税務調査で必ずチェックされる仕入と在庫の関係は?~税務調査官の着眼点~

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税務調査の最盛期といわれる7月から12月までの期間になると、税務署からの電話がくるだけでドキドキしてしまいますね。いざ税務調査となると必ずチェックされるポイントに在庫があります。税務調査でどのように在庫をチェックされるのかを見ていきましょう。

税務調査で必ずチェックされる仕入と在庫の関係は?~税務調査官の着眼点~

税務調査は経営者になると苦手なものの上位に入ってくるものです。

税務調査が楽しみで仕方がないという経営者はあまりいません。

サラリーマン時代は税務署といわれてもピンとこなかったかたでも、経営者になると税務署といわれるだけで嫌な気持ちになる方が多いようです。

税務調査は法人の場合は特に定期的に行われます。

税務調査の日程や調査税目・税務調査に来る人などの項目を税務調査の予定日の数週間前に電話で連絡してきます。

この税務調査のアポ入れの手続きのことを事前通知といいます。

事前通知手続きが法律化されたので、事前通知の項目は11項目にもおよびます。

税務署の方も事前通知を聞く経営者や税理士も時間がかかるようになってきました。

そのため最近の税務調査の着手前手続きが法律化されたので「定期的な訪問です」という回答は聞かれなくなってきました。

税務調査では領収書や請求書・預金通帳と帳簿書類も提示することになります。

これ以外にも必ず求められるものに「在庫表」があります。

在庫がない業種であれば必要ありませんが、飲食店・理美容室・動物病院・建設業に至るまであらゆる業種において必要になるものです。

税務調査では在庫というものが必ずチェックされるので、在庫の考え方とチェックポイントを見ていきましょう。

ビジネスマン,虫眼鏡

なぜ税務調査で在庫のチェックが行われるのか?

通常の税務調査の調査期間は3年間です。

正しくは法人であれば前期・前々期・前々前期の申告書を提出している直近3期分です。

この期間のすべての在庫を新調に検証しているかというとそうではありません。

税務署の税務調査のなかで最も興味があるのは直近の在庫表です。

その理由はなぜでしょうか?

これには税務調査の際の税務調査官の心理が働いているためです。

在庫というものの特性がそうさせているのです。

①在庫になる前は経費だった「在庫」

「何を言っているの?」と思ってしまいますね。

実は在庫というものは、本来は経費だったものです。

商品や製品というものを仕入れて、期末に売れずに残っていたものを在庫といいます。

つまり、期中は「仕入れ」という経費で落としていたものを決算時に「商品」として経費から資産に振り替えたものです。

簡単にいうと「経費で処理したもののうち残ったものを今期の経費から外した」ということです。

経費が少なくなると利益が出て税金が高くなります。

税務調査の際に、在庫として処理すべき商品を在庫に計上していなければ経費が多すぎるということにつながるわけです。

在庫の漏れを指摘することで、会社の利益が大きくなって税金が増えるので調査官にとっては絶対見たいポイントなのです。

②なぜ直近の年度の在庫を慎重にチェックしたがるのか?

これも税務署の税務調査官の心理が働いてしまうポイントです。

在庫はその年の経費から外しているものです。

この在庫は売れたときに経費になります。

流れとしては次のように処理されていきます。

・仕入れ(経費)→売れ残り⇒商品(在庫)→売れる⇒売上原価(経費)

ここに3期分の税務調査の中で前期の在庫が中心的に狙われる理由があります。

3期前や2期前の在庫は前期に売れてしまっている可能性が高いのです。

売れたときに経費になるわけです。

・3期前の在庫漏れを指摘⇒2期前に商品が売れていた場合

○ 3期前の利益が増える⇒3期前の税金が増える

○ 2期前に売れた分の経費が増える⇒2期前の税金が減る

※ 税務調査をしてもトータルの税金が増えない

・2期前の在庫漏れを指摘⇒前期に商品が売れていた場合

○ 2期前の利益が増える⇒3期前の税金が増える

○ 前期に売れた分の経費が増える⇒前期の税金が減る

※ 税務調査をしてもトータルの税金が増えない

★ 前期の在庫漏れを指摘した場合⇒調査対象外の年度に売れていた場合(進行年度で売れている場合)

○ 前期の利益が増える⇒前期の税金が増える

○ 進行年度に売れた分の経費が増える⇒進行年度の税金が減る(調査対象外年度)

※ 前期の在庫漏れは税務調査による納税額の増額につながる

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③とにかく在庫の範囲は広い

在庫の範囲は一般の人が思っているよりも広いのです。

税理士などプロの経理・税務の人がアドバイスをしてくれなければ在庫の計上漏れは起きて当たり前かもしれません。

商品を仕入れて販売するだけの業種であれば、買ったもので売れ残っているものを在庫にすればよいというのはわかります。

しかし、これだけが在庫ではないのです。

在庫として計上するものには、「仕掛品」というものもあるのです。

仕掛品とは製造や作成しているもので、まだ販売していないものです。

例えば次のものが在庫として取り扱われる仕掛品です。

・請負で受けている現場で引き渡しが終わっていないものの人件費・材料費・外注費などの現場経費

・ソフトウエアの作成途中で納品していない部分の人件費・外注費などの経費

・コンサルティング業務などで完了報告がされていないものの人件費・調査費用などの経費

この在庫や仕掛を正確におさえるためには、売上をどのタイミングで計上すべきかを抑えていなければ間違ってしまうのです。

税務調査の際に在庫漏れと連動して売上の計上タイミングも同時に調査されるのはそのためです。

なぜ税務調査で仕入れもチェックされるのか?

税務調査でチェックされるのは在庫だけではありません。

税務調査では仕入もしっかりとチェックされます。

なぜ仕入れをチェックするのかというと、次の理由があります。

① 仕入れとして経費で落としてはいけないものが含まれている可能性がある

② 仕入れをチェックすることで売上の漏れを発見できる

③ 取引先を把握することでキックバックなどを発見する端緒にすることができる

① 仕入れとして経費で落としてはいけないものが含まれている可能性がある

一般的には商品や材料を仕入れるところは、在庫になるものを取引しています。

ところが材料の仕入れ先でも大きな機械などを取り扱っているケースがあります。

大きな会社であれば固定資産と呼ばれるような10万円を超える器具なども販売していることも珍しくありません。

納品書を細かく見ていれば気づくのですが、慌てて経理をしていた李請求書から帳簿をつけているのでは気づかないこともあります。

税務調査の際には取引先からの仕入れの中に10万円を超える器具や備品が含まれていないかもしっかりとチェックされます。

固定資産に該当する場合には、一発で経費として処理せずに減価償却という処理をして数年間かけて経費化していきます。

一発で経費で落としている場合には修正をする必要が出てきます。

当然利益が多くなるので税務調査での造作税額が出てくることになります。

② 仕入れをチェックすることで売上の漏れを発見できる

仕入れたものは売って利益を出していきます。

中には売上をごまかして、脱税しようとする人がいます。

そうなると仕入れは経費なので使いたいわけです。

仕入を経費で落としつつ、売上を除外して利益を圧縮しようとします。

そこで仕入れを押さえることで、売上のもれを発見できるわけです。

仕入れたものが売られていないのです。

こうなると「仕入れたものはどこへ消えたのか?」ということになります。

仕入と売上のつじつまが合わないことによって、売上の漏れを発見することにつなげていきます。

③ 取引先を把握することでキックバックなどを発見する端緒にすることができる

取引先によっては多額の仕入れをしてもらっている業者にリベートを出しているケースがあります。

税務署はあちこちの税務調査や資料箋とよばれる事業者向けアンケートでリベートの支払い状況を補足しています。

そのリベートを出している会社と取引しているのにリベート収入が上がっていないことになれば、もらっているリベート除外がすぐにわかります。

まとめ

税務調査では在庫と仕入はしっかりとチェックされる項目です。

特に仕入れ金額の大きな業種は在庫の計上時期の間違いで多額の追徴になることがあるので注意が必要です。

在庫や仕掛というものは判断が非常に難しい部分もあるので経理・税務のプロの税理士さんに相談していくことが重要です。

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