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税務署から6月中旬頃に会社あてに「源泉所得税及び復興特別税の納付期限のお知らせ」という葉書が届いていませんか?給与の支払いをしている個人事業や法人の方はお給料から所得税を天引きしなければなりません。このお知らせはこの天引き所得税に関するお知らせなのです。
給与から天引きする源泉所得税とは【納期限はしっかりと】
月々の給料やボーナスをもらうと、給与明細に「所得税」あるいは「源泉所得税」という欄があります。
これは、いわば「自分が1年で負担する所得税の前払い」です。
一般的な会社員の所得税の流れは、次のようになっています。
(1年間の給与天引き所得税の事務関係)
①毎回の給与・賞与の支払い時に、会社や個人事業主が給与や賞与から所得税を預かる
②本人に代わって、預かった所得税を税務署に納付する(毎月もしくは半年ごと)
③年末に1年分の給与・賞与や扶養の人数等を集計して正確な所得税を計算する
④①で天引きした1年間の所得税と③の所得税の差額を年末調整で本人に還付(場合によっては追徴)する
これが源泉徴収制度というもので、源泉徴収制度で会社が預かった所得税(給与・賞与から天引きされた所得税)を源泉所得税と呼びます。
個人事業主が確定申告で納める所得税と基本的に同じ所得税ではありますが、本人が納税するか、雇い主が納税するかで区別されます。
なお復興特別所得税は、東日本大震災の復興費用を国民に負担してもらうための税金で、所得税・源泉所得税の2.1%を本税に加算して納税することになっています。
源泉徴収はしなければならないの?【源泉徴収義務とは】
事業者が給与等から所得税を預かって本人に代わり納付する源泉徴収制度は会社が勝手に行っているわけではないのです。
税法で定められています。
給与・賞与の支給をすると、支給した人(法人や個人事業主)はその金額等に応じて源泉所得税を徴収しなければいけません。
(ここでいう給与・賞与には、法人であれば役員報酬、個人事業主であれば専従者給与、そのほかアルバイト料なども含みます)
また給与・賞与だけでなく、税理士や司法書士、弁護士などの士業や、デザイナーなどに対する報酬を支払った場合も同様です。(相手が個人事業の場合のみ)
源泉徴収をしない場合にはどうなる?【会社が損をすることが多い】
源泉徴収は、給与を払う側(事業者)にも、受け取る側(スタッフ)にも拒否する権限はありません。
法律で定められたとおりに源泉徴収をしなかった場合は、「源泉徴収義務違反」という罰則が適用されます。
税務調査が入った場合は、税務署が遡って源泉徴収税額を計算し、事業者はその税金を納める必要があります。
源泉所得税は、本来事業者が負担するものではなく給与をもらうスタッフ等から預かっている税金ですが、知っておいてほしいことがあります。
①現実には、遡って本人から徴収するのは難しい(結果的に事業者が負担することになってしまうケースが多い)
②特に、扶養控除等申告書を記載していない場合には税額が跳ね上がる
③源泉所得税には納付期限があり、それを過ぎると余計な税金が発生する
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本来負担する必要のまったくない源泉所得税を負担することになるばかりか、それに対する追徴課税(不納付加算税・延滞税)まで払う必要が出てきます。
納税がけっこうな額になることも多く、100万円以上の負担になることもありえます。
これを避けるためには、毎月しっかり源泉徴収をおこない、期限通りに納税することが大切です。
源泉所得税の納付期限【源泉所得税はいつまでに納めればよいのか】
源泉所得税の納期限には原則と特例というのもがあります。
原則のほうが支払期限が厳しくなっており、特例は年2回の納税になります。
支払額は同じなのですが、金融機関に行く時間が省略できます。
①原則的な源泉所得税の納期限
源泉所得税は月々の給与から徴収し、給与などの支払日の翌月の10日までに納付するのが原則です。
たとえば、4月末締めの給与を5月20日に支給する場合、5月分の源泉所得税として6月10日に納税することになります。
②源泉所得税の納期の特例の場合
「源泉所得税を計算し納付書を書いて金融機関で納税する」というのを毎月するのは、中小企業には結構な負担になります。
毎月10日に銀行などの金融機関の混雑しているところに出向いて納税するとなると半日仕事になってしまいます。
しかも、全事業者が銀行に並んでいたら銀行にしても大変な事務処理になってしまいます。
そこで、従業員が10名未満の事業者には、半期ごと(1~6月分を7月10日、7~12月分を1月20日)にまとめて納税をすることが認められています。
「納期の特例」という制度で、税務署に「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出することで、その翌月以降に徴収する源泉所得税から適用されます。
(源泉所得税の納期の特例を使った場合の注意点)
納期の特例を使うと納税のために金融機関などにいく手間は減ります。
しかし、半年分をまとめて支払うため、1回当たりの納税額が多くなるため一回の納税金額が大きくなってしまいます。
この場合、納期の特例を申請しておいても毎月納付することも可能ですし、納付を見込んで定期積金などに資金をストックしておくのもいいでしょう。
納付期限を過ぎた場合のペナルティ【遅れると高くつく源泉税】
源泉所得税の納付期限は、実は非常に重要です。
納税が遅れてしまった場合には、2種類の追徴課税という罰則があります。
①不納付加算税
「1日でも」納付が遅れると、それだけで追徴課税が発生します。
対象となる源泉所得税の10%(税務署からの督促の前に納付する場合は5%)ですので、うっかりしていただけでもけっこうなダメージになります。
しかも、不納付加算税は経費になりません。
②延滞税
こちらは滞納した源泉所得税に対する利息として課税されるものです。
納期限から2か月は年2.7%、それ以降は9.0%という、かなり高い年利で計算されます(平成29年1月1日から平成29年12月31日までの場合)。
2か月以上遅れると、キャッシングに近い利率で無駄な税金を払うことになります。
この延滞税も経費になりません。
まとめ【7月10日は上半期の源泉所得税の納付期限!】
さて、冒頭の話に戻りましょう。
税務署から6月中旬に送られてきた「源泉所得税及び復興特別税の納付期限のお知らせ」は、納期の特例を申請した事業者に対する7月10日の納期の注意喚起です。
税務署からの郵送物を毛嫌いし、見ないで捨ててしまう方もいるかもしれません。
しかし、前述のとおり源泉所得税の納付期限は非常に大事です。
早めに集計を終え、7月10日までに納税して、無駄な追徴課税を避けましょう。
ご自身で集計する時間がない、自身がないという方は、ぜひ期限前に税理士にご相談をしてみましょう。
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