スポンサーリンク
社長や事務担当者が決算時期になると憂鬱になるものは、税金と棚卸です。「あの在庫を全部数えるのか・・」と途方に暮れる在庫管理です。今回は、棚卸と在庫管理についてみていきましょう。
棚卸とはどんなこと?~在庫と棚卸の関係~
「在庫のない商売がうらやましい」こんな話は社長の間でよく話題になります。
なぜ在庫のない商売がうらやましいのでしょうか?
決算時期に倉庫や事務所で、商品の在庫を数えなくてよいからでしょうか?
個人事業の場合には12月31日に在庫を数える羽目になるので、在庫が少なければ少ないほどうれしいのは間違いないですね。
しかし、本当の理由は在庫管理の意味にあるのです。
棚卸が必要な理由~こんな重要な意味があったのか!~
棚卸は、仕事の様々な場面で使われる言葉です・
「仕事の棚卸をしよう」など日常業務の中でも話に出ます。
この場合は、仕事の在庫管理です。
終わっていない仕事の管理として「棚卸し」という言葉を使っています。
終わっていない仕事というと「まだ未着手の仕事」と「途中まで手掛けていて未完成の仕事」の2種類にわかれます。
仕事の棚卸をするというときには、この2種類のものを「在庫」といいます。
会計や税務の世界でも同じ認識です。
原則としては、
① 商品や製品でまだ売れていないもの(完成品)
② 商品や製品として未完成のもの(仕掛品)
③ 消耗品や貯蔵品で使っていないもの(未使用のもの)
これが、在庫です。
この在庫を管理することが棚卸です。
棚卸しをすることで、その期間に売った商品に対応する原価がわかるのです。
原価がわからなければ、商品の値付けが良いのか悪いのかわかりません。
売上原価は次の計算式で簡単に求めることができます。
「売上原価=期首棚卸高+当期仕入高―期末棚卸高」
で計算します。
棚卸高という表現をしているのは、在庫には商品と製品と貯蔵品があるからです。
製品とは工場などで自社で作った在庫を言います。
例えば、
1個80円で仕入れたものを100円で売っている会社が90個売れたケース
期首在庫 1個80円の在庫10個=800円
1個 80円で仕入れたもの × 100個=8,000円(仕入)
期末の在庫 80円で仕入れたもの×20個=1,600円(在庫)
「売上原価=期首棚卸高+当期仕入高―期末棚卸高」に当てはめてみましょう。
期首棚卸高(800円)+当期仕入高(8,000円)―期末在庫(1,600円)=7,200円(売上原価)
念のため、本当に売れたものの原価を集計してみましょう。
単価80円×90個=7,200円
上の計算式で計算したものと、実際の原価集計したものは合いました。
商品が2種類あるケース
A商品1個80円で仕入れたものを100円で売っている(50個売れた)
B商品1個50円で仕入れたものを90円で売っている(20個売れた)
期首在庫
A商品1個80円の在庫10個=800円
B商品1個50円の在庫10個=500円
期首在庫金額 1,300円
期中の仕入
A商品 1個 80円で仕入れたもの × 100個=8,000円(仕入)
B商品 1個 50円で仕入れたもの × 50個=2,500円(仕入)
当期仕入金額 10,500円
期末の在庫
A商品1個80円の在庫60個=4,800円
B商品1個50円の在庫40個=2,000円
期末在庫金額 6,800円
「売上原価=期首棚卸高+当期仕入高―期末棚卸高」に当てはめてみましょう。
期首棚卸高(1,300円)+当期仕入高(10,500円)―期末在庫(6,800円)=5,000円(売上原価)
念のため、本当に売れたものの原価を集計してみましょう。
A商品 単価80円×50個=4,000円
B商品 単価50円×20個=1,000円
売上原価 5,000円
上の計算式で計算したものと、実際の原価集計したものは合いました。
在庫を確認したら在庫表を作成・保存する(義務)!
個人事業の場合は12月31日・法人の場合には事業年度終了時に在庫確認をします。
ただ確認しても、きちんと在庫表を作っておかなければ税務調査の際に提出を求められたとき困ります。
税務調査の際には在庫表の提出を求められます。
この在庫表は個人事業の場合には7年間、法人の場合には9年間保存義務があります。
在庫表は次の項目を記録しておきます。
① 商品の種類(商品A・商品Bなど)
② 商品の数量(商品A 20個など)
③ 商品の単価(通常は、最後に仕入れたときの単価を使う)
④ 商品種類ごとの合計(②×③)
⑤ 在庫状況(通常・棚ざらし・劣化など)
商品は売り物にならない状況になると評価損を計上することができるので商品の状況を管理しておきます。
日光の当たる棚の上に保存されていて変色してしまったり、箱が破損してしまったりすると通常の在庫とは別に管理しておきましょう。
倉庫・店舗・事務所の在庫以外の在庫漏れに注意!
在庫確認にいっても見つからない在庫があります。
次の取引がある場合には、年度末に検品しても見つからないので注意しましょう。
・返品されている最中の在庫
・仕入れ先に預けている在庫
・発注が遅くて届いていない在庫
これらは、仕入れ先からの伝票上は最終付きの取引で記載されていたりしますが、決算までに納品されていないことがあります。
年度末に倉庫に行って一生懸命数えても、目に見えない在庫なので漏れやすいのです。
税務調査の際にも、伝票からこれらの取引がないかチェックされるので気を付けましょう。
まとめ
在庫の管理や検品はしっかりとおこなわなければ、経営上の数字も把握できなくなってしまいます。
在庫の管理の方法をしっかりと確立しておくことで税務調査のトラブルも避けられます。
在庫管理などは税理士事務所に相談しながら効率的に構築していきましょう。