個人事業主が家族所有の不動産に賃料を払ったらどうなるのか?【家賃は経費になるのか?】

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個人事業主がテナントを親族から借りた場合、所得税法の特例があることがあります。知らないまま家賃を経費で落としていると税務調査でトラブルになることがあるので注意しましょう。

個人事業主が家族所有の不動産に賃料を払ったらどうなるのか?【家賃は経費になるのか?】

個人事業主が事務所やお店などのテナントを借りる場合、敷金や礼金など居住用に比べても高額な出費が必要になってしまいます。

最近では親が所有している不動産や配偶者が所有している不動産を上手に使いながら個人事業を経営している方も多くなっています。

具体的には次のような事例があります。

・両親が相続で取得した不動産を個人事業のテナントとして使っている

・配偶者が相続で取得した不動産を個人事業のテナントとして使っている

・配偶者名義のマイホームの一部を個人事業のテナントとして使っている

・両親が相続で取得した不動産を個人事業のテナントとして使っているケース

両親が相続で不動産を取得している場合、個人事業の事務所やお店をそこで開業するケースです。

アフィリエイトやクラウドワーカーなどのフリーランスの場合、両親が所有している不動産を事務所として使っていることも珍しくありません。

・配偶者が相続で取得した不動産を個人事業のテナントとして使っている

自分たちで不動産を購入することが難しい場合でも、配偶者が相続や贈与で不動産を所有しているケースがあります。

このケースは若い方が個人事業主として開業する場合にテナントをその物件とする場合などです。

配偶者が不動産を所有していることはよくあるケースですので、所得税の確定申告の際に特例に気を付けなければなりません。

・配偶者名義のマイホームの一部を個人事業のテナントとして使っている

ご主人が住宅ローンを組んでマイホームを建てている場合に起こりやすいケースです。

マイホームとして居住用で使っていたのですが、奥様などがアフィリエイトやクラウドソーシングで起業したり、ワークショップは教室を開催する場合に起こってきます。

一念発起しての起業ではなく、マイホームの一部を使いながらという感覚で起業した場合に起こりやすいケースです。

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家族の不動産で個人事業を開業する経営メリット

親族が所有する不動産で個人事業を開業することは、経営的なメリットが多くなります。

個人事業主として起業するハードルは売上と経費です。

起業当初に大きなコストとなる家賃は独立する上で大きな壁です。

親族が所有する不動産で創業できれば、固定費を低く抑えて事業をスタートできます。

家族の不動産を借りる場合には、低料金というケースと無償(無料)というケースがあります。

固定費で使わない部分を広告宣伝費や接待交際費に使うこともできます。

売上を上げるために投資できるお金ができることになります。

スタートダッシュするために効率的に予算を使うことができるので、一般的な個人事業主の開業よりも有利な条件で事業を開始できます。

家族の不動産で個人事業を開業する税務上の注意点

所得税は個人に関する税金ですから、人に対する様々な規定を作っています。

例えば、扶養控除・配偶者控除・基礎控除など様々な人の事情を考慮した規定があります。

個人事業の確定申告でおなじみの所得控除も人的な部分に関する規定があります。

今回重要なポイントとなる条文を見ていきましょう。

所得税法第56条(事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例)

居住者と生計を一にする配偶者その他の親族がその居住者の営む不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業に従事したことその他の事由により当該事業から対価の支払いを受ける場合には、その対価に相当する金額は、その居住者の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入しないものとし、かつ、その親族のその対価にか係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は、その居住者の当該事業にかかる不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入する。この場合において、その親族が支払いを受けた対価の額及びその親族のその対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は、当該各種所得の金額の計算上ないものとみなす。

所得税法56条の条文には、生計を一にする親族に対して支払ったお給料などの原則的な取り扱いを定めています。

「生計を一にする配偶者その他の親族」とは

所得税法の条文を読むだけではわかりにくいので具体例を考えてみましょう。

所得税法第56条には主人公が2人います。

主人公1:不動産所得・事業所得・山林所得を営む人

主人公2:主人公1の配偶者

今回のケースではご主人が奥様所有の不動産を借りた場合を例に考えてみます。

主人公1の状況:奥様

(クラウドワーカーとして7月から奥様のアパート1室を使って起業)

主人公2の状況:ご主人

(会社員として勤務しつつ所有不動産(アパート4部屋)を賃貸)

アパート3部屋は1月から12月まで、1部屋は6月まで他人に賃貸。

7月からは奥様の事業に賃貸(月の家賃として5万円/月)

これを例に家族に家賃として支払った賃料などの取り扱いを見ていきましょう。

主人公1:奥様の個人事業主としての確定申告のポイント

・事業の売上は奥様の所得税確定申告の収入になります。

・ご主人へ支払った賃料月5万円は経費になりません。

・ご主人が負担した固定資産税・減価償却費・火災保険料など本来不動産所得の計算上経費になるもののうち、奥様に貸している部分が奥様の事業所得の経費になります。

(支払ったのがご主人であっても奥様の経費になります。)

主人公2:ご主人のアパートオーナーとしての確定申告のポイント

・不動産収入は3部屋✕12ヶ月+1部屋✕6ヶ月が確定申告の不動産収入になります。

・奥様からの7月~12月分の入金は、ご主人の不動産所得の収入金額にはなりません。

その代わり不動産所得で経費になるもののうち奥様に貸している部分はご主人の不動産所得の経費になりません。

つまり、所得税法56条では奥様からの収入も税金の対象にならない代わりに、奥様に貸している部分の経費も経費で落としてはいけないという規定です。

(奥様に貸している部分の経費の計算方法)

ご主人の確定申告と奥様の確定申告の際に、どのように計算してよいかわからなければ不安になってしまいます。

確定申告の際に割合を使って計算する方法は次の通りです。

①不動産の物件の1年分の減価償却費

②不動産の物件に係る固定資産税・保険料

上記①②の金額✕(家族の事業用の面積)/(全体の面積)✕(家族の事業用月数)/12ヶ月

まとめ

個人事業主が生計を一にする親族が所有する不動産に賃料を支払っても経費になりません。

生計一親族に対する賃料を経費で落としていると税務調査の際に否認されることになります。

この規定は家賃だけの話ではなく、外注費なども同様になるので注意が必要です。

反対に家族から賃料などをもらった方の確定申告では家族からもらった収入は収入になりません。

通常の取引で収入を除外すると脱税として扱われますが、このケースでは法律に則っている取り扱いになります。

不動産を家族に貸した側で発生した経費のうち、家族に貸した部分に関係するものは家族の方の事業所得などの経費として使っていくことになるので注意しましょう。

細かい計算などもあるのd税理士さんに相談しながら確定申告対策を進めていきましょう。

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