい規定になります。
会社の状況は債務超過でなくても、請求をしても払ってくれない取引先も出てきます。
クレーム案件などは請求しても未入金になったり、しつこく請求することで訴訟化してしまうリスクが膨らむことさえあります。
この通達の(1)は相手との最後の取引から1年以上経過した段階で1円を残して貸倒として処理できます。
ただし、取引には入金も含まれるので、売買か最後の入金から1年以上経過した段階で貸倒処理をすることになります。
この通達の(2)は遠隔地との取引で回収にかかる費用が請求額を超えている場合に適用になるものです。
海外取引でもない限り(2)の部分で貸倒で落とすケースは少ないかもしれません。
まとめ
商売をしているとどうしても発生してしまう「ツケ」ですが、しっかりと管理をしておかなければ税務上も不利になってしまいます。
確定申告はこういった未入金になっている売掛金の洗い出しの機会でもあるのでしっかりと帳簿を整理していきましょう。
起きてほしくはない貸倒ですが税務上経費で落とすためには厳格な要件があるのでしっかりと理解しておきましょう。
未入金があったからといっていつでも経費で落とせるのではなく、決まった時に経費処理しなければ経費で落ちなくなってしまうので注意が必要です。
貸倒の部分は税務調査でもチェック項目になるので税理士さんと相談しながら処理していきましょう。
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