修理したお金は経費で落ちない?~修繕費と資本的支出~
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個人事業主でも不動産賃貸業でも株式会社などの法人でもお店・事務所・車など様々なものを修理することがあります。その修理したお金を全額経費で落としていると大問題になることがあることをご存知でしょうか?
修理したお金は経費で落ちない?~修繕費と資本的支出~
個人事業をしている場合や不動産賃貸業をしている場合様々な経費が出てきます。
パソコンが不調になったり、車の事故で修理が必要になったり、店のドアが壊れたりなど突発的なことが起こります。
これ以外にも計画的に不動産賃貸用物件の外壁の塗装をおこなったり、退去者が出た際にバスタブを交換したり壁紙を張り替えたりなど様々な支払いをすることがあります。
一般的には「修繕をした」と思っているこれらの支出ですが、税務上は非常に難しい判断をしなければなりません。
払ったものを全額経費でしていると税務調査の際に思わぬトラブルになることがあるので注意しましょう。
払った修繕費もタイミングで全部が経費にならないことがあるので注意!
この後の説明のために、修繕費について先におさえておきましょう。
本来の修繕費とは次のものをいいます。
①本来の用途と本来の用法で、通常予定される効果が得られるために行う、維持・補修の費用
②使用可能期間を延長・価値増加をしないものであること
通常の使い方をする分に不自由しないために行う維持補修のことです。
そして、使用可能期間を延長させたり、価値増加にならないものをいいます。
使用可能期間を延長するものの例としては、同じ種類の椅子が3年くらいしか持たないものを改造して10年は持つようにパーツを強化した場合。
価値増加を伴うものの例としては、普通の椅子にマッサージ機能をつける加工をしたりすることです。
本来であれば「修繕費」に該当する支出をしても、経費にならないものがあるので注意しましょう。
あくまでも普通の使い方ができるために維持補修をしていても、タイミングによっては経費で落ちないのです。
経費で落ちない修繕費は「事業の用に供するため」に修繕費を使った時です。
実は、修繕費とは別の部分に「取得価額」の考え方に気になる記載があるのです。
資産の取得価額=その資産の購入代金+「その資産を事業の用に供するために直接要した費用の額」
つまり、事業共用をするために直接要した費用の額は取得価額に加算されることになります。
壊れている物件を修理して事業に使い始める場合には、事業共用のために直接要した費用に該当してしまいます。
一般的に修繕費に該当するものでも、どのタイミングでの支払いかをしっかりと検討しておくことが必要です。
修繕費になるのか資本的支出になるのかが難しい理由
先ほどの修繕費の定義を見てみましょう。
修繕費とは・・・
①本来の用途と本来の用法で、通常予定される効果が得られるために行う、維持・補修の費用
②使用可能期間を延長・価値増加をしないものであること
ここで修繕費になるかどうかを難しくしているのは②の「使用可能期間を延長・価値増加をしないもの」という点です。
あるものに対して工事をしたり修理をした場合、よりよい素材で修理をしていれば使用可能期間が延長されたり価値が増加する場合があり得ます。
店舗の入り口の手押しドアが壊れたので、センサー式のドアに変更工事をした場合はどうでしょう?
もともとなかったものをつけた場合には、修繕ということにはなりません。
なかったものをつけたのであれば、「資本的支出」ということになります。
今回の例では、もともとドアがあったところに「自動ドア」に変えたのです。
ドアという用途は変わっていませんが、便利になったわけです。
これが②の価値増加に該当するので、壊れたドアを自動ドアに変更した場合には修繕費に該当しない部分があるわけです。
(※所得税法と法人税法に同じような通達があるので簡易的な説明をしていきます)
資本的支出とは
資本的支出とは資産の維持管理をするために管理・修理をした場合で次のものに該当するものをいいます。
単体の固定資産を購入した場合とは異なっていて、修理などの工事をした際のうち一定のものを「資本的支出」と呼びます。
つまり、会社側では修繕費などの経費として考えているものでも、修繕費ではなく資本的支出になるものがあるということです。
資本的支出:資産の価値を増価させる部分に対応するもの
(国税庁HPより)基本通達37-10
業務の用に供されている固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち当該固定資産の価値を高め、又はその耐久性を増すこととなると認められる部分に対応する金額が資本的支出となるのであるから、例えば、次に掲げるような金額は、原則として資本的支出に該当する。(昭57直所3-1追加)
(1)建物の避難階段の取付け等物理的に付加した部分に係る金額
(2)用途変更のための模様替え等改造又は改装に直接要した金額
(3)機械の部分品を特に品質又は性能の高いものに取り替えた場合のその取替えに要した金額のうち通常の取替えの場合にその取替えに要すると認められる金額を超える部分の金額
(注) 建物の増築、構築物の拡張、延長等は建物等の取得に当たる。
資本的支出と修繕費が区分できない場合の計算方法
物を直したりする場合には、必ずといっていいほど資本的支出と修繕費に区分しなければならない問題が発生します。
見た目で価値が上がった・ものが良くなったということがわかっても「いくら増えたのか」などはわかりません。
そこで資本的支出と修繕費の区分ができない場合には形式的に区分する基準が定められているので使っていきましょう。
1:修繕費と資本的支出区分のSTEP1:少額または周期の短いものは修繕費OK
① その一の修理・改良等のための金額が20万円未満であれば全額修繕費OK
※一の修理、改良等が2以上の年にわたって行われるときは、各年ごとに要した金額で判定します。
② その修理、改良等がおおむね3年以内の期間を周期として行われることが既往の実績その他の事情からみて明らかである場合は修繕費OK
2:形式基準による修繕費の判定
資本的支出か修繕費であるかが明らかでない金額が、次の金額に該当する場合は修繕費OK
①資本的支出・修繕費の区分不明な金額が60万円未満な場合
②資本的支出・修繕費の区分不明な金額が修理等の対象固定資産の前期末取得価額のおおむね10%相当額以下である場合
3:資本的支出と修繕費の区分の特例
一の修理、改良等のために要した金額のうちに資本的支出であるか修繕費であるかが明らかでない金額がある場合で、上記1・2に該当する場合を除いて次の特例計算で修繕費とすることができます。
(前提条件)
①1・2を適用する場合にはこの規定は適用できません。
②この特例を使う場合には、今後の修繕費判定はこの規定通りに修繕費を計算することになります。
(資本的支出と修繕費の特例計算方法)
次の①と②の少ない金額を修繕費とし、残りの金額を資本的支出とすることができます。
①資本的支出・修繕費の区分不明な金額の30%相当額
②その修理、改良等をした固定資産の前年12月31日における取得価額の10%相当額
まとめ
事業をおこなっていると様々なものの修繕やリフォームが必要になってきます。
飲食店・理美容業であれば定期的なリフォームをしなければ集客力の低下につながります。
建設業や除雪業は機械の修理・メンテナンスを行っていかなければ機械の寿命が短くなってしまいます。
簡単に修繕費と思っていても税務調査で経費ではないと否認されるトラブルが多くなっているので修繕費と資本的支出の区分方法をおさえておきましょう。
この考え方は非常に専門性が高く、税務調査の際でのやり取りも複雑になりますので税理士さんに相談しておきましょう。