減価償却費と資金繰りの関係とは?~知らないとお金がなくなる仕組み~
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減価償却費と資金繰りの関係をご存知でしょうか?個人事業主などの経営者が知っているようで知らない減価償却費とは何かです。減価償却費と資金繰りの関係は、確定申告や法人決算の時にぜひ見直しておきたいポイントなので見ていきましょう。
減価償却費と資金繰りの関係とは?~知らないとお金がなくなる仕組み~
確定申告対策や法人決算対策で予測以上の利益が出る場合に税金対策が必要になります。
個人事業であれば小規模企業共済への加入や法人・個人を問わず倒産防止共済への加入など様々な節税対策があります。
小規模企業共済であれば最大84万円の前払いで大きな節税効果を作ることができます。
倒産防止共済であれば最大240万円の前払いで大きな節税対策をすることができます。
これら有名どころの2つの節税をみてもわかるように大きな節税をするには大きな出費が必要ということになります。
「節税は出費を伴わなければ税金対策にならない」ということです。
「小さな出費で大きな経費を作ることはできない」というのが税金上のルールなのです。
ただ、節税と無駄遣いの違いは将来に回収可能性のあるものへの投資が節税で無駄遣いが浪費です。
少し話がずれてしまいましたが、予想外の利益が出るときには節税対策を行いたくなってきます。
ここで経費が大きければ利益が減って節税につながるというところに頭が働いてきます。
そこで大きな出費というと次のものを思い浮かべてしまいます。
①借入金のまとまった金額の返済
②土地・建物などの大きな物件の購入
③パソコンや機械などの設備投資
①はそもそも節税効果が全くありません。
借入金の返済は経費にならない出費だからです。
②③は短期間での節税効果が乏しいものです。
しかし、①から③の出費は多額な出金になります。
大きな出費をしなければ大きな経費が作れないので節税につながらないと勘違いしてしまってはいけません。
経費になる出費が多ければ節税につながるということです。
経費にならない出費がいくら増えても税金は減らないので多額の納税が必要になります。
さらに経費にならない出費をすることで資金繰りが悪化していますので注意しましょう。
では、次に減価償却とはどのような仕組みなのかを見ていきましょう。
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減価償却費とは少しずつ経費にする決まりのこと
これは会計学的なところから決まっていて、税法がより定型的に規定を作っているという流れです。
商品を仕入れて販売する場合には、仕入れた商品はすぐにお客さんのもとに行ってしまい自分では使えなくなります。
売上と対応して仕入(売上原価)として経費になっているのです。
では、固定資産の場合はどうでしょうか?
例えば、建物や機械・自動車・パソコンなどです。
固定資産を購入すると長期間にわたって使い続けることができます。
そう考えると固定資産を購入した年でいきなり経費にすることは妥当ではないと考えました。
正しい流れではないのですが、こんなイメージです。
1.費用と収益を対応させて考える→「長く使えるなら購入時に経費で落としたらマズイ・・・」
2.長く使えるものは使う期間にしたがって徐々に経費になる→「減価償却費という経費にする」
3.みんなの使い方が異なるので一定の計算方法のルーツを作る→「減価償却費の計算方法の確立」
「資産の種類ごとに耐用年数・償却率を定めて減価償却の出来上がり」という流れです。
減価償却費は月数按分をするので事業年度末に購入した場合には経費になる部分はほんの少しになるので注意しましょう。
ここで重要なことは、長い時間をかけて経費になっていくのが減価償却という仕組みだということです。
言い換えると購入した金額までしか経費にならないものだということを理解しておきましょう。
減価償却の対象となる固定資産とは?
減価償却の対象となる固定資産にはどのようなものがあるかも見ておきましょう。
国税庁のホームページによると大きく分けて次の区分に分けられています。
①建物
②建物付属設備
③構築物
④車両・運搬具
⑤工具
⑥器具・備品
⑦機械・装置
⑧生物
これらの区分に購入したものを区分して当てはめていくことになります。
これが税理士さんの実務上は非常に大変な作業になります。
「○○っていうものを買ったんだけど何年で落ちるの?」という質問があると税理士さんは「○○ってなんだ?」というところから始まります。
どういった内容のもので、何に使うのかを確認しなければ先ほどの区分が決まらないのです。
どのような構造・素材なのかも確認しながら耐用年数を決めていきます。
耐用年数が決まると減価償却につかう償却率というものも決まるのでようやく減価償却ができるようになります。
再び固定資産の対象になる固定資産を見てみましょう。①から⑧の区分に入っていなければ減価償却できません。
高額なもの固定資産の中には「土地」というものがあります。
これは先ほどの①から⑧のどれにも該当しません。
つまり、この土地は固定資産ですが「減価償却資産には該当しない」ということです。
減価償却の対象になる資産は、「年数や利用することによって価値が減少してくるもの」を対象にしています。
土地は年数がたったら消えてなくなるものでも、使っていたら価値が減少するものでもないので減価償却はできません。
そういった理由から減価償却資産の①から⑧の区分に入っていないということです。
土地付き建物などを購入した場合減価償却をどうするかも気になるところです。
土地付き建物を購入した場合には、土地の部分は減価償却をせず、建物部分だけを減価償却していきます。
少額減価償却資産・一括償却資産とは?
少額減価償却資産には2種類の考え方があります。
所得税・法人税の本税の少額減価償却資産と租税特別措置法上の少額減価償却資産です。
①所得税・法人税の少額減価償却資産は「使用可能期間が1年未満」か「取得価額が10万円未満」
これは青色申告でも白色申告でも適用されるものです。
確定申告や法人決算対策で10万円未満のものを購入すれば節税につながるということになります。
ただし、この10万円未満というのはよく作られています。
数年間使い続けようと思うものは10万円未満では買えないことが多いのです。
パソコンもワードやエクセルなどのオフィスが入っていると10万円をちょっと超えたりします。
使えるようでなかなか使えないのが10万未満の少額減価償却資産の一発経費です。
②租税特別措置法上の少額減価償却資産は「取得価額が30万円未満」
30万円未満のものは一発経費になるといわれているのはこの規定を使っているのです。
ところがこの規定は「青色申告者の特例」です。
つまり、個人事業主の場合でも法人の場合でも白色申告であればこの規定は使えないのです。
30万円弱のものを購入しても、減価償却をしていくことになってしまいます。
この規定は金額的にも「そこそこ使えます」
1年間(1事業年度)当たりで、300万円を上限ということには注意しておきましょう。
③一括償却資産とは?
10万円以上20万円未満の取得価額の減価償却資産を3年間で経費化する方法があります。
均等償却という方法ですが、説明するよりも具体例を見た方がわかりやすいので計算を見ていきましょう。
均等償却というこの方法は次のように計算します。
取得価額18万円×12か月(1事業年度の月数)/36か月=6万円(1年あたりの減価償却費)
均等に経費化することから均等償却といいます。
一括償却資産の規定は青色・白色の区別はありません。
均等償却を選択した場合には、償却資産税の対象にはならない固定資産になるので実務上よく使われる方法です。
10万円未満・20万円未満・30万円未満は「消費税込み?」「消費税抜き?」
少額減価償却資産や一括償却資産の金額判定は税込みなのか税抜きなのか気になるところです。
消費税を納めていない事業所は税込みになりますが、消費税を納めている課税事業者の場合には、会社の任意に任されています。
会社の経理が税抜き経理であれば、税抜き金額が10万円未満・20万円未満・30万円未満かどうかで判定します。
会社が税込み経理であれば、税込み金額が10万円未満・20万円未満・30万円未満かどうかで判定します。
この会社の税込み経理・税抜き経理は継続して適用することが原則的なので、一度選択すると何か理由がなければコロコロ変更できません。
減価償却費と借入金の返済はリンクしない
減価償却費は購入した固定資産が税法上決まった年数で経費化される制度です。
経費が多くなれば税金が少なくなるのが税金の仕組みです。
減価償却は税法上決まった計算で経費にできる額が決まります。
ところが借入金の返済は銀行などの金融機関との約定で決まったペースで進めていかなければなりません。
本来、減価償却費で経費になる額と返済金額によるキャッシュアウトは因果関係がないのです。
ただ自動車を購入する場合などの銀行借り入れは5年から7年程度でローンを組むことが多いので車の減価償却年数(6年)と近いことがあります。
減価償却期間と返済の期間が同じであれば大体経費と支払いは一致します。(定額法の場合)
耐用年数の長い建物を購入した場合には返済期間が減価償却期間に比べて短くなります。
返済のほうが経費で落ちる金額よりも大きいということになります。
土地を購入した場合には、経費化できないものを購入しているのでキャッシュアウトのみになります。
返済が早くても会社がつぶれない理由~条件によっては潰れる~
減価償却期間のほうが返済期間に比べて長い場合には、基本的に会社はキャッシュアウトしていきます。
それなのに会社がつぶれないのには理由があります。
①会社の成長が右肩上がりで利益から返済に資金を回している
②役員借入・事業主借入で返済資金を捻出している
③新規銀行融資で返済期間を延ばして減価償却期間に合わせていく
これの条件でもなければ、会社のキャッシュアウトが多くて失血死してしまいます。
この辺は税理士さんと相談しながらコントロールしていくことがよいと思います。
まとめ
減価償却は購入した固定資産を少しずつ経費化する手続きです。
少額減価償却費の特例は税制上、上手に活用するとメリットが大きくなります。
減価償却費と返済期間には直接的なつながりはないので、返済と経費のバランスを考えていきましょう。
減価償却の仕組みと借入金の返済期間のバランスを税理士さんと相談しながら決めていくことが重要です。
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