個人事業を廃業したときに心配になるお金の問題【翌年の税金が高額になることも】

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個人事業を廃業した場合には、その年に在庫を処分したり固定資産を売却したりすることがあります。事業譲渡をして廃業をする人もいます。廃業の場合には住民税という落とし穴があることを忘れてはいけません。

個人事業を廃業したときに心配になるお金の問題【翌年の税金が高額になることも】

個人事業の廃業は団塊の世代が年を重ねていくにつれて増えてきています。

団塊の世代とは1947年から1949年までの3年間に生まれた人のことをいいます。

平成29年時点で70歳~73歳の方たちが団塊の世代といわれる人たちです。

団塊の世代は厳密には3年間ですが、この団塊の世代の後も人口は現在の出生数に比べるとずっと多くなっています。

この団塊の世代は事業主として働いていた世代ですが、すでに廃業をしている方・そろそろ廃業しようと考える方になってきています。

産業的に高齢化が進んでいる農業や建設業の場合には、年齢が高くとも事業主を続けられています。

年齢が高くなってきているのでやはり事業承継や事業廃止を検討している方も多いと思います。

今回は、事業を廃止したときに気をつけなければならないポイントを見ていきましょう。

廃業年の節税を間違うと危険な3つの理由【事業をやってきた意味がなくなる感覚が強くなる】

毎年の確定申告で「こんなに税金を払って・・・」と節税ができなかった経営者はたくさんいます。

節税をしようと思っても入金サイトと支払いサイトのずれで節税資金が不足していたり、個人生活費が高くて節税資金を使ってしまっていたりで節税は非常に難しいものです。

節税失敗を気にしているうちにあっという間に数年・数十年と経過してしまいます。

特段売上げが大きく落ちたわけではなくとも、年齢が高くなると事業を整理することがあります。

整理の仕方としては、いつもと同じように経営をして在庫や備品を処分して行う場合や事業を親族や第三者に譲り渡すケースもあります。

廃業の仕方によっては廃業年の利益が大きくなり多額の税金を発生させてしまうことがあります。

(廃業年節税に失敗すると危険な3つの理由】

①廃業年度の確定申告の所得税が高額になる

②廃業年度の翌年の住民税・事業税が高額になる

③廃業年度の翌年の国民健康保険料が高額になる

廃業年度の節税に失敗すると、廃業年度の所得税が多くなります。

廃業年度の所得税が高額になるということは翌年の住民税も高額になります。

事業利益が大きいということは事業税も高額になります。

廃業年度の所得税が大きければ、廃業年の翌年の国民健康保険料も高額になります。

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団塊の世代と団塊ジュニア世代とは【人口ピラミッドでみると強烈に多い世代】

TVや報道で有名な団塊の世代や団塊ジュニア世代とは、いったいどの世代のことをいっているのかよくわからないですよね。

なんとなくこれくらいの年齢の世代だろうと思っていたのですが、気になったので統計局のホームページで調べてみました。

・団塊の世代とは1947年~1949年の3年間に出生した方のこと

・団塊ジュニア世代とは1971年~1974年の3年間に出生した方のこと

実際に何歳くらいの人たちかを見ていくと、団塊世代は70歳~73歳・団塊ジュニア世代は46歳~49歳(平成29年時点)ということになります。

団塊世代と団塊ジュニア世代では24歳の開きがあるということですね。

団塊の世代から団塊ジュニアの世代までは人口としては多い世代です。

団塊世代以後団塊ジュニア世代までの廃業が増える時代に突入

団塊世代は70歳代ということもあり、すでに廃業してしまっている方も多いかもしれません。

業種として年齢層が高い業種であれば、今も現役で頑張っている方もいらっしゃると思います。

昔は60歳定年ということでしたが、最近では働けるだけ働くというライフスタイルがはやってきています。

団塊ジュニア世代は現在46歳~49歳ですから、働き盛りです。

今時点で廃業しようとしているのは団塊世代より少し下の世代かもしれません。

個人事業は開業をするのも廃業するのも簡単です。

ある意味で紙切れ一枚で、事業を始めることもできますし、廃業も簡単にできます。

気軽に始められて、仕事をやめて事業をたたむときも簡単だから個人事業をしてきた方も多いかもしれません。

問題は手続きが簡単でも、廃業した場合に大きなお金のトラブルを生みかねないということです。

個人事業を廃業する場合には利益が出やすいケースも

事業を廃業する場合には大きく分けると「倒産型」と「廃業型」です。

1:倒産型【事業毀損型廃業】

倒産型というと破産や再生案件と思われるかもしれませんが、ここでの倒産型はそういう意味ではありません。

事業の競争力は加齢とともに減少していきます。

経営者の年齢が高くなると売上げが減少したり、利益が減っていきます。

最悪の場合、数期連続の赤字を続けているケースもあります。

この倒産型廃業の場合には今回心配している廃業による税金の心配は出てきません。

問題は事業をやめるさいに銀行や知人親戚などからの借り入れの返済や取引先の代金支払いで将来の生活への心配が出てしまう可能性があります。

2:廃業型【勇退廃業型】

こちらは事業自体は食べていける状態です。

ただ経営者の年齢が上がったことで勇退をする場合です。

このケースは次のように分かれます。

①事業をその経営者の代で終わらせる(自然廃業型)

②子供や親族に事業を継がせる(事業承継型)

③第三者に事業を譲渡する(M&A・事業譲渡型)

・第三者に事業を譲渡せざるを得ないのは、士業などその個人に一身専属している資格ビジネスがあります。

・資格がなければ事業ができないため、親族に適当な人材がいない場合には同業他社への譲渡になります。

・個人事業が第三者に事業譲渡をする場合は、「いつもの事業の利益+事業譲渡の利益」となってしまいます。

・個人事業を第三者に事業を譲る場合には、廃業年の税金は通常よりも高額になるので注意が必要です。

いずれの形態にしても、収益力はある状態で廃業をすることになります。

毎年利益が出て納税をしている場合には、廃業年の確定申告でも納税が出ることになります。

このケースの廃業の場合には、廃業年の節税をしっかりとしなければ廃業後にも高額な出費が必要になります。

個人事業廃業時の税務の特徴【事業主や専従者への退職金がない】

廃業型で事業をやめる場合には、通常の年度よりも利益が多く出る可能性が高くなります。

廃業年度で利益が多く出たとしても、対策をとりにくいのが個人事業の廃業です。

一般の従業員に対する退職金は経費で落とすことができます。

しかし、個人事業主は自分や専従者に退職金を経費で出すということができないのです。

株式会社や合同会社などの法人の場合には、役員本人や親族に対して退職金を出すことができます。

妥当な金額の範囲内であれば、支払った金額は損金として法人の経費で落とせます。

ところが個人事業の場合、事業主自身に対する退職金を払っても経費では落とせません。

さらに、配偶者や生計一親族にたいして支払う退職金も経費になりません。

家族が頑張っていたからと退職金を支払っても、退職金は必要経費で落とせないということになります。

手元の資金は減少しますが、税務的に経費にならないので節税効果はありません。

その結果として廃業年度は結局大きな利益が残ってしまいます。

個人事業廃業前5年以内の固定資産の譲渡は注意

個人事業を廃業する日から5年以内に購入した固定資産は税金が高くなります。

固定資産の譲渡は原則として譲渡所得になります。

事業用の自動車や機械などは固定資産に該当するので売却すると譲渡所得になります。

譲渡所得は長期と短期で計算方法が異なってくるので、税負担も変わってきます。

【総合課税:自動車や機械などの事業用資産を売却した場合】

①短期譲渡所得に該当する場合:譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-50万円特別控除額

②長期譲渡所得に該当する場合:〔譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-50万円特別控除額の①の残り〕✕1/2

・総合譲渡所得の原因となる固定資産を売却する場合、短期になる場合と長期になる場合では税負担は2倍も違います。

・廃業5年以内に設備投資したものを売却して、利益が出ると税金も高くなるので注意しましょう。

【分離課税:店舗や土地・店舗併用住宅を売却した場合】

土地建物の譲渡による所得を分離譲渡所得といいます。

こちらは分離長期譲渡所得に該当する場合と分離短期譲渡所得に該当する場合で税負担が異なるので注意が必要です。

・分離長期譲渡所得と分離短期譲渡所得の区分方法とは

分離譲渡所得の長期と短期の区分は「その年1月1日時点で所有期間が5年を超えるかどうか」で判断します。

5年を超えていれば分離長期譲渡所得・5年以下であれば分離短期譲渡所得になります。

・分離長期譲渡所得も分離短期譲渡所得も利益の計算方法は同じ

譲渡価額-(取得費+譲渡所得)=分離譲渡所得金額

※一定の譲渡に該当する場合には特別控除をさらに控除します。

文理短期譲渡所得も分離長期譲渡所得も計算方法は基本的に同じです。

ただし、税率は分離短期の方は高く・分離長期の方は低くなるように作られています。

・分離短期譲渡所得の税率:所得税30%(復興特別所得税は別途かかる)+住民税9%

・分離長期譲渡所得の税率:所得税率15%(復興特別税率は別途かかる)+住民税5%

・店舗併用住宅を譲渡する場合にはマイホームを売ったときの減税が使えることも

家とお店や事務所がくっついているもの店舗併用住宅と呼びます。

建物の1階が理美容店や飲食店で2階・3階が住宅という造りなどです。

この場合、住宅部分に対しては居住用財産を売却したときの3,000万円の特別控除の対象になります。

さらに一定の長期所有の居住用財産を売却した場合には、3,000万円の特別控除と併せて軽減税率も適用できます。

【所有期間10年超の家屋・敷地のマイホームを譲渡したときの軽減税率】

・マイホーム売却の長期譲渡所得金額で6,000万円以下の部分:10%

・マイホーム売却の長期譲渡所得金額で6,000万円腸の部分:15%

個人事業主は小規模企業共済で廃業に備えるべき【廃業年の翌年住民税・事業税対策】

個人事業主は倒産型の廃業でない限り、廃業年に利益が膨らみます。

法人であれば節税対策としてできる退職金での経費を作ることもできません。

個人事業の場合は、廃業年の利益が大きくなることが原因で翌年の住民税と事業税が大きくなってしまいます。

廃業年に利益が出たからと使ってしまった場合、翌年の住民税・事業税が払えないという事態になりかねないのです。

そこで個人事業主は小規模企業共済を上手に活用しておきましょう。

小規模企業共済は現役時代に掛け金を「小規模企業共済等掛金控除」という所得控除で節税に使えます。

払った小規模企業共済の掛け金分を社会保険料控除と同じように所得控除できるのです。

事業を廃止した際に、手続きをすることにより退職金として個人がもらうことができるのです。

この廃業時にもらう一時金は退職所得になります。

実際に加入する際に中小機構に問い合わせをして確認してもらいたいところになりますが、一定の期間経過後の廃業の場合には掛け金よりも多くお金が戻る予定となっているようです。

個人業で自分に退職金を出しても経費にならないという問題をここで軽減するしかないのです。

退職所得は税負担が少ないので、手元に残るキャッシュが大きくなります。

廃業年の翌年の税金の支払い分をこの小規模企業共済金を当てることで将来的に支払いを残さないことができます。

【小規模企業共済から廃業時にもらう一時金に対する課税】

退職所得:(小規模企業共済の一時金-退職所得控除額※)✕1/2

※退職所得控除額は小規模企業共済をかけている年数によって次のようになります。

・小規模企業共済の加入年数20年以下:加入年数✕40万円

・小規模企業共済の加入年数20年超:800万円+(加入年数-20年)✕70万円

まとめ

個人事業を廃業するのは将来のことでも廃業した場合に税負担が大きくなるリスクがあることを知っておきましょう。

個人事業を廃業する前にできる節税をしっかりと行っておかなければ個人キャッシュが不足してしまいます。

個人事業を始めたらすぐに少額でもかまわないので小規模企業共済に加入しておきましょう。

個人事業を始めたら所得税と法人税に詳しい税理士さんに将来ビジョンを含めて相談しましょう。

廃業した場合の確定申告についてはこちらをご覧ください。

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